おじさんの恋

椎名サクラ

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本編1

19-2

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「だめ、汚いからっ!」

「クレームは後で聞きますからいい子にしてください」

 白濁を絡めた指がずぶりと挿りこんできた。

「ひっ……だめぇぇっ!」

「あれ、ここも緩い……何でですかねぇ」

「ぁっ……そこっ! ゃぁぁぁっ」

 昨夜も散々淫具で慰めた蕾はすぐに指を受け入れてはギュッギュッともっと奥に招き入れるような淫らな動きを始めてしまう。自分の身体なのに自制が効かない。しかも一年半空いているとはいえ、隆則の身体を知り尽くしている相手はすぐにでも感じる場所を擦ってくる。

「ゃぁぁぁっ……そこだめぇっ!」

「ここでしょ、隆則さんのいいところ。ちゃんと覚えてますからいっぱい感じてください」

「ぁぁぁっ指、増やさないで……っ」

「二本挿ってるのにきつくないんですね……ねぇさっき言ったこと嘘ですか? 俺嫉妬していいですか?」

「ちがうから……ぁんっそこばっかやだぁぁ」

 容赦ない指が感じる場所を叩きながら淫らに中をほぐしていく。隆則はシーツに顔を埋め続けることもできず、仰け反っては確かな快楽に震えながら身体を跳ねさせた。指が三本に増えても甘く啼き続けては、綺麗にメイキングされたシーツをしわくちゃにしていく。淫具とは違う動きの指に翻弄されながら乱れていく隆則の姿を遥人はどんな顔で見ているのだろうか。気になっても絶えず感じる場所を刺激されてそちらに目を向ける余裕がないまま、達ったばかりの分身を変形させながら啼き続けた。

 唇が渇くくらい啼き続け、分身から透明の蜜をシーツに滲ませるようになってようやく指を抜かれた。

「ぁ……」

 嫌だと啼き続けたくせに、なくなると寂しくて腰をもじつかせ、名残惜しそうな声を漏らす。

 遥人がニヤリと笑い、頬に口づけてくる。

「安心してください、すぐに欲しいのしてあげますから」

 身体を返され仰向けになった隆則の、あの頃よりもずっと細くなった両足をいっぱいに開かせて、いつの間にか全てを脱ぎ捨てた遥人が物欲しそうに口を開く蕾に欲望を押し当てた。

「ぃっ……ぁっ」

 指よりもずっと太くて熱いそれが、グッグッと挿ってくる。

 白濁で濡らしたとはいえ、僅かな痛みと圧迫感に隆則は顔を歪めた。

「痛いですか?」

 動きを止め優しく問いかけてくる。

「ぃぃから……そのままっ……嬉しいからっ」

 久しぶりの遥人の物に、苦しさよりも悦びが先行してもっと奥へと咥え込みたくなる。深くまで挿れて本能のままに犯されたい。遥人になら何をされても悦んでしまう身体は歓喜に震えてそこをギュッと締め付ける。

「そんなこと言ってると知りませんよっ……くそっ」

 珍しく乱暴な言葉を吐き捨て、遥人はぎりぎりまで勢いよく抜くとズンッと奥へと押し挿ってきた。

「ゃぁぁぁっ!」

 あまりの衝撃にベッドの上をずり上がってしまうが、それでも身体は嬉しいとばかりに遥人の欲望を締め付けてはもっとと言うように収縮し始める。

「はる……とぉっ」

 足を掴む手にしがみついて必死で衝撃に堪えながらも、彼に抱かれている悦びに声は甘いままだ。優しくできないという言葉のまま、何度も強く突いてきては閉じようとする最奥を割り開き、奥へ奥へと進んでいく。そのたびに腰は上がり、しがみつく指に力を込めながら甘く啼き続けた。

 双球が当たるほど深くまで挿ると遥人は足から手を放し、全身を紅潮させ涙を滲ませている頬を両手で包んだ。

「あんな酷いことされても気持ちいいんですか? 俺のこと嫌いになりませんか?」

 熱い掌から伝わってくる熱が心に染みこんで溶かしていく。密着してくる身体も蕾を一杯に開かせる欲望も、全てが隆則をこの上なく幸福にさせる。寂しくてつらかった時間が嘘のように、辛いことをされたはずなのに心も身体も満ち足りていく。つま先まで幸福で満たされ、貪欲な心はもっと彼を味わいたいと切望する。

 筋が浮き出た両腕を逞しい首に絡ませ自分からキスをした。

「嫌じゃないから……遥人とするの、好きだから……」

 もっとして。

 掠れる声で強請れば、唇を貪られながら激しく腰が動き始めた。

 くぐもった喘ぎを漏らしながら自分に興奮してくれる遥人が嬉しくて、息苦しさも忘れて全てを受け入れては嬉しいと締め付けながら舌に応え続けた。

 自分の快楽を追っているようで確実に隆則の感じる場所を突いてくる。愉悦の音楽を吸い取られ部屋の中は肉のぶつかる音が響き渡った。久しぶりなのに容赦ない腰の動きに、すでに一度達ったはずなのにまた身体の間で分身は固くなり先走りの蜜を遥人の腹筋へと擦り付ける。

 気持ちいい。

 激しすぎる快楽なのに、強引に容赦なく求められるのが嬉しくて、何度も身体の奥を走る電流のような痺れに翻弄されながら、短時間でまた蜜を放ち、最奥に大量の蜜が放たれたのを感じながら弛緩していった。

(二回も続けて達っちゃった……)

 こんなにも短時間で達ったのは久しぶりで、指先が動かせないほど疲労と充足感が広がっていく。遥人に抱かれた悦びに満たされた心はもうこの幸せなまま眠りにつきたいと微睡を全身に行き渡らせた。本能のまま瞼を閉じようとした隆則を、けれど遥人は許さなかった。

「まだ応えて貰ってないんですから寝かせませんよ」

「ひゃっ!」

 肌着の上から胸の粒を摘ままれてひしゃげたカエルのような声を放つ。もう終わりだと思っていた身体に与えられる快楽に思わず欲望をきついまでに締め付けてしまう。

「ねぇ隆則さん……どうしてここ緩かったかまだ教えてくれてませんよ」

 ここ、と繋がったまま腰を振られまた甘い声を上げてしまう。

「い……言わないとだめ、か?」

「ダメです。俺以外のを挿れていたんですね……返事次第でまた酷くしそうだ……」

「ゃっ……いう、言うから……」

 けれど口にするのが恥ずかしい。もう絶対に遥人に抱いてもらえないと思っていたからあんな淫具を買って、しかも一年半もそれで自分を慰めていたなんて。どう濁して言えばと考えようとするが、急激に二度も達った後では頭が回るはずもない。

「お……もちゃ」

 なるべく視線を避けながら短い言葉で告げたが、許してもらえるはずがない。

「どんなの? 俺のよりも太いヤツ?」

「ちがっ……」

「教えて、隆則さん」

 わざと優しく問いかけて、言えない隆則の罪悪感を掻き立てていく。

(ずるい……)

 まるで隆則が悪いかのように言われて素直に言葉にするしかない。

「……透明で……すこしデコボコしてる……」

「なんでそんなの買ったの?」

「約束したから……遥人とだけって。でもあんなにしてたから寂しくて……」

 本当に自分が悪いのだろうか。本来ならデリヘルボーイに相手をしてもらったって責められることじゃないはずなのにと思ってしまう。淫具くらいは許して欲しい。あまりに最奥を使ってのセックスの頻度が多すぎて、分身を弄っただけでは満足できない身体になってしまった。淫具を挿れ胸の粒を弄りながら扱きながら遥人とのことを思い出さなければ性欲一つ満たすことができない。そういう身体にしたのは他でもない遥人なのになぜここまで言わされなければならないのだろう。

 悔しくて悲しくて、ポロポロと零れる涙を見られたくなくて腕で顔を覆った。

「ごめんなさいっ……泣かないで隆則さんっ」

「ひどい……そういう身体にしたの……君なのにっ」

 鼻水を啜りながら恨み言を口にする。こんな風に心情をちゃんと提示したのは初めてだと気付かないまま、年甲斐もなくしくしくと泣き続けた。

「ごめんなさい……ダメだ、隆則さんのことになるとまだ自分をちゃんとコントロールできないですぐ嫉妬する……今のは俺が悪かったです、もう言わないから顔を見せてください」

 ズズッと鼻を啜りながら、子供のように首を振る。

「顔を見せてください。ちゃんと謝らせてください、お願いします」

 必死に懇願してくる遥人の様子を腕をずらし覗き見る。眼鏡をかけず髪を乱した姿は昔と同じようで、社会人になって大人びた彼ではなく、あの頃と変わらない情熱を自分にぶつけているのかもしれない。

(顔見たら絶対に許してしまう……でもこのままじゃ遥人が可哀そうだ……)

 どちらが感情的に重いだろうか。天秤にかければあっさりと許すほうに傾くのは、こんな年上の男を自分のものにしたいとする彼の気持ちが嬉しいから。
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