おじさんの恋

椎名サクラ

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本編2

2-3

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 頬を紅潮させてゆっくりと足を立てながら開いていく。拘束具に包まれた下肢が露わにしてその下の遙人を欲しがっている蕾を晒す。

 数時間前に散々遙人のを受け入れた蕾は貪欲に彼を求めて収縮を繰り返している。

「初めてでもないのにそんなに恥ずかしがって……姫始めも終えてるのに可愛いね、隆則さんは」

 ズボンの前をくつろげただけで膝を持ち上げて、そこに遙人の熱いものが宛がわれる。それだけで熱い吐息が期待を込めて零れ落ちた。

 そう、初めてじゃない。この身体に誰かを受け入れたのも、遙人が最初じゃない。けれど、誰よりも愛おしい彼に抱かれると考えるだけで恥ずかしくてじっとなんてしてられないし、大胆に誘うこともできない。

 いつだって初心な反応を示してしまう。

 いい年をしてこんなに欲しがってしまう自分が恥ずかしい。

 ぬるりと挿ってくる欲望を思わず締め付け、同時に仰け反った。

「ぁっ……はる、とぉ」

「……クソッあんなにしてもまだたんない。隆則さん、そんな顔見せたら気を失うまで抱き潰しちゃいますよ」

 自分がどんな表情をしているのか分からない、だが中を暴く灼熱に喘がずにはいられない。これがもっと奥に入り隆則を狂わす一点を何度も突いたり擦ったりすれば、すぐにわけが分からなくなる。

 その瞬間は怖くもあり同時に得られる快楽はどこまでも甘く貪り続けたくなる。

 麻薬のように。

「はぁっ……ぁぁ、ひぃっ」

 最奥まで埋め込まれた欲望がさらに奥を暴くように拓いてくる。もうこれ以上は挿らないのに、身体を傾け突いてくる。喉から押し上げられた内臓が出てくるような衝撃に隆則は怯えを堪えるようにシーツを握り絞めた。

 ズンッとまた奥を突かれる。

「あっ……やだ……ぁぁっ」

「ねぇ、こんな深くまで隆則さんに挿ったのって、俺だけ? 俺以外にここまで咥えたこと、ある?」

「なっ……ひゃ! そこばっかり……むりぃぃ」

 首を振って嫌がる隆則は両目を見開くが、深くを抉られる恐怖に目の前に映る景色さえ処理できない。その一部始終を遙人が舐めるように見つめ、反応一つ一つを漏らさず観察しているのすら分からず、逃げるように腰を上げた。より一層接合が深まるとも知らずに。

「やぁぁぁっ……ふかい、だめぇぇぇぇ」

「ここだけ、突いてみようか」

 小刻みに動く遙人に足を絡ませ、動きを止めようとしてっも力の差で叶わない。ズンッズンッとさらに奥へ挿ろうとする欲望に頭が焼き切れそうになる。

 隆則の『初めて』を見つけるたびに遙人は執拗にそれを愉悦に変えようとする。特に姫始めでは必ずそれを見つけては、その一年隆則が狂うまで続け、もっと彼に溺れる要因となる。

 乳首もメス達きも最初にしたのは元旦だ。

 身体をどんどんと淫らに塗り替え、遙人でなければ満たされないようになってしまう。

 恐怖であると同時に、陶酔もしていた。

 それだけこんな何もない自分を求めてくれていることが。

「メス達きできるくらい敏感な隆則さんだったら、奥を突かれても達けるかな……試してみようか」

「やだっ……ぁぁ、ふか……ぃ」

「怖い? でもだめ。もっとおかしくなる隆則さんを見せてください」

「ゃぁぁぁっ!」

「すっげー良い反応。こうしながら乳首弄ったらまた達っちゃいそうですね」

 試すことを躊躇う遙人ではない。弄られすぎて昔よりもずっと膨らみ摘まみやすくなった胸の飾りを容赦なく嬲り始める。腰の動きを止めずに。

「だめっだめっだめ……はるとぉ……いゃぁぁぁぁぁ!」

「ぐっ……そんな締め付けないでください……まだ楽しみたいでしょ」

 シーツを力一杯たぐり寄せて狂ったように首を振った。

「それっだめぇぇぇ」

「達きそうですか……いいんですよ、何度でもっ達ってください」

 性感帯などない最奥を犯されて、どうしてこれ程まで人興奮してしまうのか自分でも分からない。ただ恐怖と隣り合わせの未知の快楽に期待しているのだけは分かっていた。必死に隠れようとする隆則が纏った殻を、一枚ずつ破り捨てては新たな快楽で包んできたのは遙人だ。自分の知らなかった新たな快楽をまたこの身体に焼き付けようとしているのだろうか。

 膝立ちになった遙人に押され窮屈なほどに身体が折り曲がる。その態勢で最奥と胸の飾りを嬲られながら遙人はさらに隆則を高めようと口づけてくる。

「はぁっ……んん! んん!」

 吐息も悲鳴も愉悦の啼き声もすべて吸い取られ舌を絡められては、頭の中が達くことしか考えられなくなる。

 初めて彼に抱かれた五年前よりも、ずっとずっとこの身体を知り尽くした今の遙人に敵うわけがない。隆則の身体ももうあの頃とは違う。遙人にしか抱かれていないというのに、昔よりもずっとどこもかしこも敏感になり、彼に抱かれているという事実だけでおかしいくらいに昂ぶってしまう。

 今だってそうだ。

 新たな快楽をこの身体に見つけようとする一途さに、自分だけがこんな魅力的な人に執着されているという心地よさに、誰よりも愛されている優越感に、溺れている。

 乳首を痛いくらいに摘ままれ引っ張られ、隆則は限界を超えた向こう側へと追いやられた。

 メス達き。

 射精を伴わない絶頂のことを遙人はそう呼び、何度も味わったそれがまたこの身体を支配した。目を閉じても世界は真っ白なまま、身体は何度も大きく腰を揺らし、蕾も太ももも痙攣する。数時間前にも味わったそれが訪れれば、もう隆則から正常な思考は失われた。

「奥だけで上手にメス達きしたんですね……ねぇ隆則さん、約束して。俺以外に泣いてる顔見せないって……あんな可愛い顔するんだって知ったら、みんなが隆則さんを欲しがっちゃうからね」

「ぁ……っ」

 ズンッとまた最奥を突かれて身体が跳ねる。

「俺以外の前で泣かないでください、絶対ですよ……約束、できますかっ?」

「ぁぁぁまだっまだぃってるぅぅ」

 達っていない遙人の欲望が中の感じる場所を突いてくる。絶頂の最中にいる隆則は冷めないまままた押し上げられてしまう。

「ねぇ約束して……俺以外の人にっ絶対っ涙見せないってっ」

 言葉の区切れ目毎に大きく腰を打ち付けられ、おかしくなりそうだ。何を求めているのか分からないまま、何度も

「する、するからぁ」と泣き言を口にしては腰を振った。

 何度も体位を変え、足を逞しい肩にかけ座る遙人の膝に乗せられ後ろ手で自分の身体を支える態勢になる頃にはもう本当にわけが分からなくなり、ポロポロと涙を零しながら絶頂と同時に蜜が中を流れる感触を味わい、それでも足りなくて仰向けになった彼の上で腰を振りながら何度も何度も「好きだ」と言い続けた。

 彼に向かう気持ちを言葉にするたびに下から突き上げられ、隆則をおかしくする愉悦の痺れが駆け上がっていく。それがもっと味わいたくて、何度も絶頂を迎えたくて、逞しい腹筋に手を突いては腰を振り乱した。

「セックスの時以外にも言って……いっぱい俺が好きだと言ってください」

「いう……いう、から……ぁぁっはるとぉすきっ」

「あーもう、本当に可愛いですね……隆則さんまだ感じたいの?」

「ぃっぱい……いかせてぇぇぇぇ」

「これからねっ俺たち夫婦みたいなものなんですからっ隠し事、絶対にしないでくださいよ」

「しない……しなっ……ぃく! いっちゃ……ぁぁぁぁっ」

 腰が前後に跳ね、今日何度目か分からない絶頂を味わう。勢いで欲望が抜け、無意識のうちに膝立ちになり、遙人の視線に痙攣する内ももを晒した。

「メス達きする時の隆則さん、本当に気持ちよさそう……そろそろこっちでも達こうか」

 するりと長い指が触れて貰えないまま膨らみ揺れる分身を撫でた。その感触は伝わらないが、男本来の愉悦の頂点を味わえると理解した頭はすぐにその瞬間を求めて遙人の前にそれを差し出す。

「本当、隆則さんは気持ちいいことに弱いですね……もう俺以外にこの身体触らせちゃダメですよ」

「んっ……はるとだけ」

「良い子だ……これ外しますから、俺にお尻を向けて……そう。寂しかったら俺のを舐めて良いですよ」

 四つん這いになり遙人の顔に早く触れて欲しい分身を持っていくと、目の前にはさっきまで隆則をどこまでも狂わせた欲望が、力を持ったままヒクヒクと動いている。引き寄せられるようにその先端にチュッとキスをして口内に導いた。

「んっ……隆則さんフェラうますぎ……ねぇ俺以外に誰かにしたことある?」

 ない、遙人だけだ。首を振って伝えながら、欲望を放さずしゃぶり続ける。

 プロにされたことはあっても、したことはない。彼らは客を悦ばせるのが仕事で、同性に抱かれたがった隆則に蕾での愉悦は教えても、それ以上をしようとはしなかった。

 こんなになんでも隆則にして欲しがるなんて遥人だけだ。彼だって知っているはずだ、初めて求められたとき、とてもへたくそで何度もここに歯を当ててしまっては慌てたのだから。

「そう……じゃあ俺もフェラで隆則さんのここ、気持ちよくしますね」

 鍵が外れようやく解放された分身を先端から根元に向かって撫でられ、遥人のを咥えたままくぐもった喘ぎを漏らした。それすら「可愛い」という。

「ちょっと我慢してね……いっぱい舐めて吸ってあげます」

 ズンッとまた愉悦の痺れが脊髄を通って駆け上がっていく。

 ビクリと震えた臀部を撫でながらチロチロと先端を舐めた遥人は、ためらいもなく隆則の分身を口に含むとこの五年で培った隆則を狂わすテクニックを披露してくれる。

「んっんんん!」

 すぐに達けないよう根元を押さえ吸いながら全体を唇で扱いていく。その圧にとろとろと透明な蜜が溢れてしまう。口がおろそかになり、咥えているのが精いっぱいだ。そうなると遥人が自分から腰を動かし、隆則の口腔に欲望を出し入れし始める。

「んんっ、ん!」

 喉の奥を突かれ、苦しいのに気持ちいいなんておかしいだろうか。苦しいのに嬉しいと感じるのは変だろうか。けれど隆則は遥人がすべてを自分の中に吐き出そうとしてくれるのが嬉しかった。

 懸命に咥えながら最後の瞬間を喉の奥に受け止めようとしたが、それよりも先に根元を押さえる手を外された。

「んん、んっ!」

 ずっと堪えてきた分身があっけなく遙人の口内に蜜を放つ。

「ぁ……だめぇぇ」

「一緒に達くには隆則さん敏感すぎるから無理ですよ……やっぱり俺、隆則さんの感じる顔見ないと達けないみたいだ……ねぇもう一回上に乗って」

「ぁっ!」

「ここに俺のを挿れて気持ちよくなって」

 蜜を飲み込んだ遙人がまだひくついている蕾を指で可愛がり始めた。もう満たされたはずの場所なのに、指を何度も出し入れされたらもっと太くて熱いものが欲しくなってしまう。

 そろそろと身体を起こした隆則は鼻を啜りながら遙人の身体を跨ぎ、腰を落としながら欲望を飲み込んでいく。

「ぁ……ぁぁいいっ!」

「……自分から良い場所を擦って腰を振るなんて、本当に気持ちいいことに弱くて、可愛い」

 下から突き上げられ、また首を振りながら遙人の上で身体を跳ねさせる。

「次は一緒に達きましょうね」

 遙人の上で淫らに腰を振りながら、一人だけで達ってはタイミングが合わなかったからとまたやり直しさせられ、ようやく解放されたのは出す物をなくしてまた何も出さない絶頂を味わい脳が焼き切れてからだった。
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