88 / 110
書籍化記念
Happy Lovely Christmas 3
しおりを挟む58-①
「……なるほど、そういう事ですか」
フリードの連続攻撃を躱しながらシルエッタは、そう呟いた。
……彼女は気付いた。影魔獣に命を吸われて、死ぬ寸前だった目の前の実験動物が突如として生気を取り戻した理由を。
「吸命剣の力ね……」
吸命剣・妖月は、斬った相手の生命力を吸い、使い手に注ぎ込む……先程、あの実験動物の少年は、私が召喚した影魔獣を妖月で刺した。
おそらく、妖月は突き刺した影魔獣の生命力を吸い取り、あの少年に注ぎ込んだはずだ。
……あの実験動物の体内に入り込んだ影魔獣も、宿主が死ねば自分も消えてしまう事くらいは本能的に理解しているはずだ。あの少年に巣食う影魔獣は、宿主の生命力の代わりに……妖月を通じて流れ込んできた生命力を餌として喰らったのだ。
そして、体内の影魔獣が宿主の生命力を喰らうのを止めた事によって、あの少年は元気を取り戻した……と、大方そんな所であろう。
「あら?」
フリードの攻撃をひらりと躱し続けていたシルエッタだったが、とうとう壁際まで追い詰められてしまった。
「追い詰めたぞ、シルエッタ!!」
恐竜型影魔獣、《黒王》の頭部と化したフリードの右拳が “グルル……” と低く唸る。
「おう、観念せぇコラァ!!」
「そうです、もう逃げられませんよ!!」
武光とナジミも包囲に加わった。
だが、シルエッタは微塵も焦る様子を見せず、静かに微笑んだ。
「な……何がおかしい!?」
「ふふ……今に分かりますよ」
武光とフリードがシルエッタに飛びかかろうとしたその時だった。
「隊長ーーー!!」
工房の入り口を固めていたはずのクレナ、ミナハ、キクチナの三人が大慌てで工房内に入ってきた。
「たたたた大変ですっ!!」
「どないした、クレナ!?」
慌てふためくクレナ達を見て、シルエッタはニコリと微笑んだ。
奴らは私を追い詰めたと思っているかもしれないが……それは違う。既にこの工房は……私の召喚した三十体もの影魔獣達によって完全に包囲されているのだ。ジワジワとなぶり殺しに──
だが、シルエッタの思考はクレナが発した言葉によって遮られた。
「て……天驚魔刃団です……天驚魔刃団が!!」
「「……は?」」
奇しくも、武光とシルエッタが同じタイミングで同じリアクションをした次の瞬間……
“バコーーーーーン!!”
工房の壁をぶち破って一つの影が飛び込んできた。
「お、お前は……!!」
「よう、本体!! 吸命剣・妖月……返してもらうぞッッッ!!」
影光が 現れた!!
26
作者の新作情報はX(twitter)にてご確認くださいhttps://twitter.com/shiina_sakura77
お気に入りに追加
4,263
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)



久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます
猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」
「いや、するわけないだろ!」
相川優也(25)
主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。
碧スバル(21)
指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。
「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」
「スバル、お前なにいってんの……?」
冗談? 本気? 二人の結末は?
美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。