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痛みのせいで目にいっぱい涙を溜めて叫ぶ玄を抱きしめる。
「できる、玄ならできるよ。ほら、ゆっくりやってごらん」
耳元で囁く。今の桐生にできる精いっぱいだ。身体を丸めがちな玄がガシッと強く服を掴んでくる。
「痛みの波が来たらどれだけ声を出してもいい。でも頑張って息を吐こう。殴っても怒ってもいいからね。医師が来るまで頑張ろう」
汗の滲んだ背中を何度もさすり玄を落ち着かせる。
痛みのタイミングが来ると桐生の服を破れるのではないかという勢いで引っ張るが、気にしない。オーダーメイドのシャツよりも玄と子供のほうがずっと大切だ。それらが犠牲になることなどどうだっていい。
「そう、上手だよ。力をなるべく抜いて……いい子だ」
頬にキスをする。いつもなら子供扱いするなと怒鳴ってくるところだが、その余裕がない玄は耳元で囁かれる指示をまっとうすることに集中して桐生がなにをしようと気にする余裕はない。
「はーい、お父さんどういてくださいね。邪魔なんで」
いつの間にか入ってきた医師と助産師が、ベッドで横たわる玄に覆いかぶさるように抱きしめている桐生を容赦なく突き放した。
「あ……はい」
すごすご引き下がる。医師が玄に足を開くよう指示する。
「ふ……ざけるなっ!」
「子宮口がどれくらい開いてるか見ないとわからないからね。痛いけど開いてね」
助産師が抵抗する玄を宥めながら、足を開きやすいようにサポートしていく。
(いや、これは……)
まるで閨での淫らなポーズのようで桐生はそっと視線を逸らした。今はそんなことを考えちゃいけないのは重々と承知しているが、ここ最近ご無沙汰だった下半身はすらりと伸びたふくらはぎの曲線を見ただけでピクッと反応してしまう。
(黙れジュニア! 今は反応するシーンじゃないだろ)
玄が一番苦しんでいる時になにをしているんだ。
「もう頭が出てきたね。分娩室に移動しようか」
助産師に指示を出して、玄が横たわっていたベッドのまま、隣にある分娩室へと移動する。それに桐生もついていく。
ちゃんと講習を受けたのだ、追い出されはしないだろうとそーっと室内に入り分娩台の枕元に置かれた椅子に座る。
玄も助産師数人によって分娩台に乗せられ、支脚器に足を乗せられる。自然と足が大きく開き、いつも桐生を受け入れるのと同じ姿勢になる。
(ひ……卑猥だっ!)
桐生は慌てて鼻を押さえた。ちょっとこの台が欲しいなどと不埒なことが頭をよぎる。
ここは大切な出産の場だ。何を考えていると自分を戒め、桐生はこれからどうすればいいのかと視線を助産師に送る。
「お父さんはここでお母さんの手を握ってあげてくださいね」
「……なぜ貴様がここにいる!」
そこで初めて桐生が分娩室にいることを知った玄は吠える。
「たちあいしゅっさんを……」
「立ち会わんでいい!」
「でも玄の側にいたいんだ、頼む!」
しっかりと玄の右手を握り込む。
「はい、お母さん。一、二、三でいきんでいきましょうね。いきむときは目を開けておへそを見るようにして身体を丸めてね」
自分のペースでいいからねとのんびりと言う医師の言葉に従うように、痛みが来るのと同じタイミングでいきんでいく。
そのたびに玄の手が強く桐生の三本の指を握り込んでくる。
(いたっ!)
だが悲鳴を必死で飲みこむ。今ここで自分の感情優先の悲鳴をあげたらきっと、出産に集中している玄の邪魔になってしまう。大丈夫だ、それでいいんだと伝えるように上から手をポンポンと軽く叩く。
医師や助産師に励まされながら何度も力を入れていく。
「そうですよ。ほら、もうすぐ頭が出てきますからね……もうちょっとですよ」
「いたっ……いたいっ!」
玄が叫びながらも、指示通りに頭の中で数字を数えていきむタイミングを整えていく。
「はい、もう少し!」
「頑張ってお母さん。そうですよ上手ですよ」
明るい口調の助産師が合いの手を入れていく。だが大きな塊をひねり出すそこからは強大な痛みが沸き起こっては玄を苛んでいる。必死で堪えようと桐生の手を力任せに強く強く握り込んできてくる。
「あと一息ですよ」
「玄、がんばれ。もう少しだ!」
「いいいいーーーーーーーーっ!」
ボキッ。
思い切りいきんだその瞬間、桐生は骨伝いに恐怖を覚える音が聞こえてきた。
(うぐっ!)
瞬時に強烈な痛みが伝わってきてくる。どう考えてもこれは折った。折れてなくてもひびは入った。しかも握り込まれたすべての指が、だ。
一瞬にして青褪めた桐生だが、反して室内の空気は一気に祝福モードへと転換する。
「生まれましたよ、お母さん! おめでとうございます」
助産師が口々に祝辞を贈ってくる。それに玄もほっとしたのか、指を握る力が弱まり、離れていく。一瞬おいて元気な泣き声が室内に響き渡った。
「とても元気な男の子ですよ。今身体を綺麗にしますから、それから抱っこしましょうね」
泣き叫ぶ子供を抱きかかえながら必要な処置を終えた後、助産師が産湯に入れ綺麗にしていく。その間、玄は惚けたように天上を見つめるだけだった。桐生は指の痛みを堪えながら、反対の手で玄の手を握った。
「お疲れ様、玄。おめでとう」
それを言うのが精いっぱいだ。子供の出産で感動しながらも、痛みで自然と涙が浮かぶ。思い起こせば大きな怪我をしたことがない桐生にとって、こんなにも痛い思いをしたのは生まれて初めてだ。女性から叩かれたり玄に殴られたりはあるが、骨を折った経験などない。しかも神経が集中している指だ、痛くないはずがない。
「……泣いてるのか桐生」
「見ないでくれ……おめでとう、元気な子を産んでくれてありがとう」
必死で指の痛みを隠す。
気のせいか、冷たい汗が背中を流れ落ちていく。しかも右手だ。これではしばらく育児の手伝いなどできない。
桐生は涙の理由を告げないまましくしくと泣き出した。
「バカ、泣くな」
なぜか玄に慰められるが、痛みに泣いているのを悟られたくなくて、深呼吸して涙を抑え込もうとするが上手くいかない。周囲も感動で泣いていると思っているのか、微笑ましく見守られる。
「はい、綺麗になりましたよ。赤ちゃん、ママとパパですよ」
産着に身を包んだ子供を玄へと渡した。カンガルーケアというやつだろう。まだ赤みの残る小さな顔を玄の胸元に乗せる。
「これが……」
「そうだ、私と玄の息子だ」
写真を撮らなければと思うが、指が動かない。シャッターなど押せるはずがない。
桐生は泣く泣く、助産師に左手だけで一眼レフカメラを渡そうとするが、使いこなせないと拒絶される。ならばとスマートフォンのカメラアプリを立ち上げれば、それは心得ているのか、玄と赤ちゃんの写真を何枚も収めていく。
「お父さんも入ってください」
いや、泣き顔だし……と断ろうとしても、助産師の数の圧力に負けて玄の隣に立たされる。
「笑ってくださいね。お母さん表情が硬いですよ」
シャッター音が何度も鳴り続ける。
「はい、次はお父さんが抱っこしてくださいね。お母さんはその間に胎盤取りましょうね」
産後の処理で新たにできた臓器を取り出す作業を始める医師とはよそに、助産師が桐生に生まれたばかりの子供を渡してくる。
「あ……」
慌てて抱きかかえる。
重さをあまり感じさせない小さな、けれどしっかりとした命。
これが玄と自分の子供なのだ。自分と彼とを繋げる鎹となる存在。まだ開けることなく瞑ったままの目、握り込んだ手。柔らかい短い髪の毛と弱弱しい動きの小さな存在。だが、その顔のどこにも玄の面差しはない。どちらかと言えば桐生と似通う箇所が多すぎる。紛れもなく自分と玄の子供である証なのに、桐生は険しい顔になる。
夢見たのは玄のクローンと言わんばかりの綺麗な赤ちゃんだ。
涼やかな目元と薄い唇とすべてが縮小版と言わんばかりの愛らしい赤ちゃんを想像していたが、手の中にある存在は玄の要素を見つけるのが難しい容姿だ。
「どうした、桐生」
アドレナリンが大量分泌されている玄は、さっきまでの荒々しさがどこにもない。むしろ子供に向ける視線が今までにないほど優しい、慈しみを含めたものだ。
「いや……それは」
「なんだ、言ってみろ」
「その……玄に似てない」
一瞬にして穏やかな表情が険しくなる。
「なんだ、文句があるのか言ってみろ」
「文句じゃない、文句なんかなにもない! ただ……玄に似た赤ちゃんを想像していたからこう、あまりにも私に似すぎて……その……」
「それが文句じゃなくてなんだというんだー!」
「お父さん、お母さんを興奮させないでくださいっ!」
今まで穏やかに二人を見守っていた助産師が慌てて走り寄り、桐生の手から赤ちゃんを取り上げると別の助産師が退出を促してきた。
「お母さんはお疲れですからね。もうお帰りくださいね。ついでに三日くらい来ないでください」
「そんなっ! せめて病室に戻ってから」
「それではさようなら」
残酷に目の前で扉が閉まる。
「そんなぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
扉に縋りつく桐生の姿を、他の妊婦の付き添いの面々が遠巻きに見つめる中、中に入れてくれ玄と合わせてくれと泣き叫ぶ桐生は、分娩室だけでなく病院からも追い出されるのだった。
その頃には指がパンパンに腫れ上がり、泣く泣く近所の整形外科の扉をくぐるしかなかない桐生であった。
「できる、玄ならできるよ。ほら、ゆっくりやってごらん」
耳元で囁く。今の桐生にできる精いっぱいだ。身体を丸めがちな玄がガシッと強く服を掴んでくる。
「痛みの波が来たらどれだけ声を出してもいい。でも頑張って息を吐こう。殴っても怒ってもいいからね。医師が来るまで頑張ろう」
汗の滲んだ背中を何度もさすり玄を落ち着かせる。
痛みのタイミングが来ると桐生の服を破れるのではないかという勢いで引っ張るが、気にしない。オーダーメイドのシャツよりも玄と子供のほうがずっと大切だ。それらが犠牲になることなどどうだっていい。
「そう、上手だよ。力をなるべく抜いて……いい子だ」
頬にキスをする。いつもなら子供扱いするなと怒鳴ってくるところだが、その余裕がない玄は耳元で囁かれる指示をまっとうすることに集中して桐生がなにをしようと気にする余裕はない。
「はーい、お父さんどういてくださいね。邪魔なんで」
いつの間にか入ってきた医師と助産師が、ベッドで横たわる玄に覆いかぶさるように抱きしめている桐生を容赦なく突き放した。
「あ……はい」
すごすご引き下がる。医師が玄に足を開くよう指示する。
「ふ……ざけるなっ!」
「子宮口がどれくらい開いてるか見ないとわからないからね。痛いけど開いてね」
助産師が抵抗する玄を宥めながら、足を開きやすいようにサポートしていく。
(いや、これは……)
まるで閨での淫らなポーズのようで桐生はそっと視線を逸らした。今はそんなことを考えちゃいけないのは重々と承知しているが、ここ最近ご無沙汰だった下半身はすらりと伸びたふくらはぎの曲線を見ただけでピクッと反応してしまう。
(黙れジュニア! 今は反応するシーンじゃないだろ)
玄が一番苦しんでいる時になにをしているんだ。
「もう頭が出てきたね。分娩室に移動しようか」
助産師に指示を出して、玄が横たわっていたベッドのまま、隣にある分娩室へと移動する。それに桐生もついていく。
ちゃんと講習を受けたのだ、追い出されはしないだろうとそーっと室内に入り分娩台の枕元に置かれた椅子に座る。
玄も助産師数人によって分娩台に乗せられ、支脚器に足を乗せられる。自然と足が大きく開き、いつも桐生を受け入れるのと同じ姿勢になる。
(ひ……卑猥だっ!)
桐生は慌てて鼻を押さえた。ちょっとこの台が欲しいなどと不埒なことが頭をよぎる。
ここは大切な出産の場だ。何を考えていると自分を戒め、桐生はこれからどうすればいいのかと視線を助産師に送る。
「お父さんはここでお母さんの手を握ってあげてくださいね」
「……なぜ貴様がここにいる!」
そこで初めて桐生が分娩室にいることを知った玄は吠える。
「たちあいしゅっさんを……」
「立ち会わんでいい!」
「でも玄の側にいたいんだ、頼む!」
しっかりと玄の右手を握り込む。
「はい、お母さん。一、二、三でいきんでいきましょうね。いきむときは目を開けておへそを見るようにして身体を丸めてね」
自分のペースでいいからねとのんびりと言う医師の言葉に従うように、痛みが来るのと同じタイミングでいきんでいく。
そのたびに玄の手が強く桐生の三本の指を握り込んでくる。
(いたっ!)
だが悲鳴を必死で飲みこむ。今ここで自分の感情優先の悲鳴をあげたらきっと、出産に集中している玄の邪魔になってしまう。大丈夫だ、それでいいんだと伝えるように上から手をポンポンと軽く叩く。
医師や助産師に励まされながら何度も力を入れていく。
「そうですよ。ほら、もうすぐ頭が出てきますからね……もうちょっとですよ」
「いたっ……いたいっ!」
玄が叫びながらも、指示通りに頭の中で数字を数えていきむタイミングを整えていく。
「はい、もう少し!」
「頑張ってお母さん。そうですよ上手ですよ」
明るい口調の助産師が合いの手を入れていく。だが大きな塊をひねり出すそこからは強大な痛みが沸き起こっては玄を苛んでいる。必死で堪えようと桐生の手を力任せに強く強く握り込んできてくる。
「あと一息ですよ」
「玄、がんばれ。もう少しだ!」
「いいいいーーーーーーーーっ!」
ボキッ。
思い切りいきんだその瞬間、桐生は骨伝いに恐怖を覚える音が聞こえてきた。
(うぐっ!)
瞬時に強烈な痛みが伝わってきてくる。どう考えてもこれは折った。折れてなくてもひびは入った。しかも握り込まれたすべての指が、だ。
一瞬にして青褪めた桐生だが、反して室内の空気は一気に祝福モードへと転換する。
「生まれましたよ、お母さん! おめでとうございます」
助産師が口々に祝辞を贈ってくる。それに玄もほっとしたのか、指を握る力が弱まり、離れていく。一瞬おいて元気な泣き声が室内に響き渡った。
「とても元気な男の子ですよ。今身体を綺麗にしますから、それから抱っこしましょうね」
泣き叫ぶ子供を抱きかかえながら必要な処置を終えた後、助産師が産湯に入れ綺麗にしていく。その間、玄は惚けたように天上を見つめるだけだった。桐生は指の痛みを堪えながら、反対の手で玄の手を握った。
「お疲れ様、玄。おめでとう」
それを言うのが精いっぱいだ。子供の出産で感動しながらも、痛みで自然と涙が浮かぶ。思い起こせば大きな怪我をしたことがない桐生にとって、こんなにも痛い思いをしたのは生まれて初めてだ。女性から叩かれたり玄に殴られたりはあるが、骨を折った経験などない。しかも神経が集中している指だ、痛くないはずがない。
「……泣いてるのか桐生」
「見ないでくれ……おめでとう、元気な子を産んでくれてありがとう」
必死で指の痛みを隠す。
気のせいか、冷たい汗が背中を流れ落ちていく。しかも右手だ。これではしばらく育児の手伝いなどできない。
桐生は涙の理由を告げないまましくしくと泣き出した。
「バカ、泣くな」
なぜか玄に慰められるが、痛みに泣いているのを悟られたくなくて、深呼吸して涙を抑え込もうとするが上手くいかない。周囲も感動で泣いていると思っているのか、微笑ましく見守られる。
「はい、綺麗になりましたよ。赤ちゃん、ママとパパですよ」
産着に身を包んだ子供を玄へと渡した。カンガルーケアというやつだろう。まだ赤みの残る小さな顔を玄の胸元に乗せる。
「これが……」
「そうだ、私と玄の息子だ」
写真を撮らなければと思うが、指が動かない。シャッターなど押せるはずがない。
桐生は泣く泣く、助産師に左手だけで一眼レフカメラを渡そうとするが、使いこなせないと拒絶される。ならばとスマートフォンのカメラアプリを立ち上げれば、それは心得ているのか、玄と赤ちゃんの写真を何枚も収めていく。
「お父さんも入ってください」
いや、泣き顔だし……と断ろうとしても、助産師の数の圧力に負けて玄の隣に立たされる。
「笑ってくださいね。お母さん表情が硬いですよ」
シャッター音が何度も鳴り続ける。
「はい、次はお父さんが抱っこしてくださいね。お母さんはその間に胎盤取りましょうね」
産後の処理で新たにできた臓器を取り出す作業を始める医師とはよそに、助産師が桐生に生まれたばかりの子供を渡してくる。
「あ……」
慌てて抱きかかえる。
重さをあまり感じさせない小さな、けれどしっかりとした命。
これが玄と自分の子供なのだ。自分と彼とを繋げる鎹となる存在。まだ開けることなく瞑ったままの目、握り込んだ手。柔らかい短い髪の毛と弱弱しい動きの小さな存在。だが、その顔のどこにも玄の面差しはない。どちらかと言えば桐生と似通う箇所が多すぎる。紛れもなく自分と玄の子供である証なのに、桐生は険しい顔になる。
夢見たのは玄のクローンと言わんばかりの綺麗な赤ちゃんだ。
涼やかな目元と薄い唇とすべてが縮小版と言わんばかりの愛らしい赤ちゃんを想像していたが、手の中にある存在は玄の要素を見つけるのが難しい容姿だ。
「どうした、桐生」
アドレナリンが大量分泌されている玄は、さっきまでの荒々しさがどこにもない。むしろ子供に向ける視線が今までにないほど優しい、慈しみを含めたものだ。
「いや……それは」
「なんだ、言ってみろ」
「その……玄に似てない」
一瞬にして穏やかな表情が険しくなる。
「なんだ、文句があるのか言ってみろ」
「文句じゃない、文句なんかなにもない! ただ……玄に似た赤ちゃんを想像していたからこう、あまりにも私に似すぎて……その……」
「それが文句じゃなくてなんだというんだー!」
「お父さん、お母さんを興奮させないでくださいっ!」
今まで穏やかに二人を見守っていた助産師が慌てて走り寄り、桐生の手から赤ちゃんを取り上げると別の助産師が退出を促してきた。
「お母さんはお疲れですからね。もうお帰りくださいね。ついでに三日くらい来ないでください」
「そんなっ! せめて病室に戻ってから」
「それではさようなら」
残酷に目の前で扉が閉まる。
「そんなぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
扉に縋りつく桐生の姿を、他の妊婦の付き添いの面々が遠巻きに見つめる中、中に入れてくれ玄と合わせてくれと泣き叫ぶ桐生は、分娩室だけでなく病院からも追い出されるのだった。
その頃には指がパンパンに腫れ上がり、泣く泣く近所の整形外科の扉をくぐるしかなかない桐生であった。
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