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書籍化記念

Happy Lovely Christmas 5

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「ミーはそろそろ眠いので素っ気ないんです。さあ、出かけましょう」

「そうなのか? この時間に寝ては夜があまり眠れなくなるんじゃ」

「猫は夜行性ですよ。しかももう年だから睡眠時間が多いのはしょうがないです」

「そうなのか……」

 動物を飼ったことがない柾人には、そんな当たり前の事すらわからず驚いて、自分を納得させようと玄関へと向かう。すでにロングのダウンコートを羽織った朔弥が待っていた。

「柾人さんはミーのこともですけど、オレのことも甘やかしすぎます。少しは自粛してください」

 それはこれから柾人がやろうとしている事への牽制なのだろうか。つい深読みして、だが放棄する。彼がなんと言おうと彼らを甘やかすことは止められそうにないから。苦笑で交わして部屋を出た。

 クリスマスにイルミネートされた繁華街へと歩いて行き、色鮮やかなウィンドウを横目によく休日に昼食を摂るレストランへと向かう。この店の味を朔弥が気に入り、同居してから頻繁に訪れるようになった。もうメニューを見なくても覚えられるくらいだ。

 いつも美味しそうに盛られているシェフお任せのプレートを二つ頼んで、軽く昼食を終えてから柾人が目指していた店へと向かう。柾人では少し足りない量ではあったが、プレートをすべて腹に入れた朔弥はそれだけで胃が凭れたように「食べ過ぎました」と言っているのが心配に拍車を掛ける。

(やはり全自動掃除機は導入必須だ。少しでも朔弥の家事を減らして食事を取る時間を作らないと!)

 柾人一人ならそれほど汚れはしないからと、掃除用具があまり揃っていない部屋ではあるが、今は朔弥だけではなくミーもいるのだ。老猫の彼女が少しでも居心地の良い空間にしようと提案したら朔弥もきっと折れてくれるだろう。

 そう願い、まずはと目的地へと進む。柳がすっかり葉を落としたメインストリートから少し脇に入った小さな店舗ばかりが並ぶ道を進めば、目当ての場所はすぐだった。

 こぢんまりとした木の扉は酒を提供する洒落た店のような木製だが、そこをくぐれば布やトルソーが並んでいた。

「ここって……」

 すぐに朔弥が戸惑った声を上げるが、笑顔を向けることで封じた。

「倉掛様、ご無沙汰しております。山村様、ようこそいらっしゃいました」

 身体にフィットしたワイシャツとベストを身につけた初老の男性が近づいてきた。一流のテーラーであるオーナーだ。

「こちらこそご無沙汰しております。連絡しましたとおり、彼のスーツをお願いします」
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