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書籍化記念

Happy Lovely Christmas 9

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「ではこの二色を追加してください」

「かしこまりました。では一月後に仮縫いのため再度お越し頂ききたいのですが、山村様のご都合のよろしい日程をお教えいただけますか」

 柾人がワイシャツを渡したスタッフがさりげなく朔弥を奥のテーブルへと案内する。その間、彼に届かない音量でオーナーが話しかけてきた。

「さて、蕗谷夫人にわたくしは知らぬ存ぜぬを通せばよろしいでしょうか」

「ご迷惑をおかけいたしますが、何かございましたら私に連絡を下さるようお伝えください。女王様の逆鱗に触れることをしている自覚は重々ありますので」

 咲子の性格を熟知しているオーナーは鷹揚に頷き、そっと耳打ちしてきた。

「独占欲は今より僅かばかり下の位置にお願いいたします。せっかくのスーツが倉掛様のいたずらで色褪せてしまいます」

「四月以降は気をつけます」

 苦笑すれば頭を下げオーナーが離れていった。

 まさかそんな指摘をされるとは。

 昨夜も深夜を回って帰った柾人が寝入りばなに細い首筋に付けたキスマークに対する忠告だ。ワイシャツでは隠れない位置だと上品に告げてくるあたり、やはり頭が上がらない。

 さて困った。あの位置で怒られるのならこれからどうやってマーキングをすればいいのだろう。困りながらも柾人の表情は甘いままだ。

 日程調整を終えた朔弥が憔悴した表情で戻ってきた、笑顔のオーナーとは真逆に。丁寧に見送られ店を出ると、すっかり街は人で溢れかえっていた。当然だ、今日はクリスマスイブなのだから。

「あんなにたくさんも……本当によかったんですか?」

「当たり前だ。でなければ咲子様が不足分を購入するだろう。できれば朔弥が着る服は全部、私が贈ったものであってほしいんだ」

 ささやかなマーキング。

 彼が自分の恋人であると、誰にも手を出させないと。そして自己満足。

 さすがに朔弥はキスマークがオーナーに見られたと気付いていないようだが、やはり自重は必要だろうか。

 だが服だけは譲れない。

「だめかい?」

 いつものように下手に出れば、それ以上言えない朔弥が眉尻を下げ嘆息をした。

「今回だけですよ。これ以上は本当に……後は自分の給料で買いますから」

「まあ先のことは追って話し合おう」

 当然、諾とは言わない柾人である。

 そのまま駅前まで行き、大きな家電量販店へと入る。

「また何か買うんですか?」

 訝しむ朔弥を目当てのフロアへと案内し、特設コーナーが設けられた全自動掃除機の前へと連れて行く。

「さあ、どのタイプがいいか教えてくれないか。私としては自動ゴミ収集機能まで全自動で行うタイプが良いかと思っているんだが」
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