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書籍化記念

Happy Lovely Christmas 14

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 たったこれだけの触れあいで欲してしまうほど、彼に飢えている。

 今月に入って二人とも忙しくてそれどころじゃないのに、抱きしめて眠ってくれているのに、ずっと堪えなければならない。

(だって……約束は守らないと……一人でしちゃいけない、約束……)

 付き合うためのルール。一人ではしないと約束させられたのだ。互いに忙しいとこんなに辛いなんて知らなかった。自分は性的なことに淡泊だと思っていたが、柾人が相手なら違うようで、独特のシトラスの香りを嗅いだだけでずくりと腹の奥が撫でられるような感覚になる。

 すぐにでも彼が欲しいのに、まだ夜じゃない。

 夕食の大量のオードブルは冷蔵庫の中にあり、柾人だって今すぐにしようと言うつもりはないだろう。

 けれど唇が合わさると朔弥は自分から隙間を作り、彼の舌を迎え入れる。知り尽くした舌が絡まり、味を覚えた甘さのある唾液を飲み込む。もっと欲しくて自分から舌を伸ばし彼の口内で嬲られに行く。何をしても気持ちよくて、もっととねだるように逞しい首に両手を回し、背伸びをする。

 隙間なく重なった二つの身体の中心が、双方とも熱くなるのに時間はかからなかった。

 けれど、まだだ。わかっているからこそ、相手の熱を意識したまま口付けだけを激しくしていく。

 上顎の裏を擽られて身体が震え、歯列を舐められて吐息を零す。

 うっすらと開いた目には涙の膜が張り、自分が興奮しているのを知る。

 本当はもっと欲しくて、すぐにでも寝室に飛び込みたくて、彼だけを感じたいのに、ぐっと堪えてゆっくりと身体を離す。その合図に柾人も心得ているとばかりに口付けを解いていった。

「ありがとう、愛しているよ朔弥。君が私のことを気に掛けてくれるのが嬉しい」

「それは……オレもです」

 見つめ合ったままこんな甘いセリフを口にするなんて恥ずかしくてできなくて、つい俯いてしまう。その頭頂部にキスを落として、柾人がゆっくりと離れていった。

 僅かに淫靡さを纏った空気を払いのけるようにキッチンへと入った。

「では夕食の準備をしよう。早く食べて、その後の時間をゆっくり過ごそう」

 意味がわかっているから、火照った身体がまた熱くなる。中途半端に燻られた快楽の火種をそのままに、柾人の手伝いをする。彼が用意してくれた懐かしいカクテルを呑み、食事を勧める。

 白のスパークリングワインとオレンジジュースを混ぜただけのカクテルは、あの日のことを思い出させる。

 悲しくて悔しくて、何も言えなかった鬱憤を晴らすように呑み続けた薬のようなウイスキーの代わりに置かれたのが、夜明けを彷彿とさせる鮮やかなオレンジ色のカクテルだった。
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