おじさんの恋

椎名サクラ

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本編2

7-3

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 散々に弄った胸の飾りの片方を口に含み口内で舐め上げていく。

「ゃ……ぁぁぁぁぁ!」

 何度も腰が跳ねて、下着の中に蜜が放たれたのを教えてくれる。

「乳首だけで達っちゃうくらい敏感だって知ってるの、俺だけですか?」

 荒い息の合間に肯定の言葉を零しながら、愉悦に浸る隆則の眦に涙が浮かぶ。しどけなくシーツに横たわり薄い旨を激しく上下させる姿がどれだけ卑猥か分かっているのだろうか。もっと犯してくれと言わんばかりの艶姿に遙人は着衣をすべて脱ぎ捨てた。

「ベッドでの主導権渡せないのは、俺の手で気持ちよくなる隆則さんが見たいからです。凄く可愛くて色っぽくて、それを知ってるの俺だけだって浸りたいんです」

 荒い息を繰り返す口元に滾った欲望を近づける。

「でも隆則さんも同じなんですね……これ、可愛がってくれますか?」

 目の前に出された長大な物に、色に酔っている隆則は乾いた唇を赤い舌で舐めてから、顔を寄せてきた。

 そんな些細な仕草ですら遙人を煽る。

 トクンとまた大きくなる欲望を咥え懸命に刺激していく。もう何度もしているのに、苦しそうな音を立てては必死で咥える様子がどこまでも遙人を煽っていく。

 このまま口内に白濁をぶちまけたくなる。

(フェラが俺にだけだったら……飲むのも初めて、か)

 ドンッとまた欲望が膨れ上がった。そこに拙い舌がチロチロと小動物のようにくびれを擽り吸われたら堪らなくない。

「このまま出して良いですか?」

 上目遣いでこちらを見てくる隆則がコクンと小さく頷くのを確認したら、もう我慢できなくなる。

「少し苦しいですけど、我慢してください」

 隆則の後頭部を両手で押さえ、遙人は腰を激しく動かした。

「んんっ!」

 苦しそうに顔を歪ませきつく瞑った眦からポロリと涙が零れ落ちるのすら扇情的で、その一点に向かう自分を止められない。

「ぐっ……」

 苦しいだろうに必死で吸われ、遙人は隆則の喉の奥に容赦なく蜜を吐き出した。

 近頃仕事のペースが緩いせいであまり堪ってはいないが、それでも大量の蜜を受けた隆則は嘔吐き激しく咳き込む。

「ごめんなさいっ……大丈夫ですか?」

 慌ててベッドの枕元にあるティッシュを取り隆則の口元に宛がった。

「へ……き」

 苦しかったのか、真っ赤になった顔は涙と鼻水と精液で濡れている。可哀想だと思いながらも、達ったばかりだというのに滾るのはなぜだろう。

 喉の奥に絡まった残滓をうまく飲み込めず泣きそうになる隆則に吐き出すよう促すが、嫌がる子供のような仕草で拒み、必死で飲み込もうとする。

「無理しなくて良いです!」

 また隆則が首を振った。必死に残滓を嚥下しようとするその様は愛おしくて、抱きしめずにはいられなかった。

「無理、しないでくださいね」

「……して、ない。いつもお前がしてるから……こんな苦しいことだって初めて知った」

 細い身体がゆっくりと遙人の胸に凭れかかる。いつもセックスでは狂うまで頑なな隆則の小さな変化が嬉しくて抱く腕を強くした。

(隆則さんを頑なにしてたの、俺だったんだ)

 背伸びして弱さを見せろと迫って、本当に弱い部分を晒す機会を奪っていた。もうこの関係になってから五年、少しは大人になったと思っていたのに、あの頃から変わらない幼さに気付いていなかった。

「精液ってこんな味がするんだ……」

 ぼそりと呟いた隆則が、自分の唇に残る蜜を舌で綺麗にしていき、コクンと喉仏を上下させ飲み込むのをみて、遙人は堪らず唇を奪った。

 ねっとりとまだ蜜の味を残す舌を嬲り、唾液を吸っていく。

「なんか……こういうのするのって、好きじゃないと無理だ」

 キスで火照った頬を冷やすために肩口に顔を埋めた隆則が、ぼそりと呟いた。

 そうじゃない人間もいるだろう……だが隆則の価値観では誰にでもすることじゃないと分かって、自分がどれだけ愛されているかをやっと実感できた。

「俺は隆則さんにだけしたいです……フェラも挿れるのも、隆則さんじゃなきゃしません」

 好きだから奪いたい。愛しているから狂わせたい。

 本能のままに動いて求めて、それが隆則が甘える機会をなくさせたのだと知った今でもどうしようもなく欲しくなる。

 この人のすべてを包み込みたい、自分のすべてで。

 心を曝け出して欲しいと求めて、己の心を隠してただ欲張りに欲しい欲しいと奪い取ろうとしている自分を恥じながら、こんな稚拙な愛しか与えられないのに必死に大切にしようとしてくれる隆則がどこまでも愛おしい。

「他の人間に脇目を振る暇もないくらい、好きなんです」

 だから、疑わないで。隆則の心変わりを疑ったのを棚に上げ、他の誰でもない隆則にだけは信じて欲しい。彼だから愛したのだと。ここまでのめり込んで抜け出そうなどと思うこともできないほど溺れているのだと。

「うん、知ってる……というか、知った」

 なかなか肉の付かない身体を抱きしめたままベッドに横たわれば、腕の中の人も顔を上げてこちらを見た。

「今時の言葉で言うなら陰キャだし、誰にも好かれないし、恋人とかできた試しもないから、遙人が本当に俺で良いのか……家族に会わせてくれて嬉しかったけど何も返せないのが申し訳なくて、どうしたら良いのか分からなくなってた。ごめん……」

 家族に会わせたのは、彼の心を繋ぎ止めたかったから。小心な隆則だから包囲網を作ればもう逃げられないと計算してだ。だがそれが彼の心に罪悪感を芽生えさせていたなんて考えも及ばなかった。

 相変わらず自分のことばかり考えてしまう悪い癖を改めなければと強く念じる。

 自分ばかり心地良い環境を整えたくて、隆則の気持ちをまた置いてけぼりにしてしまった。

「負担にさせて、すみませんでした。俺、本当に隆則さんといられれば、それだけで良いんです……それだけで幸せなんです……来年もその先も、お互いに爺さんになるまでずっと一緒にいられたら満足です」

 今まで格好つけた言い回ししかしてこなかった言葉から飾り気のすべてを取り払い、ただ感情のままにぶつける。

「うん、俺もそう思ってる」

「いっぱい仕事して、金貯めて、小さくても良いから一軒家買って、縁側で隆則さんとお茶を飲みながら飼い猫を眺めて、死ぬまでこうして一緒に寝ていたいんです」

「……随分と具体的だな」

「それくらい、あなたのことが好きなんです」

 格好悪いのは重々承知だ、けれど本心をただひたすらぶつけていく。

 するりと隆則が背中に手を回してきた。

「俺もだ……だからもっと俺のことを好きになって欲しかったんだ」

 こんな落ち着いた状態で自分から身体を寄せてくる隆則なんて初めてだ。性的に切羽詰まった状況で欲しがってねだるのではない、彼が自分から寄り添ってくれるのはこんなにも胸を熱くさせ指先まで幸せに満ちる行為なのだ。

 こうしてくれああしてくれと駄々をこね続けてばかりでは手に入らなかった幸福を存分に味わいながら、また力を持った下肢を隆則に擦り付けていく。

「ぁ……」

「ねぇ、隆則さんだからしたいこと、続けて良いですか?」

「……ぅん」

 了承を取ると赤くなっている恋人のまだ唾液で濡れる唇を塞ぎ舌を味わいつつ、彼の下肢を寛げていく。

 いつも遙人をきつく甘く包む蕾に指を這わせここに挿れてくれとノックする。

「んっ……はぁっ」

 口づけたまま漏れる吐息の色っぽさに煽られながら、ベッド脇に常備してあるローションのボトルを取る。それだけで隆則は自分から蜜で汚れた下着と一緒にズボンを蹴り落とし、自ら足を大きく開いてきた。

「隆則さんが俺を欲しがってるのが一番嬉しい……ねぇここに手を突いて……そう。俺の身体を跨いで……少し腰を下ろして……俺も隆則さんにしかしたくないこと、しますから」

 ベッドヘッドを掴ませ遙人の顔に力を失った分身を差し出すような態勢を取らせ、ローションをたっぷりと纏った指で蕾を擽りながら蜜で汚れた分身を口に含んだ。

「ぁっ!」

 甲高い声が耳に心地良い。

 前と後ろの両方を一度に可愛がれば、細い腕に筋肉の筋が浮かび上がるほどきつくベッドヘッドを握り混み、白髪の交じった髪を振り乱し始めた。
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