おじさんの恋

椎名サクラ

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番外編

世界で一番君が好き8

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 タオルで立てられたふわふわの泡が身体に押しつけられる。ゆっくりと円を描くように撫でられ、ゆっくりと一週間かけて纏った油の膜が剥がれ落ちていくのを感じた。強い力ではないのに優しく何度も同じ場所を丁寧に洗っていくなかで、遥人から流れてくる優しさや温かさに全身が包まれていこうとする。足の先まで清められ、それからシャワーが押し当てられた。

 バスタブの縁に凭れかかっていた身体をまた遥人が抱き寄せた。

 着衣が濡れるのも気にしないでしっかりと隆則の痩身を抱きしめると、当然のように指は流れる泡を追って背中を滑り丸みが僅かに残る臀部へと下り、そして二人が一つになるための場所へと行き着くと、躊躇うことなくそこに指を潜り込ませた。

「ひっ……ええっなんで?」

 反対の手にあるシャワーヘッドもそこに押し当てられた。

「んんっはると?」

「大丈夫です、任せてください。隆則さんのこと、全部わかってますから」

 遥人の優しい手つきで半分は夢の中に潜り込んでいた意識がしっかりと現実に引きずり戻された。あんなにも眠かったのが嘘のように目がはっきりと開き、遥人に抱えられたまま藻掻いた。けれど、筋肉なんて申し訳程度にしか付いていない隆則ではそこから抜け出すことなんてできない。

「だめっまだ奏人くんが……」

 いるはずだ。今日は最後の面接に行っているはずだとはっきりした頭が警鐘を鳴らしてくる。

「安心して下さい、奏人なら面接が終わったらそのまま友達のところに泊まると言ってましたよ」

「そ……なのか?」

「はい。だから安心して俺に準備させてください。もうずっと我慢してたんですから、次の仕事が始まるまでの時間を全部俺に下さい」

 疑うことを知らない隆則は逃れようとしていた手を遥人の背中に回した。

「……ちょっとは寝かせてくれ」

「わかってます。でもその前にたっぷりと隆則さんを味わわせてください」

 ずるりと水を纏って指が奥を清めていく。

 浴室は音が響くから声が出ないようにグッと堪えれば、勝手に下腹部に力が入り、好き勝手に動く指を締め付けてしまう。

「ふっ……そんなに煽らないでください。いやでも後でいっぱい締め付けて貰いますから」

「ちがっ……んんんっ」

 そういう意味で締め付けているのではないのに、巧みな指が隆則を煽るときと同じように動き始めるから意識してしまう。感じる場所をわざと避けるような動きをするくせに、抜き差しをするものだから声を抑えることができなくなってしまう。

 自分のみっともない声が浴室いっぱいに響き、被さるようにシャワーの音が消そうとしてくれる。

「可愛い。気持ちいいことに弱いのも、俺の指が好きなのも」

 チュッと頬に口づけて、指の動きを早めた。

 今までわざと避けていた感じるポイントを指の腹でトントンとノックしてきた。

「あっ……そこ、だめぇ」

「うん、感じちゃうんですよね。でももっと感じていいですよ……達かせてあげられませんけど」

 それはこれからやってくる狂乱をどのように隆則が過ごすかを教えてくれた。

 またいつものように、一度も蜜を吐き出すことなく絶頂だけを味わい続けるんだ。

 ぞくりと背中を存分に教え込まれた痺れが走り抜けた。

 自然と指を締め付け、分身がブルリと震え先端から透明な蜜を零しだした。それすらもシャワーの勢いで薄められていく。

 たっぷりと時間をかけて中を綺麗にした後、ヘロヘロになった隆則はしゃがみ込んだまま大きくふわふわのタオルに包まれた。

 シャワーとは違った温かさに、一瞬だけうとりとして、抱き上げられてまた意識が覚醒していく。

 こうなればもうベッドまで隆則は一歩も自分の足で歩くことは適わない。大人しく遥人の腕の中にいて、次に始まる時間に期待する。

 仕事明けはいつだって濃厚で狂うほどに愛されるのだ。それはもう何度も繰り返されたことなのに、未だに期待と不安と、彼から与えられる感情への陶酔で落ち着かなくなってしまう。

 もう五年も一緒に住んでいるのに、未だに自分に飽きず飢えた獣のように求めてくれるのが嬉しかった。ギュッと太く逞しい首を抱きしめてそこに頬を寄せる。自分でもわかる、下腹部が熱を持っていることを。

 決して軽くはない隆則の身体を抱えているのに悠々と歩き、躊躇うことなく自分の部屋に連れて行くとキングサイズのベッドに下ろした。

 奏人が来る前に遥人が片付けたはずの愛し合うための道具が、いつものようにベッドボードに置かれていた。そこから躊躇うことなく赤いリボンを手に取ると弛緩した身体の中で唯一力を持つ分身の根元に巻き付けた。

 あぁこれから始まるんだ。

 零れた吐息の熱さに自分でも驚く。

 あまり口にはしないが、自分だって遥人としたい。もう四十も過ぎて性欲だってそれなりに落ち着いたはずなのに、彼の匂いを嗅いでしまえばじっとなんてできない。
期待にギュッと蕾が窄まる。連動してじわりと分身の先端に涙が滲んだ。

「んっ……ぁ」
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