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本編1
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「うん……うん。中はそんな感じだけど、UIはどうするつもりだ? ちゃんとデザイナーに頼んだ方が……うん……システム重視だけじゃなくてゲーム並みに分かりやすいのじゃなきゃ」
少し遠くに愛しい人の声が聞こえる。いつもよりも声は硬く厳しいのは仕事のやり取りだろうか。薄く目を開ければドアの向こうに朝日を浴びながら裸のまま立っている細い後姿があった。
顔が見れないからとあまり後ろからすることはないが、無駄な肉どころか必要な肉すらないくせにお尻だけがきゅっと上がって綺麗な丸みを見せている。
後ろからしたらどんな反応をするだろう。でも顔を見たいから鏡の前で啼かせようか。そのためには大きな姿見を買って……と淫らなことを考えながら遥人はベッドから降りた。いくら初夏とはいえ裸のままでは寒いだろうとタオルケットで細い身体を包み抱きしめた。
「いっ……いやなんでもない。だから見積り出すならちゃんとそこも含めたバージョンと、前に作ったUIの凝ったヤツのスクショをサンプル画像として添付しておけばいいんだよ。二パターン出して決めて貰えば……工数? それはお前が頑張るんだよ。仕様書ががっちりしてたら二週間、そうじゃなかったら一ヶ月だと思え」
仕事の話はなるべく聞かないようにと以前ならすぐに傍を離れていたが、今度はそんな愚は犯さない。電話中で文句を言えないのをいいことに引きずってはソファに腰かける自分の膝に乗せた。
ぎょっとした顔をしていても藻掻いたりの抵抗はない。これ以上は何もするつもりはないと示すように抱きしめたまま静かにしていると遥人の意図を感じ取ったのかまた電話に集中し始める。
(この気安さはあの人か)
昨日会ったSEの顔を思い出す。以前勤めていた会社の後輩だというのを一度だけ耳にしたのをずっと覚えている自分の執念深さに感服さえしてしまう。覚えていたおかげで再会できた。
教授が教えてくれた隆則を見つける方法は、仕事の発注だった。関係のある会社を覚えていればそこを通じて打ち合わせの場に出させればいいと。乱暴だが確実な方法ではあったが、確かに小さな会計事務所ではできない。そこで教授の推薦という形で今の外資系監査法人に入った。丁度新しいシステムの導入を検討していると聞いて、迷いはしなかった。
公認会計士になるためには資格試験に合格するだけでなく、二年の業務補助経験が必要で、並行して実務補助のために「実務補修所」に三年ほど通わなければならない。業務補助はどの事務所でも問題ないが、できる限り早く隆則と会いたくて教授に薦められるがまま今の会社に入った。外資系だから英語力をあれほどつけさせたのかと納得すると同時に、胸が高鳴った。
(また隆則さんと会える……今度はもう逃がさないっ)
システム開発の窓口になりたがる同期はいなかった。そんなことよりも実務経験を積んで早く一人前になるんだと鼻息を荒くしている中、遥人は喜んで立候補した。そして隆則が一番仕事を引き受けている会社を挙げ、連絡した。
(ここまで長かった……)
けれどこの人は戻ってきてくれた。
腕の中の重みと温もりに顔を埋め肺一杯にその匂いを嗅いだ。
(隆則さんだ……)
仕事の電話を邪魔しないように、けれど夢じゃないと実感したくて抱く腕に力が籠ってしまう。
「分かった……うん、じゃあ」
電話を切ったのを確認し、じっとしていた自分を褒めながらご褒美とばかりに隆則の頬にキスをする。
「おはよう……うるさかったか?」
「いえ。ベッドに隆則さんがいなかったから栄養補給に来ました」
「……なんだよそれ……」
以前と少し違う態度でそっぽを向きながらも首筋まで赤くなっているのが可愛くて、引き寄せられるようにそこにもキスをする。
「んっ……」
「朝からそんな可愛い声を出さないでください。またベッドに逆戻りしちゃいますよ」
「だめっ……今日も仕事だろう? 何時に始まるのかわからないけど……」
相変わらず曜日感覚のなさに自分が愛してやまない隆則が戻ってきたのだと実感する。もう夢じゃない、この手の中にあるのはあの頃よりもずっと痩せ細ってしまったが自分が初めて愛した人だ。
「今日は土曜日です。だからなにも問題ありません」
横に抱いていた身体を正面に向かせ自分を跨らせると、一層ほっそりとした頬を両手で包んだ。
「おはようのキス、してください」
以前はがむしゃらに隆則を貪りつくすしかできなくて、一緒に住んでいたのにこんな甘い時間なんて持ったことはなかった。それで不安を感じられても仕方ないことだ。これからはもっともっと年上なのに不器用なこの人が甘えられる空間を作らないと。
たった一年半、それでもあの頃よりは少し大人になれたと思う。
こうしてキスを求めるだけで真っ赤になる隆則を可愛いと思えるくらいに。
おどおどして甘い時間になど慣れていない不器用な恋人はギュっと目をつぶり唇を近づけてくる。
(本当に可愛くて、あんなにやってもまだ欲しくなる)
挨拶にふさわしい啄むだけのキスを繰り返し、ゆっくりと緊張を解していく。キスなんてもう何度もしているはずなのに、それでも身体を固くする不器用さが愛おしくて、朝だからというだけではなくある部分が元気になっていく。
舌でノックをすれば薄い唇は僅かに開き、隙間から潜り込ませて昨夜たっぷりと味わった舌を擦り続けた。
「ぁ……」
時折漏れる甘い声まで奪いながらどんどんと隆則を煽り立てる。昨夜も弄り続けたせいで今も少し硬さの残る胸の粒を摘まめば、骨の浮かんだ腰が僅かに揺れた。遥人は自分が開発した性感帯を執拗に弄り固くさせながら、口内全てを舐め尽くすキスへと変える。肉が薄いせいかどんな刺激にも敏感な隆則は、始まったばかりの前戯だけでもう蕩けてしまったように弛緩していく。
本人を目の前にして存分に味わえば、少しは大人になったはずの遥人が我慢できるはずもない。
「俺の隆則さんを、イヤらしい顔にしていいですか?」
年下らしくお伺いを立てるが拒否されないよう先手を打つ。長時間遥人のを咥え続けてまだ綻んでいる蕾に指を挿れ、甘い声を奏でてくれる場所を指先でつついた。
「ぃ……それっ」
「もっと、ですよね。分かってます」
「ちがっ……ぁぁっそこっ!」
逃げようと膝立ちになった隆則の赤い胸の粒が目の前に来れば弄らずにはいられない。掬いあげるように下から舐めあげ転がしていく。
(これ、自分でも弄ってたんだよな……)
どんな風に弄りながら遥人のことを思い出して慰めていたのだろうか。
(いつか見せて貰おう)
今は自分の手に啼く隆則を見続けたい。胸と中の刺激だけで腰が揺らめき、逃げようとしているのか、それとももっとと欲しているのか。勝手に後者だと結論付け、固いグミとなっている小さな粒を甘く噛みながら指の動きを速めていく。
「はっ……やぁっ」
快感に弱い隆則はもう分身を大きくさせ蜜を零している。拒む言葉が出ないのをいいことに啼かせ続け、感じすぎた身体を己の欲望の上へと下ろした。
「ひっ……ぁぁだめっ」
ズプズプと大きくなり過ぎた欲望を飲み込みながら隆則が首を振る。そのたびに長くなりすぎている前髪が彼の表情を隠していく。
(後で切らないと……これじゃいい顔見れないじゃないか)
隆則の快楽に歪む表情に一番興奮するのにそれを邪魔する髪を顔から払った。紅潮した頬を湛えながら愉悦を堪える表情が遥人をまた興奮させる。すぐにでもめちゃくちゃにしたいのを堪え、細い足を掴み自分の肩に乗せた。
「ひっ」
バランスを崩した隆則が慌てて後ろ手で遥人の膝を掴んだのを確認して、細い腰を掴んでは振り子のように揺らしていく。
「はるっと……それ、だめぇぇぇっ」
気持ちいいくせに嫌がる言葉を奏でる口を、塞ぐよりもそれすら言えなくなるくらい感じさせたい。浅い抽挿で欲望の先端があそこを擦るように何度か揺らした後に深く繋がることを繰り返せす。感じる場所を抉られるたびに隆則は仰け反り、赤く染まった喉元と恍惚とした表情を遥人に見せては無意識に煽ってくる。
「本当に隆則さんはっ……感じてる顔、色っぽすぎるんですっ!」
己がどれだけ遥人を煽ってやまないか知らないだろう。無垢な外見なのにこういう時だけ色っぽくてそのギャップにやられてしまう。怯える姿すら遥人の支配欲を煽り、セックスの時は容赦なく欲情を掻き立てていく。
(全くこの人は……)
どうしてこうまで自分の望んだ姿でいられるのだろうか。
その姿に煽られてしまう遥人はどんどんと抽挿を激しくしていく。
「やっも……むり、ぃく……」
「達って……くださいっ」
あの絞りつくすような締め付けを味わいたくて動きを激しくしていく。
眦に涙を滲ませながら最後の一瞬に身体をこわばらせ、自分の腹を蜜で汚す隆則を見ただけで我慢できなくなり、搾り取るように締め付けに遥人も最奥へと己を解放した。最後の一滴まで吐きつくし、倒れ込んできた隆則を抱きしめた。
やはりこの人を愛してやまない。自分の全てをこの人の中に吐き出して受け止めて貰いたい。もっともっとと欲張って抱きつぶしてしまうのだ。
今もその欲求から抜け出せなくて、達ったばかりで弛緩している隆則をソファに腰かけさせまた抱きつくそうとする。
「……今日も帰せませんが大丈夫ですか?」
「ぇ……なに?」
またされるのかと慄く隆則にわざと優しい笑顔を向け喘ぎすぎて乾いた唇に口づけながら問いかける。
「いつ戻ってきてくれますか……早く決めてくれないと隆則さんを解放する自信ないです」
またしても縛り付けてしまいたくなる幼い自分が顔を覗かせる。
「……うん」
「早く帰ってきてください」
「……分かってる」
またこの部屋で一緒に生活できる喜びに胸を震わせながら、下肢がまた熱くなる。
「はると? え?」
遂情したばかりの隆則の中は収斂して心地よい。甘く強く締め付けてくるから抜くのがもったいなくて、それを味わっていればすぐにまた大きくなっていく。
「また付き合ってください」
「き……昨日もそう言って……」
昨夜のことを思い出したのか一度治まった頬の赤味がまた増していく。
もういい大人なのに上手に隠せない所も可愛くて、キスで誤魔化してからソファに腰かけ縁に両足を乗せた隆則を啼かせ始めた。
そしてようやく解放したのは日曜日の夕方だった。さすがに帰らなければ引っ越しができないと言われ仕方なく手放したが、無理矢理約束をさせた。今月中には戻ってくるという言葉だけを心の支えにして待ち続けながら、毎日のように電話で話をした。仕事の邪魔をしないように短い時間で言葉を交わすだけだが、心が満たされた。一緒に住んでいた頃は互いに相手の番号すら知らなかったのだと思うと、恋人同士なのに奇妙な関係だったとしか言えない。
(一度リセットしてもらえてよかった)
あのまま関係を続けていたらどうなっていただろうか。遅かれ早かれ一度離れていたに違いない。
隆則も一緒にいたいと思ってくれたのか最短で手配したのだろう、翌々週末には隆則がこの家に戻ってきた。
本当に荷物を運ぶだけの引っ越し業者しか手配ができず、二人で梱包を広げていく。
「……これが噂の……」
いくつもある同じ柄の段ボールを数個開けた時、中心に隠すように違和感しか放たない袋がありそれを開ければ、泣きながら教えてくれた淫具がそこにあった。隆則の説明の通り透明のシリコンで作られたようなそれはスイッチを入れるとモーター音と共に淫らな動きを始める。
「どうし……それっ!」
背中合わせで作業していた隆則は、音に釣られて振り向き遥人の手の中にあるものに気づいては一気に挙動不審になった。
「かっ……かえせ!」
「……まだ使うつもりなんですか?」
もう自分がいるのだからこれは不用品だろうとゴミ箱にそのまま放り投げようとして、慌てた隆則に止められる。
「だめっ捨てないでハルトくん!」
「はい……なんですか?」
「あ……いや、それの……しょうひんめぇ……」
「……まさかそれで買ったんですか?!」
Tシャツ一枚の無防備な姿の隆則が煽るように肌を染める。肯定としか取れない仕草に『そんな物』と怒っていたくせに嬉しくなってしまうのはなぜだろうか。商品名だとしても手を出さずにはいられないくらい自分は愛されていたのかと考えて、まだ梱包がたくさん残っているのににやけてしまうのを抑えられない。
「隆則さん、大好きですよ」
「いっ、今言う言葉じゃないだろそれ……」
少しずつ心を開いてくれているのかそれとも電話でのコミュニケーションを間に入れたからなのか、言葉が砕けてきてぐっと親密さを感じる。
「パソコンだけ先にセッティングしちゃいましょう」
下心満載の提案に、照れながらも隆則は頷いた。
ベッドの中で『ハルトくん』を咥えながらどうやって己を慰めていたのかを実践させられるとも知らずに。
少し遠くに愛しい人の声が聞こえる。いつもよりも声は硬く厳しいのは仕事のやり取りだろうか。薄く目を開ければドアの向こうに朝日を浴びながら裸のまま立っている細い後姿があった。
顔が見れないからとあまり後ろからすることはないが、無駄な肉どころか必要な肉すらないくせにお尻だけがきゅっと上がって綺麗な丸みを見せている。
後ろからしたらどんな反応をするだろう。でも顔を見たいから鏡の前で啼かせようか。そのためには大きな姿見を買って……と淫らなことを考えながら遥人はベッドから降りた。いくら初夏とはいえ裸のままでは寒いだろうとタオルケットで細い身体を包み抱きしめた。
「いっ……いやなんでもない。だから見積り出すならちゃんとそこも含めたバージョンと、前に作ったUIの凝ったヤツのスクショをサンプル画像として添付しておけばいいんだよ。二パターン出して決めて貰えば……工数? それはお前が頑張るんだよ。仕様書ががっちりしてたら二週間、そうじゃなかったら一ヶ月だと思え」
仕事の話はなるべく聞かないようにと以前ならすぐに傍を離れていたが、今度はそんな愚は犯さない。電話中で文句を言えないのをいいことに引きずってはソファに腰かける自分の膝に乗せた。
ぎょっとした顔をしていても藻掻いたりの抵抗はない。これ以上は何もするつもりはないと示すように抱きしめたまま静かにしていると遥人の意図を感じ取ったのかまた電話に集中し始める。
(この気安さはあの人か)
昨日会ったSEの顔を思い出す。以前勤めていた会社の後輩だというのを一度だけ耳にしたのをずっと覚えている自分の執念深さに感服さえしてしまう。覚えていたおかげで再会できた。
教授が教えてくれた隆則を見つける方法は、仕事の発注だった。関係のある会社を覚えていればそこを通じて打ち合わせの場に出させればいいと。乱暴だが確実な方法ではあったが、確かに小さな会計事務所ではできない。そこで教授の推薦という形で今の外資系監査法人に入った。丁度新しいシステムの導入を検討していると聞いて、迷いはしなかった。
公認会計士になるためには資格試験に合格するだけでなく、二年の業務補助経験が必要で、並行して実務補助のために「実務補修所」に三年ほど通わなければならない。業務補助はどの事務所でも問題ないが、できる限り早く隆則と会いたくて教授に薦められるがまま今の会社に入った。外資系だから英語力をあれほどつけさせたのかと納得すると同時に、胸が高鳴った。
(また隆則さんと会える……今度はもう逃がさないっ)
システム開発の窓口になりたがる同期はいなかった。そんなことよりも実務経験を積んで早く一人前になるんだと鼻息を荒くしている中、遥人は喜んで立候補した。そして隆則が一番仕事を引き受けている会社を挙げ、連絡した。
(ここまで長かった……)
けれどこの人は戻ってきてくれた。
腕の中の重みと温もりに顔を埋め肺一杯にその匂いを嗅いだ。
(隆則さんだ……)
仕事の電話を邪魔しないように、けれど夢じゃないと実感したくて抱く腕に力が籠ってしまう。
「分かった……うん、じゃあ」
電話を切ったのを確認し、じっとしていた自分を褒めながらご褒美とばかりに隆則の頬にキスをする。
「おはよう……うるさかったか?」
「いえ。ベッドに隆則さんがいなかったから栄養補給に来ました」
「……なんだよそれ……」
以前と少し違う態度でそっぽを向きながらも首筋まで赤くなっているのが可愛くて、引き寄せられるようにそこにもキスをする。
「んっ……」
「朝からそんな可愛い声を出さないでください。またベッドに逆戻りしちゃいますよ」
「だめっ……今日も仕事だろう? 何時に始まるのかわからないけど……」
相変わらず曜日感覚のなさに自分が愛してやまない隆則が戻ってきたのだと実感する。もう夢じゃない、この手の中にあるのはあの頃よりもずっと痩せ細ってしまったが自分が初めて愛した人だ。
「今日は土曜日です。だからなにも問題ありません」
横に抱いていた身体を正面に向かせ自分を跨らせると、一層ほっそりとした頬を両手で包んだ。
「おはようのキス、してください」
以前はがむしゃらに隆則を貪りつくすしかできなくて、一緒に住んでいたのにこんな甘い時間なんて持ったことはなかった。それで不安を感じられても仕方ないことだ。これからはもっともっと年上なのに不器用なこの人が甘えられる空間を作らないと。
たった一年半、それでもあの頃よりは少し大人になれたと思う。
こうしてキスを求めるだけで真っ赤になる隆則を可愛いと思えるくらいに。
おどおどして甘い時間になど慣れていない不器用な恋人はギュっと目をつぶり唇を近づけてくる。
(本当に可愛くて、あんなにやってもまだ欲しくなる)
挨拶にふさわしい啄むだけのキスを繰り返し、ゆっくりと緊張を解していく。キスなんてもう何度もしているはずなのに、それでも身体を固くする不器用さが愛おしくて、朝だからというだけではなくある部分が元気になっていく。
舌でノックをすれば薄い唇は僅かに開き、隙間から潜り込ませて昨夜たっぷりと味わった舌を擦り続けた。
「ぁ……」
時折漏れる甘い声まで奪いながらどんどんと隆則を煽り立てる。昨夜も弄り続けたせいで今も少し硬さの残る胸の粒を摘まめば、骨の浮かんだ腰が僅かに揺れた。遥人は自分が開発した性感帯を執拗に弄り固くさせながら、口内全てを舐め尽くすキスへと変える。肉が薄いせいかどんな刺激にも敏感な隆則は、始まったばかりの前戯だけでもう蕩けてしまったように弛緩していく。
本人を目の前にして存分に味わえば、少しは大人になったはずの遥人が我慢できるはずもない。
「俺の隆則さんを、イヤらしい顔にしていいですか?」
年下らしくお伺いを立てるが拒否されないよう先手を打つ。長時間遥人のを咥え続けてまだ綻んでいる蕾に指を挿れ、甘い声を奏でてくれる場所を指先でつついた。
「ぃ……それっ」
「もっと、ですよね。分かってます」
「ちがっ……ぁぁっそこっ!」
逃げようと膝立ちになった隆則の赤い胸の粒が目の前に来れば弄らずにはいられない。掬いあげるように下から舐めあげ転がしていく。
(これ、自分でも弄ってたんだよな……)
どんな風に弄りながら遥人のことを思い出して慰めていたのだろうか。
(いつか見せて貰おう)
今は自分の手に啼く隆則を見続けたい。胸と中の刺激だけで腰が揺らめき、逃げようとしているのか、それとももっとと欲しているのか。勝手に後者だと結論付け、固いグミとなっている小さな粒を甘く噛みながら指の動きを速めていく。
「はっ……やぁっ」
快感に弱い隆則はもう分身を大きくさせ蜜を零している。拒む言葉が出ないのをいいことに啼かせ続け、感じすぎた身体を己の欲望の上へと下ろした。
「ひっ……ぁぁだめっ」
ズプズプと大きくなり過ぎた欲望を飲み込みながら隆則が首を振る。そのたびに長くなりすぎている前髪が彼の表情を隠していく。
(後で切らないと……これじゃいい顔見れないじゃないか)
隆則の快楽に歪む表情に一番興奮するのにそれを邪魔する髪を顔から払った。紅潮した頬を湛えながら愉悦を堪える表情が遥人をまた興奮させる。すぐにでもめちゃくちゃにしたいのを堪え、細い足を掴み自分の肩に乗せた。
「ひっ」
バランスを崩した隆則が慌てて後ろ手で遥人の膝を掴んだのを確認して、細い腰を掴んでは振り子のように揺らしていく。
「はるっと……それ、だめぇぇぇっ」
気持ちいいくせに嫌がる言葉を奏でる口を、塞ぐよりもそれすら言えなくなるくらい感じさせたい。浅い抽挿で欲望の先端があそこを擦るように何度か揺らした後に深く繋がることを繰り返せす。感じる場所を抉られるたびに隆則は仰け反り、赤く染まった喉元と恍惚とした表情を遥人に見せては無意識に煽ってくる。
「本当に隆則さんはっ……感じてる顔、色っぽすぎるんですっ!」
己がどれだけ遥人を煽ってやまないか知らないだろう。無垢な外見なのにこういう時だけ色っぽくてそのギャップにやられてしまう。怯える姿すら遥人の支配欲を煽り、セックスの時は容赦なく欲情を掻き立てていく。
(全くこの人は……)
どうしてこうまで自分の望んだ姿でいられるのだろうか。
その姿に煽られてしまう遥人はどんどんと抽挿を激しくしていく。
「やっも……むり、ぃく……」
「達って……くださいっ」
あの絞りつくすような締め付けを味わいたくて動きを激しくしていく。
眦に涙を滲ませながら最後の一瞬に身体をこわばらせ、自分の腹を蜜で汚す隆則を見ただけで我慢できなくなり、搾り取るように締め付けに遥人も最奥へと己を解放した。最後の一滴まで吐きつくし、倒れ込んできた隆則を抱きしめた。
やはりこの人を愛してやまない。自分の全てをこの人の中に吐き出して受け止めて貰いたい。もっともっとと欲張って抱きつぶしてしまうのだ。
今もその欲求から抜け出せなくて、達ったばかりで弛緩している隆則をソファに腰かけさせまた抱きつくそうとする。
「……今日も帰せませんが大丈夫ですか?」
「ぇ……なに?」
またされるのかと慄く隆則にわざと優しい笑顔を向け喘ぎすぎて乾いた唇に口づけながら問いかける。
「いつ戻ってきてくれますか……早く決めてくれないと隆則さんを解放する自信ないです」
またしても縛り付けてしまいたくなる幼い自分が顔を覗かせる。
「……うん」
「早く帰ってきてください」
「……分かってる」
またこの部屋で一緒に生活できる喜びに胸を震わせながら、下肢がまた熱くなる。
「はると? え?」
遂情したばかりの隆則の中は収斂して心地よい。甘く強く締め付けてくるから抜くのがもったいなくて、それを味わっていればすぐにまた大きくなっていく。
「また付き合ってください」
「き……昨日もそう言って……」
昨夜のことを思い出したのか一度治まった頬の赤味がまた増していく。
もういい大人なのに上手に隠せない所も可愛くて、キスで誤魔化してからソファに腰かけ縁に両足を乗せた隆則を啼かせ始めた。
そしてようやく解放したのは日曜日の夕方だった。さすがに帰らなければ引っ越しができないと言われ仕方なく手放したが、無理矢理約束をさせた。今月中には戻ってくるという言葉だけを心の支えにして待ち続けながら、毎日のように電話で話をした。仕事の邪魔をしないように短い時間で言葉を交わすだけだが、心が満たされた。一緒に住んでいた頃は互いに相手の番号すら知らなかったのだと思うと、恋人同士なのに奇妙な関係だったとしか言えない。
(一度リセットしてもらえてよかった)
あのまま関係を続けていたらどうなっていただろうか。遅かれ早かれ一度離れていたに違いない。
隆則も一緒にいたいと思ってくれたのか最短で手配したのだろう、翌々週末には隆則がこの家に戻ってきた。
本当に荷物を運ぶだけの引っ越し業者しか手配ができず、二人で梱包を広げていく。
「……これが噂の……」
いくつもある同じ柄の段ボールを数個開けた時、中心に隠すように違和感しか放たない袋がありそれを開ければ、泣きながら教えてくれた淫具がそこにあった。隆則の説明の通り透明のシリコンで作られたようなそれはスイッチを入れるとモーター音と共に淫らな動きを始める。
「どうし……それっ!」
背中合わせで作業していた隆則は、音に釣られて振り向き遥人の手の中にあるものに気づいては一気に挙動不審になった。
「かっ……かえせ!」
「……まだ使うつもりなんですか?」
もう自分がいるのだからこれは不用品だろうとゴミ箱にそのまま放り投げようとして、慌てた隆則に止められる。
「だめっ捨てないでハルトくん!」
「はい……なんですか?」
「あ……いや、それの……しょうひんめぇ……」
「……まさかそれで買ったんですか?!」
Tシャツ一枚の無防備な姿の隆則が煽るように肌を染める。肯定としか取れない仕草に『そんな物』と怒っていたくせに嬉しくなってしまうのはなぜだろうか。商品名だとしても手を出さずにはいられないくらい自分は愛されていたのかと考えて、まだ梱包がたくさん残っているのににやけてしまうのを抑えられない。
「隆則さん、大好きですよ」
「いっ、今言う言葉じゃないだろそれ……」
少しずつ心を開いてくれているのかそれとも電話でのコミュニケーションを間に入れたからなのか、言葉が砕けてきてぐっと親密さを感じる。
「パソコンだけ先にセッティングしちゃいましょう」
下心満載の提案に、照れながらも隆則は頷いた。
ベッドの中で『ハルトくん』を咥えながらどうやって己を慰めていたのかを実践させられるとも知らずに。
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