おじさんの恋

椎名サクラ

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本編2

1-5

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「なーに勝手なことをしているんですか? もう達きたい?」

「ぃ……かせ、てぇ」

「本当に気持ちいいことに弱いですね……でもダメです。今日は一回も達かせてあげません」

「そっんな……」

 ポロリと眦からこぼれ落ちた涙を舐め取り、遙人は楽しそうに隆則を煽っていく。

「大丈夫ですよ、隆則さんが我慢できなくても達けないようにするだけですから」

 どういうことだろうか。だが絶えず刺激を与えてくるから言葉の意味を捉えることができない。「達かせない」という単語だけが脳を支配し、快楽と共に隆則を苛んでいく。セックスの時には遙人の言葉に従わなければと強く思い、ひたすら絶頂を堪えながら愉悦に支配された身体を燻らせる。

「も……ぃきたい……」

 けれど達ってはいけない。その苦しみに腹の奥がどんどんと熱が膨れ上がりマグマのように今にも爆発しそうだ。自分を苦しめる言葉にすら興奮してしまう。

 遙人の欲望に臀部を擦りつけながら絶頂を散らそうと必死になる。

「もう苦しい?」

「んっもぉむりぃぃぃ」

「じゃあこれの出番ですね……隆則さんのために買ったんですよ、存分に気持ちよくなってくださいね」

 遙人は隆則のスラックスと下着を落とすと、ポケテトから取り出した赤いリングでカチカチになっている分身の根元を締め付けてきた。

「え……」

 その上に樹脂のカバーを取り付け、分身の全体を覆い、二つを鍵でロックした。

「ゃ! これ……」

「貞操帯。ほら、触っても全然感覚ないでしょ。鍵を外すまで隆則さん達けなくなるんですよ」

「ひぃ! やだ……はずしてぇぇぇ」

「ダメですよ。また乳首だけで気持ちよくなりましょうね。姫始めなんですから、俺に存分に可愛がられてください」

「ゃだやだっ! ぁぁぁぁっ!」

 達くのを我慢するのと達かせて貰えないのでは全然違う。前者はどんなに辛くても我慢できるし自分でタイミングを測る分調節ができるが、後者はただただ翻弄され狂うだけだ。頭がおかしくなって絶頂のその瞬間を求めてどこまでも淫らになってしまう。

 今までも遙人に欲望の根元を締め付けられ達けないまま何時間も犯されたことはある。だがそうするときは先に何度か達かせて貰っていた。

 けれど今日はまだ一度も達っていない分、逼迫度が違う。

 慌てて手で刺激を与えようと掴んでも、まったく指の感触が分身へと伝わらない。

「こんなっ!」

「今日は初めから狂わせますから、覚悟してくださいね」

 甘く蕩けた顔で隆則から離れると、丁寧にスーツを脱がせてきた。床に落ちたスラックスからも足を抜かせると、丁寧に備え付けのハンガーに掛けていく。まるで焦らすように。

 一人で立っていても膝はガタガタと震え足場が安定できず、そのまましゃがみ込んだ。

「辛いですか?」

 遙人がとても楽しそうだ。

 苦しさにポロポロと涙が零れていく。少し長いワイシャツの裾が淫らな拘束具を隠してくれるが、じっとしてなんていられない。指の感触が分からないと分かっていても弄らずにはいられない。潤んだ瞳で遙人を見つめながら、許しを乞う罪人のように。

「可愛い、隆則さん」

 ゆっくりとした歩調で近づいてきた遙人の足に縋り付き、性急にその前をくつろげる。こうすれば許して貰えるのだろうか。そんなことばかりを考えながら、飛び出してきた欲望を口に含む。

 フェラに慣れない不器用な舌技で彼を追い上げていく。

「うわっ、隆則さんが自分からしてくれるなんて……すっげーエロい」

 必死にむしゃぶりつき、彼がするように吸い上げながら欲望の先端を舌で擽っていく。これをされると隆則は堪らなくなり腰を震わせずにはいられないが、遙人は余裕で隆則の漆黒の髪を撫でてくるだけだ。今日のために綺麗に切った髪は、いつものように淫らな表情を隠してはくれない。少し上向きの顔がすべて彼に見られているのが恥ずかしくて、同時に興奮した。

 喉の奥まで咥えようとしては咽せ、そのたびに太い指が優しく隆則の頬を撫でてくれる。勇気付けられまたフェラを再開する。

 懸命に欲望を貪る隆則の姿に、口内のそれも太く堅くなり、先端から透明の蜜を零し始める。舐めて飲み込みもっと欲しいとばかりに啜っていく。

「もういいよ、隆則さん。欲しいものをあげるからベッドでして欲しい体位になって」

 どうやって犯されるかを自分で選べというのか。

 唾液で濡れた唇を舐め、背の低いベッドに乗り上げ四つん這いのまま自分から尻を差し出した。肉付きの悪い尻たぶにキスをすると、遙人は枕元にあるボトルを手に取った。

「んっ」

 まだ指が入っていないのに、もう興奮と期待に蕾がピクピクとひくついている。

 慰めるように遙人のあの長い指がセックスに慣れた場所へとぬるりと入り込んだ。

「ぁ……んん、そこっ!」

 締め付けて最も感じる場所へと導くように腰が揺れる。もう脳も身体も快楽を求めて狂いそうになっている。遙人は丁寧に長い指でそこを解しながらローションを塗り込んでいく。

「そうじゃない……もっとおかしくさせろ」

「どうしたんですか? 今日は凄く素直ですね、隆則さん。もうここに俺のが欲しいんですか?」

 感じる場所を指先が掠めていく。

「ぃ! ほ……しぃ」

 とろとろに溶けた脳内が遙人を求めることしか考えられず、すぐにでも貫けとばかりに指を締め付ける。

「だぁめ、もっとここを濡らさないと後が辛いですから」

「いい……から。はやく、して。遙人が欲しい」

 素面じゃ絶対に言えないセリフを狂った脳はいとも簡単に紡がせる。達けない分、別の方法で身体中に堪った熱を発散するかのように遙人が欲しくておかしくなりそうだ。

 堅いもので中の一点を何度も擦られ突かれた時にやってくる、放出を伴わない絶頂を知っているだけに、すぐにでも求めてしまう。

「も……いれてっ」

 自分から尻たぶを押し広げ、淫らな蕾を晒す。さすがにここまで積極的な隆則は初めて見た遙人は寝台に肩を着いて、涙目でこちらを見つめてくる隆則の艶姿にゴクリと唾を飲み込み、そこから指を抜いた。

 ローションをたっぷりと欲望に塗りつけ、広げられている蕾へと宛がって、ゆっくりと潜り込ませた。

「ぁぁ……んっぃい!」

 ずるりと長大な欲望が感じる場所を掠めながら奥までじぐりじぐりと押し込まれていく。指で慣らさなかった分、圧迫感はひどく内臓がずり上がりそうだが、隆則は嬌声を上げながら咥え込んでいく。根元まで挿ってきた遙人は、一度そこで動きを止め覆い被さってきた。

「すげー……今までにないくらい締め付けてるの、分かりますか隆則さん」

 分からない……ただ苦しくて一刻も早く腹の中の熱を解放したい。もうそれしか考えられない。

「うごいて……はるとぉ」

「そんなにこれが欲しかったんですか? この中を滅茶苦茶に突いて隆則さんがおかしくなるくらい感じさせちゃって良いんですか?」

 おかしくなるくらいってどれだけあそこを擦られ突かれるのだろうか。想像しただけでまたギュッと遙人が挿っている場所をギュッと締め付けながら、内壁がざわめくままに絡みついていく。

「やべっもってかれそう……ねぇ答えて隆則さん、どうして欲しいんですか?」

「は……ぁぁっ、やだっもっとうごいてぇぇぇ」

「だぁめ。ちゃんとどうして欲しいのか言ってくれたら、隆則さんのして欲しいこと何でもするから、俺に教えて」

 して欲しいことなんてただ一つだ。

 隆則は乾く唇を舐めて上体をひねった。きついほどの締め付けにその瞬間を堪えるかのように眉間に皺を寄せながら、口元を緩くカーブさせる遙人のアンバランスで色気のある表情にぶつかる。

「いつもみたいに……遙人が気持ちよくなること、いっぱいして」

「俺が気持ちよくなったら、ここ擦ることができませんよ」

 どこを指しているのかを示すように腰が緩く抽挿する。

「ひっ……ぁぁぁぁっ! ぃぃ、それ……もっと!」

「こう……ですか?」

「ぁっ……もっとしてぇぇぇぇ」

「欲張りな隆則さん、可愛すぎてだめだ……くそっ」

 寝台に肩を預けている隆則の上体を起こさせると、密着したまま遙人は腰を大胆に使い始めた。咥えたばかりの蕾はまだその大きさに慣れないが、嬉しそうに口をいっぱいに開けてはその激しさを受け止め、唇からも甘い声を奏で始める。

「隆則さんって、バックからの方が感じやすいですよね……あぁ鏡がないのが残念。今どんな顔をして悦んでるか見たいな」

「ゃぁぁぁぁっ、だめだめだめ! そこもっと、してぇぇぇ」

「ここ、ですか? もうメス達きしたいんですか……イヤらしいですね」

「ひっ……そこいい、そこっ! はる、とぉ」

 与えられる愉悦を余すことなく受け止めながら、隆則はただただ狂い続けた。中の一点を擦られるたびに腹の中で淀んでいた熱がうねり出口を求めて隆則を苛んでくる。もし、分身への拘束具がなければすぐにでも絶頂を迎えていただろう。特に上体を起こしながら後ろから貫かれると、遙人の欲望が絶妙な角度で中を擦り上げてくるので、ひとたまりもない。どんな形で繋がっても気持ちいいが、この体位はどうしてもすぐに果ててしまう。

 遙人も蕾の締め付けと内壁のうねりを振り切るように荒々しく腰を使ってくる。

「ぁっ……やだやだやだ、くる! ぃやぁぁぁ」

「もうメス達きしそうなんですか? じゃぁここだけ擦り続けますね」

「だめっぁぁっ! ぃく! ぁぁぁぁ!」                    *

 激しいまでに小刻みで中の感じる場所を突かれ続け、自分では制御できない高みへと追い上げられた隆則は激しく腰を前後させた。頭の中が真っ白になって天を浮遊しているような、それでいて未だ快楽と隣り合わせのような不思議な感覚が身体に広がっていく。遙人を咥え込んだ蕾から膝までが痙攣し、何度も腰を跳ねさせながら自分をコントロールできなくなる。

「メス達き、したんですね。あぁ本当だ、あっち側にいっちゃった」

 支えを失ったからだが寝台に沈み、遙人の逞しい腕に転がされ仰向けになる。まだ絶頂の最中にいる表情をじっくりと眺め、とても嬉しそうに口元を綻ばせたのが視界に映っているが、情報として処理され何かを感じる余裕なんてない。

「やっぱり隆則さんのいい顔見ながら達きたいから、まだまだ付き合ってくださいね」

 ピクン、ピクンと痙攣を繰り返す膝を肩に掲げ、また蕾へと挿ってきた欲望は、中の締め付けと蠢きを堪能しながらゆっくりとそれを味わうように動き始めた。

「ぁっ……まだ、まだだめぇぇぇ」

「これで終わりじゃないの、隆則さんも分かってるでしょ。もっといっぱい感じてください」

 ずるりとギリギリまで抜けた欲望が同じゆっくりさで挿ってくる。そして互いの双球がぶつかるほど深くまで挿るともっと奥を開拓するように何度も腰を押しつけるように突いてくる。ずるっずるっと布団の上をずり上がりながら、どこまでも深くなる接合に恐怖を覚えた両手が広い背中に縋り付く。

「ゃ……ふかぃよぉぉ」

「それが悦いんでしょ。奥の奥まで俺のが挿ると可愛く啼くじゃないですか」

「ぁぁぁぁっおかしくなる!」

「もっとおかしくなってください。俺のでこの中がビショビショになったら、帰りましょ」

 言葉の意味が分からなくて、けれど最奥を拓かれる恐怖とどこまでも深く繋がっている愉悦に身体は歓喜してしまう。そしてまた大きく抽挿を始めた遙人に翻弄されながら、何度も押し寄せる愉悦の痺れに抗えず、遂情を伴わない絶頂を何度も味わう。

 休憩コースの半分以上を達きっぱなしの状態だった隆則は、本当にビショビショになるほど遙人の精液を受け止めてから解放された。

「今までで一番凄い姫始めでしたね、可愛かったですよ、隆則さん……あぁ俺の声聞こえますか?」

 満たされた遙人がずるりと抜けると同時に、何度も放った蜜が隆則の蕾から垂れ落ち、痙攣した太ももを汚してく。声は耳に届いていても、その内容を処理することができない。ワイシャツを纏ったまま、まだ絶頂の最中にいる隆則から衣服のすべてを脱がせ抱き上げると、檜風の風呂へと運んでいく。

 すでにたっぷりの湯が張られ、僅かでも振動を与えれば零れ落ちそうになっている。

 遙人は健脚を見せつけるように隆則を抱いたままその中へと入り足を伸ばすと、当たり前のように太ももの上に隆則を乗せた。

「ここ、綺麗にしますね。続きは帰ってからまたしましょう。まだ隆則さんもこれだけじゃ満足しないでしょ」

 分からない。分身を締め付ける拘束具はそのままで、果てることが一度もないままのセックスは初めてでまだ狂っているから、正常な判断ができない。欲望が放った蜜を書き出す指の動きにまた気持ちよくなって掠れた母音だけの音楽を奏でてしまう。

「あぁ、まだあっち側にいるんですね。いいですよ、時間ギリギリまで感じててください……これは外してあげませんけどね」

 これ、と拘束具を上から撫でられても何も感じない。ただ中の指をもっと激しく出し入れして欲しくて腰を揺らめかせた。
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