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書籍化記念
Happy Lovely Christmas 24
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クリスマスの朝……を悠に通り越してすっかり午後だ。街は賑わいあちらこちらでクリスマスソングが流れているだろう。だがマンションの高層階にあるこの部屋には、欠片も入ってこない。
「無理です……あちこち、痛い」
クレームすら可愛くて、また啄んだ。
昨夜は朔弥が出会った頃の羞恥と緊張を思い出したようで、かつての頑なさを纏った姿に興奮し、随分と無理をさせてしまった。自分の手でどこまでも甘やかして愉悦を味わわせたらどうなるだろうと……ずっとこの手に閉じ込められるかと頑張ったのを思い出す。
(昔の恥ずかしがり屋の朔弥は可愛かったな)
決して口には出さない。
なぜなら、今の彼の方がずっと素敵だと理解しているからだ。思ったことを伝えてくれる今の方が、ずっと。だからこそ、小さなクレームすら嬉しくて、ついつい甘やかしてしまうのだ。
「昨夜はあのまま眠ってしまったからね、風呂に入ろう」
コクンと小さく頭が動くのを確かめてから、すでに用意した湯船に浸かるために細い身体を抱き上げた。無茶をさせすぎたのはわかっていたも、自分を止めることができなかったせめてもの償いだ。
シーツを纏ったままの朔弥の身体を宝珠のように大事に大事に運ぶ。浴室に到着すると、色に窶れた目元を大きく見開いた。
「きれい……」
嬌声に掠れた色っぽい声が、少し子供じみた響きで放たれ、アンバランスさに煽られてしまう。ぐっと堪え「そうだろう」と返す。
バスタブにはたっぷりの泡が浮かんでいる。
「映画みたい……」
「そうだね。さあ、ゆっくりと使って疲れを取ろう」
細い身体を泡の中に沈めてから自分も入る。少し少なめに張った湯は僅かに溢れたが、泡が消えることはなかった。その中で膝の上に朔弥を乗せゆっくりと豊潤なフローラルの香りに包まれていく。
朔弥が珍しそうに浮かぶ泡を掌に乗せては潰してみたり息を吹きかけたりと楽しんでいる。
毎年恒例の咲子からサーシングへの歳暮の中に含まれていたこれを、「朔弥くんの分ですからぁ、次期しゃっちょーはぜーーーーーったいに使わないでくださいね!」と宮本に押しつけられたのだが、そのやりとりさえ消失させれば、これ程までに朔弥が喜んでくれるなら試した甲斐はあったというものだ。
(こんなに気に入るなら、大量に仕入れるか)
綺麗に朔弥の身体を洗ってもう一度ベッドに戻したらネットで注文をしようと心に誓い、かみ跡が残る細い肩に湯をかけた。
「気に入ったようだね」
「泡のお風呂なんて、日本で入れると思ってませんでした」
「無理です……あちこち、痛い」
クレームすら可愛くて、また啄んだ。
昨夜は朔弥が出会った頃の羞恥と緊張を思い出したようで、かつての頑なさを纏った姿に興奮し、随分と無理をさせてしまった。自分の手でどこまでも甘やかして愉悦を味わわせたらどうなるだろうと……ずっとこの手に閉じ込められるかと頑張ったのを思い出す。
(昔の恥ずかしがり屋の朔弥は可愛かったな)
決して口には出さない。
なぜなら、今の彼の方がずっと素敵だと理解しているからだ。思ったことを伝えてくれる今の方が、ずっと。だからこそ、小さなクレームすら嬉しくて、ついつい甘やかしてしまうのだ。
「昨夜はあのまま眠ってしまったからね、風呂に入ろう」
コクンと小さく頭が動くのを確かめてから、すでに用意した湯船に浸かるために細い身体を抱き上げた。無茶をさせすぎたのはわかっていたも、自分を止めることができなかったせめてもの償いだ。
シーツを纏ったままの朔弥の身体を宝珠のように大事に大事に運ぶ。浴室に到着すると、色に窶れた目元を大きく見開いた。
「きれい……」
嬌声に掠れた色っぽい声が、少し子供じみた響きで放たれ、アンバランスさに煽られてしまう。ぐっと堪え「そうだろう」と返す。
バスタブにはたっぷりの泡が浮かんでいる。
「映画みたい……」
「そうだね。さあ、ゆっくりと使って疲れを取ろう」
細い身体を泡の中に沈めてから自分も入る。少し少なめに張った湯は僅かに溢れたが、泡が消えることはなかった。その中で膝の上に朔弥を乗せゆっくりと豊潤なフローラルの香りに包まれていく。
朔弥が珍しそうに浮かぶ泡を掌に乗せては潰してみたり息を吹きかけたりと楽しんでいる。
毎年恒例の咲子からサーシングへの歳暮の中に含まれていたこれを、「朔弥くんの分ですからぁ、次期しゃっちょーはぜーーーーーったいに使わないでくださいね!」と宮本に押しつけられたのだが、そのやりとりさえ消失させれば、これ程までに朔弥が喜んでくれるなら試した甲斐はあったというものだ。
(こんなに気に入るなら、大量に仕入れるか)
綺麗に朔弥の身体を洗ってもう一度ベッドに戻したらネットで注文をしようと心に誓い、かみ跡が残る細い肩に湯をかけた。
「気に入ったようだね」
「泡のお風呂なんて、日本で入れると思ってませんでした」
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