ツイノベ置き場

椎名サクラ

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養父の玩具だった受けの話

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受けは養父のおもちゃになっていた。

中学に入学してから5年、体だけを男に慣らされていた。

動画を撮っては、そういうサイトにアップして稼いでいた。

そのために受けを引き取ったと言っていた。

高校に入学したけど、今度はサイトで受けがしてることを知った生徒にも犯されるようになった。

いつも複数名だった。

心がボロボロになっていたけど、どこか諦めていた。

高校を卒業したら逃げるんだ、本当に逃げられるか、もしかしたら閉じ込められてしまうかもしれない。

そんなことを考えては気持ちが落ち込んだ。

顔にも出るから陰キャで誰も受けの気持ちに気づく人はいなかった。

ある日、いつものように生徒たちに犯されてるところを運動部の攻めに見られた。

攻めはすぐに大声を出し人が集まってきて大事になった。

助かったと思った。

そこから養父の悪行も知られ警察に捕まった。

受けは保護され転校することになった。

最後に攻めにお礼を言いたかったけど、できなかった。

時が過ぎ、受けは小さな事務所で働いていた。

仕事にも慣れ、一人で事務所を回すくらいに頑張っていた。

所長の過度なスキンシップが気になったがそれを抜かせば平穏だった。

平穏な日々の中、攻めが本社から派遣された。

受けは驚いて、けれど何も言わなかった。

礼を言いたかったが、体中に体液をかけられた自分を見られたこと、汚れた自分が親しげに声をかけて不快にさせるんじゃないかと怖かった。

攻めも話しかけてこなかった。

歓迎会の席で所長にしこたま酒を飲まされた。

具合が悪くなってトイレに行くと所長もついてきた。

そして携帯を見せられた。

かつて養父に撮られた動画が流れていた。

一瞬にして血が凍った。

このあと、分かってるな。

所長は宴席に戻ったが受けはトイレから出ることができなかった。

ガタガタ震えてた。

すべて削除されたと思ったのに、まだ残ってるのかと怖かった。

昔のことが思い出されて動けなかった。

無理に飲ませたから家まで送り届けると所長は受けの方を抱き歩き出した。

そのまま無理やり繁華街のいかがわしい宿泊施設に連れ込まれそうになったとき、声をかけられた。

攻めだった。

所長が色々と言い訳して逃げようとしたが、トイレでのやり取りから全て録音されていた。

あなたのセクハラパワハラを調査するために本社から来たんだと告げた攻めに、こいつが誘ってきたんだ‼️と言い逃れようとしたがどうにもならず、人事部の人たちに何処かへ連れて行かれた。

ホッとした受けはうずくまって泣いた。

また助けられたこと、見られたこと、お礼を言いたいのに頭の中がぐちゃぐちゃだった。

逃げないとだめだと攻めが言った。

怖いだろうけど、次からは逃げろ、何かあったら俺を頼れ。

助けてもらっただけで充分です。

そう返すと攻めが頭を撫でてくれた。

家まで送り届けてくれた。

翌週、どんな顔していいかわからなくて出社したら、いつもと変わらなかった。

所長が交代したが元々職員に嫌われてたので

問題にも上がらなかった。

口々にアルハラで更迭されたのかもと噂が出たが、それ以上はなかった。

攻めもいつもどおりに仕事していた。

けれど受けの中は不安でいっぱいだった。

仕事に影響が出た、ミスが続出した。

攻めや他の職員がフォローしてくれたがもう駄目だと思った受けは退職届を所長に渡した。

すべてが怖かった。

あの動画を見る人が他にもいるんじゃないかと、自分を見つけてまた強要するのではと。

ガタガタ震えてた。

インターホンが鳴った。

おそるおそる出たら攻めだった。

手には退職届があった。

体調良くなったら出てこい、休職扱いになってるからと言われたが、首を振って断った。

家から出られない、もう誰だも関わりたくない。

攻めがごめんと言ってきた。

もっと早く助けてあげられればよかった、今も昔も。

それを聞いて受けは驚いた。

彼は知っていたのだ。

震える声でやっと昔の礼を言った。

でも自分は汚いから、これ以上関わらないで欲しい。

きっと養父も生徒も所長も、受けが引きつけてしまったんだと思った。

自分がいなければ良かったのかもしれないと。

すぐに攻めが否定した。

被害者なんだから自分を責めるな、責めたかったら早く助けられなかった俺を責めろ、と。

攻めは何も悪くない、むしろ助けてくれたんだから責められない。

だが攻めはそんな感情をぶつけてほしいと言った。

ずっと守りたいと思っていたと。

なのにいつも後手にまわってしまったと。

教室の隅で泣きそうになってるのがずっと気になってたと言い、助けたいと思うと同時に好きになってたと告白してきた。

受けは戸惑った。

自分はそういう感情がわからないから、応えられないと突っぱねようとして、できなかった。

気にかけてくれる人がいるのが嬉しかったからだ。

付き合ってくれと言われ、頷いた。

抱きしめられて嬉しかった。

けれど自分は汚れている。

たくさんの体液をかけられた体で攻めを汚してしまうのではと恐れた。

だが攻めは付き合ってるのに体を求めてこなかった。

ただただ優しくするばかりだ。

キスすらしない。

やはり汚いと思っているのかと合点し、落ち込んだ。

週末、攻めが泊まりに来た。

料理を振る舞われ、のんびりと映画を見て、楽しい時間を過ごして就寝した。

夜中、自分を呼ぶ声に目を覚ました受けは驚いた。

攻めが欲望を慰めながら受けの名前を呼んでは好きだと言っている。

そして果てた後、くそっ!と悪態をついた。

これじゃああいつらと同じじゃないか、受けから求められるまで我慢しないとだめだろうと自分を叱責していた。

心が高揚するのを感じた。

今まで道具のような扱いしか受けてこなかった受けは初めて大事にされていたんだと知ってどうしようもなかった。

今まで知らなかった感情が溢れてきた。

少し離れた場所で寝ようとした攻めに近づいた。

していいよ、勇気出して言った。

我慢しなくていい、嬉しいから。

けれど攻めは躊躇う、嫌だろうと。

パジャマを脱いで見せた、汚いって思わないなら抱いてほしいと伝えたら抱きしめられた。

ずっとこうしたかった、高校の時からと熱く告げられた。

嬉しいと初めて思った。

攻めにならして欲しい、彼に抱かれて幸せな感覚を知りたいと切望した。

攻めは躊躇った後抱いてくれた。

とても優しかった。

好きな人に抱かれるのはこういう気持ちなのかと初めて知った。

いった後も幸せな気持ちが残ってふわふわした。

それを攻めに伝えたら嬉しいときつく抱かれた。

嫌じゃなかったか?辛くないか?

終わった後でもそんなことを聞かれたのは初めてで、幸せだった。

この時間が悠久に続けばいいと願った。

好きになってくれてありがとう、そう攻めに伝えたら、俺こそ受け入れてくれてありがとうと返された。

こんなことを言われたのは初めてで、急に恥ずかしくなった。

隠れようとする受けを攻めが必死に抱きしめた。

これから二人でめちゃくちゃ幸せになろうな。

過去を知ってもそう言ってもらったのが嬉しくて、うんと返事した。


おしまい
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