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両片思い
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受けにはずっと好きな人がいた。
高校から一緒にいて、友達で、関係が壊れるのが怖くて告白はできなかった。
大学に進み、社会人になり、二人の距離は離れていった。
それでも気持ちは変わらず好きなままだった。
田舎の友人達が次々に結婚してもその気持ちに別れを告げられなかった。
年末、仕事でクタクタになった受けが家に帰ると扉の前に好きな人がいた。
仕事で近くに寄ったからと手土産を持って。
緊張して家に招き入れて、思い出話に花を咲かせて酒を飲んだ。
「お前結婚は?彼女とかいないのか?」
振られて「いないよ」と言った。
「昔からそういう話をしないな」
「奥ゆかしいんだよ」
誤魔化せばまた聞かれた。
「気になる子がいないわけ?」
「……いるよ。ずっとそいつのことが好きで他とか考えられないから……多分一生独身だ」
酒の勢いで言った。
「そうか」
好きな人も少し寂しそうな顔で笑った。
「お前は?」
「内緒」
「なんだよそれ」
無理やり笑った・。
「奥ゆかしいんだよ」
受けが言ったセリフをそのまま使われ、苦笑した。
疲れていたこともあり、受けは酔いつぶれた。
「お前は昔から無防備なんだよ」
好きな人の声がする。
「こんなことしたらもう、お前とは会えないけど……ごめんな」
何を謝っているのだろう。
体がふわふわして、熱くなった。
受けは一枚、また一枚と服を脱ぎ捨てた。
それでも体が熱くてどうしようもなかった。
好きな人は「ごめん」と言って受けを抱いた。
触られればどこもかしこも感じて気持ちよくて、受けはただただ啼いた。
都合のいい夢だと思った。
翌朝起きたら好きな人がいなかったが、抱かれた痛みが残っていた。
テーブルに一枚メモが置かれていた。
『ごめん』それしか書かれていなかった。
嫌な予感がして受けは知り合いに片っ端から電話した。
誰も好きな人の消息を知らなかった。
受けは呆然とした。
好きな人がいた。
とても可愛く笑う友人だった。
攻めは一線を越えるのが怖かった。
女を抱いてみた。
それでも友人へ向かう心を殺すことはできなかった。
何年も足掻いて、気持ちに決着をつけるために受けの部屋に行った。
今日会えたなら、だいて最後の思い出にしようとした。
卑怯と分かっていて媚薬を仕入れた。
酒に混ぜて飲ませ、そして抱いた。
好きな気持ちがより膨れ上がるだけだった。
逃げるように海外へ行った。
元々仕事で転勤を言い渡され、しばらく日本の地を踏めないならと最後の思い出にした。
結局好きもは言えなかった。
携帯も何もかも解約して、海を渡ってがむしゃらに働いた。
気がつけば3年が経って、でも忘れることはできなかった。
一人の時間は受けのことばかり考えた。
言えなかった言葉を何度も口にしては、届かない虚しさを味わった。
サマーバカンスに入る前日、クタクタで家につくと人影があった。
声をかけた途端殴られた。
受けだった。
殴られて当然だと思って素直に殴られた。
罪滅ぼしのつもりだったが、殴りながら受けがポロポロ涙を流すのに驚いた。
力は弱まり、最後は振り上げた拳を下ろすことなく訊いてきた。
「なんであんなことしたんだ」
「ごめん……」
「理由になってないから!」
「ごめん……ずっと好きだったから、いい加減断ち切ろうと思った」
真実で全てだった。
「断ち切ったのか?」
「…………」
何も言えなかった。
未だに断ち切れず、抱いたときの受けの顔を思い出しては夜を過ごした。
こっそり撮った写真を消せずにいるくらい、思いが深くなっただけだった。
「どうなんだよ!」
「ごめん、できなかった」
俯いた顔をまた殴られた。
「そういうの、やる前に言えよ……そしたら俺だって好きって言えただろ」
鼻水をすすりながら「バカ」と言う受けを抱きしめた。
「お前、ずっと好きなやついるって言ってたから……」
「仕方ないだろう、ずっとお前が好きだったんだから」
二人は馬鹿みたいに抱き合って泣いて、そして体が冷えた頃に家に入った。
熱めのシャワーを浴びてもう一度気持ちを伝えるところから始めるのだった。
当然その後は体でも思いを伝えあってバコバコやりまくって、受けが帰国しなきゃならないけれど放せなくてまた殴られて、しばらく遠距離恋愛を続けた後に一緒に住めばいいな。
おしまい
高校から一緒にいて、友達で、関係が壊れるのが怖くて告白はできなかった。
大学に進み、社会人になり、二人の距離は離れていった。
それでも気持ちは変わらず好きなままだった。
田舎の友人達が次々に結婚してもその気持ちに別れを告げられなかった。
年末、仕事でクタクタになった受けが家に帰ると扉の前に好きな人がいた。
仕事で近くに寄ったからと手土産を持って。
緊張して家に招き入れて、思い出話に花を咲かせて酒を飲んだ。
「お前結婚は?彼女とかいないのか?」
振られて「いないよ」と言った。
「昔からそういう話をしないな」
「奥ゆかしいんだよ」
誤魔化せばまた聞かれた。
「気になる子がいないわけ?」
「……いるよ。ずっとそいつのことが好きで他とか考えられないから……多分一生独身だ」
酒の勢いで言った。
「そうか」
好きな人も少し寂しそうな顔で笑った。
「お前は?」
「内緒」
「なんだよそれ」
無理やり笑った・。
「奥ゆかしいんだよ」
受けが言ったセリフをそのまま使われ、苦笑した。
疲れていたこともあり、受けは酔いつぶれた。
「お前は昔から無防備なんだよ」
好きな人の声がする。
「こんなことしたらもう、お前とは会えないけど……ごめんな」
何を謝っているのだろう。
体がふわふわして、熱くなった。
受けは一枚、また一枚と服を脱ぎ捨てた。
それでも体が熱くてどうしようもなかった。
好きな人は「ごめん」と言って受けを抱いた。
触られればどこもかしこも感じて気持ちよくて、受けはただただ啼いた。
都合のいい夢だと思った。
翌朝起きたら好きな人がいなかったが、抱かれた痛みが残っていた。
テーブルに一枚メモが置かれていた。
『ごめん』それしか書かれていなかった。
嫌な予感がして受けは知り合いに片っ端から電話した。
誰も好きな人の消息を知らなかった。
受けは呆然とした。
好きな人がいた。
とても可愛く笑う友人だった。
攻めは一線を越えるのが怖かった。
女を抱いてみた。
それでも友人へ向かう心を殺すことはできなかった。
何年も足掻いて、気持ちに決着をつけるために受けの部屋に行った。
今日会えたなら、だいて最後の思い出にしようとした。
卑怯と分かっていて媚薬を仕入れた。
酒に混ぜて飲ませ、そして抱いた。
好きな気持ちがより膨れ上がるだけだった。
逃げるように海外へ行った。
元々仕事で転勤を言い渡され、しばらく日本の地を踏めないならと最後の思い出にした。
結局好きもは言えなかった。
携帯も何もかも解約して、海を渡ってがむしゃらに働いた。
気がつけば3年が経って、でも忘れることはできなかった。
一人の時間は受けのことばかり考えた。
言えなかった言葉を何度も口にしては、届かない虚しさを味わった。
サマーバカンスに入る前日、クタクタで家につくと人影があった。
声をかけた途端殴られた。
受けだった。
殴られて当然だと思って素直に殴られた。
罪滅ぼしのつもりだったが、殴りながら受けがポロポロ涙を流すのに驚いた。
力は弱まり、最後は振り上げた拳を下ろすことなく訊いてきた。
「なんであんなことしたんだ」
「ごめん……」
「理由になってないから!」
「ごめん……ずっと好きだったから、いい加減断ち切ろうと思った」
真実で全てだった。
「断ち切ったのか?」
「…………」
何も言えなかった。
未だに断ち切れず、抱いたときの受けの顔を思い出しては夜を過ごした。
こっそり撮った写真を消せずにいるくらい、思いが深くなっただけだった。
「どうなんだよ!」
「ごめん、できなかった」
俯いた顔をまた殴られた。
「そういうの、やる前に言えよ……そしたら俺だって好きって言えただろ」
鼻水をすすりながら「バカ」と言う受けを抱きしめた。
「お前、ずっと好きなやついるって言ってたから……」
「仕方ないだろう、ずっとお前が好きだったんだから」
二人は馬鹿みたいに抱き合って泣いて、そして体が冷えた頃に家に入った。
熱めのシャワーを浴びてもう一度気持ちを伝えるところから始めるのだった。
当然その後は体でも思いを伝えあってバコバコやりまくって、受けが帰国しなきゃならないけれど放せなくてまた殴られて、しばらく遠距離恋愛を続けた後に一緒に住めばいいな。
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