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(あれから間もなく一年なのに……まだこの身体に熱くなるのか……)

 なぜこんなにも自分の身体に、心に執着するのかと疑問に思いながらも、酔いしれる。アルコールなど一滴も入っていないのに、酩酊したように脳の機能が鈍くなり、心だけが幸福感を増していく。

「は……ゃく……ぁっしげ」

 指じゃないものが欲しくて、玄は自分からねだった。

「ほし……ぃ」

 ひじ掛けを掴んでいた手を伸ばし、桐生の首に絡ませて初めて自分から口づけた。

「げ……ん」

 驚く桐生の唇に舌を潜り込ませ、横たわったままのそれを見つけ出すと自分から絡めた。苦しい態勢での口づけなのに、玄は自分から濃厚に絡ませ彼の吐息をも吸い上げていく。

「して……ぁっしげ……」

 桐生の厚い唇を舐めて先をねだる。桐生の欲望を咥え込みながら達きたいと本能が訴えていた。

 淫らな玄を間近に見て、こういう時は余裕な態度ばかりを見せつけてくる桐生が顔を赤らめながら肩にかけていた玄の足を下ろし、余裕なく自らの下肢を寛げる。玄の艶姿だけで存分に固くなった欲望が露になる。

(あぁこれだ)

 同じ男の性器だというのに、玄はうっとりとそれを見つめる。

 まもなくこれが自分の中に挿ってきては指よりも激しく突き上げてくる。その瞬間を思いだして玄は早くと言わんばかりにそれを自分の蕾に擦りつけた。

「ぁっしげ……」

「玄……そんなに私を煽るな……乱暴にしてしまうっ」

「ぃぃ……から、はゃく」

「くそっ!」

 桐生は再び玄の片足を掴むと深く折り曲げ、露になった蕾に欲望を宛がい貫いた。

「ゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

「玄、げん……許せっ愛してるんだ」

 何を許せと懇願しているのだろうか。問いかける間もなく腰が激しく動き始める。

「ぁぁぁぁぁ、きりゅ……だめぇぇぇ」

「あつしげ、だ。げんっげん……私の想いを受け止めてくれ」

 玄の感じる場所を狙いながらも激しい動きを、玄は桐生にしがみ付きながら受け止めていく。二人の間に挟まれた玄の分身が、中からの刺激と桐生の腹筋に擦れる刺激で、もう限界と蜜を放つ。

「ぁぁぁっ……ぃぃっ!」

 達っている間も桐生が欲望のままに腰を打ち付けて中を擦り続けてくるから、達ったはずなのにその感覚がずっと続いていく。蜜を放ち切ったはずなのに、分身は何度も跳ね、絶頂が終わらない。きついくらいに内壁が収縮して桐生の欲望を締め付けていくのを振り切るように欲望が抜けては、強い力で押し開く。

「ぁっ……ぁぁっ……だめっぅごかな……」

「玄っげん! もっと感じろっ」

「ゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」

 冷めることのないまま快楽の中を漂い続ける玄は、何度も何度も突かれながら自らも放出を伴わない絶頂を繰り返した。

 桐生の限界もそこまで来ているのだろう、腰の動きが早く深くなる。

「げん……愛してるっ……愛しているんだ!」

「ぁぁぁっ……わ……たしもだ!」

「ぐっ……ここでいうなんて卑怯だぞ玄……もう加減ができない」

 始めから加減などしていないだろうという叫びは、喘ぎの中に隠される。

 短いスパンで最奥を貫かれ玄はまた痙攣を伴う絶頂へと追い上げられ、そして深く繋がったまま桐生も最奥に蜜を放った。

「ぁぁっ……ぃぃ……」

 すべての蜜を玄の中に開放した桐生は、痙攣に跳ねる身体から欲望を抜いた。後を追うように白濁の蜜が零れ落ちる。

「私の玄はどこまでも淫らで美しいな……もっと淫らな君を味わいたい」

 耳元で囁くと急いで着衣を脱ぎ捨てた。そして再び繋がる。

「ぁ……」

 咥えてた熱を失った寂しさに囚われていた蕾が再び満たされて、玄の唇から満足げな吐息が漏れる。

「玄も私のことを愛しているんだな……嬉しいよ」

「……なんのことだ」

 まだ惚けている玄は、だが自分が口にしたことを認めようとしない。雰囲気に流されて同調しただけとも取れる言葉のままにしたくて、視線を逸らした。桐生がそれを許すはずもなく、今にも溶けそうなほどの甘い顔をしながら玄の腕を掴むとその身体を起こした。

「っ!」

「私にしがみ付いて……もっと玄が乱れる場所に行こう」

「なっ!」

 繋がったまま桐生は玄を抱き上げた。一歩進むたびに中の欲望が動き感じる場所を擦っていく。

「ゃぁぁっ、ぁっしげ……だめっ」

 動くなと命じたいのに、どうしてか今日の桐生は強気だ。首にしがみ付き両足を桐生の腰に絡ませる玄の身体は入院出産で以前よりも軽くはなっているが、それでも成人男性だ、そこそこの重さがあるはずなのに、しっかりとした足取りで階段を上がり、桐生の寝室へと向かう。

「ここを二人の寝室にしよう……毎晩愛し合えるように」

「ふっざけるな!」

「玄の部屋は子供部屋にしよう。子供部屋はきっと二部屋じゃ足りないような気がする」

「ぁっ」

 ベッドに辿り着いた桐生は玄の上体だけをマットレスに下ろすと、そのまま玄の少し細くなった腰を抱え、宙に浮かせたまま抜き差しを始めた。

「ゃぁぁぁぁだめっ!」

 桐生に絡んだままの足を解くことができない玄は、不安定な姿勢で桐生から与えられる快楽を受け入れるしかなかった。

「仕事から帰ってきた玄をこうしていっぱい悦ばせるから、この部屋で一緒に寝よう……ここなら玄がどんなに啼き喚いても子供には聞こえないから」

「そこばっかり……ぁぁぁっぃぃ!」

 すぐに快楽の電流が玄の身体を何度も走り抜け、思考を奪っていく。一度果てた桐生は余裕があり、技巧を駆使しながら玄に快楽を与え続けていく。

「いいだろう、玄。毎晩でも私とこうして繋がりたいだろう……」

 甘い誘惑が快楽と共に玄を翻弄していく。

「ぁっ……ぃぃっ!」

「嬉しいよ……明日玄の荷物はこの部屋に運ぼう。そしてあのベッドは捨ててしまおう。……玄がここでしか眠れないように、ね」

「ぁぁぁぁぁぁぁ! ぁっしげっ!」

「もう達きそう? このまま達ったら自分の精液で顔が汚れるな……あぁそれも見たいな」

 うっとりと玄の美しい顔が蜜で汚れる様を想像しているのだろうか。桐生は動きを大きくした。

「ゃぁぁぁぁぃくっ! ぃく!」

 続けざまの遂情に蜜の量は多くないが、腰が跳ねては蜜が顔にかかる。それをじっと桐生は観察した。

「ぁ……んっ」

 自らの蜜で汚れた玄が恍惚とした眼差しで桐生を見つめた。

「ぅっ……想像したよりも卑猥だ……」

 桐生は抽挿を止め心地よい玄の中から欲望を抜いた。

「ぁ……ぁっし……げ?」

 玄の頭をきちんと枕に乗せもう力の入らなくなった手に、あの日からずっと桐生の部屋に置かれたままの手錠をはめた。

「なっ?」

「もっと玄がいやらしくなるためのアイテム、だろう? これを着けるといつもより乱れるんだ、私の玄は」

「ちがっ」

「違わない。拘束されながら私に抱かれるのが好きなんだ、玄は。……私のものになった気がするからだろう?」

 そう、なのだろうか。

 だが桐生の言う通りだ。両手を固定され逃げられない状態になると、理性をなくしどこまでも淫蕩に快楽を貪ってしまう。まるで、拘束されることを喜ぶように。この状態で桐生にきつく後ろから抱きしめられると、とても心が満たされる。

 桐生は玄の身体を返すと後ろからまた貫いた。

「ぁぁぁぁっ、ふかっ!」

「深いほうが玄は好きだろう……いっぱいするから」

 ベッドヘッドの格子を掴んだ玄は、胸の飾りを弄りながら繰り広げられる荒々しい桐生の抽挿に翻弄され流されながら、何度も絶頂を迎えるのだった。

 そして何度目か分からないまま、遂情を伴わない絶頂を迎えた玄に、桐生は訊ねた。

「玄、愛している。……玄は?」

 ピクッピクッと痙攣する蕾は、もう何度吐き出されたかわからないほど桐生の蜜で濡れそぼって、彼が動くたびに蜜が零れだす。

「ぁ……っ」

 桐生が玄の首筋に歯を立てた。自分が付けた跡に重なるように。

 力が入っていないのに、玄はあの瞬間を思い出してまだ強く桐生の欲望を締め付けた。
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