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書籍化記念

柾人が嫉妬をした夜は18

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「そんなことを言われたらまた、朔弥を貪りたくなる」

「でもっ……そんな、無理です!」

 慌てて逃げようとしても、腰が立たない朔弥が逃げおおせるわけもなく、反転しただけですぐに柾人の腕の中に連れ戻された。肩も首もたっぷりとかみ跡を残している。しばらくはハイネック以外身に付けることはできないだろう。

「昨夜は後ろからだったから、今日は前からしようか。朔弥には物足りないかもしれないが」

 どんな体位でも感じてしまう愛しい恋人に、悪魔のような提案をする。

 朔弥も感じ取ったのか、振り向いた怜悧な顔が引きつり始めた。

「まだ……するんですか?」

「私にわがままを言われるのが嬉しいんだろう。今日は一日朔弥を可愛がり続けたいんだが、ダメかい?」

 啼きすぎて掠れた声を放つ唇を塞いで、昨夜の続きとばかりに朝だから元気になった欲望を愛しい身体に擦り付けた。

 あれだけ愛情をぶつけてもまだ足りない。不思議だ、朔弥にならどれだけ気持ちをぶつけても次から次へと湧きあがってくる。

 まるでこの一ヶ月放っておかれた分をすべてその身に浴びせようとするかのように。

「ダメ……じゃ、ないです」

 大きな瞳をゆっくりと瞼で隠した朔弥が小さな声を漏らした。

「嬉しいよ。愛している、朔弥」

 どこまでも柾人に甘い恋人を組み敷いて、宣言通り一日中想いをぶつけたはいいが、さらに翌日の日曜日、柾人は鬼の形相であるマンションの扉の前に立っていた。手には大量の土産を差し出しているというのに、相手はちっとも受け取ろうとしない。それどころか見せつけるようにニヤリとかまぼこ形になった目をこちらに向ける。

「んもぉ社長たちが一日帰ってくるの遅かったからぁ、ミーちゃんとこんなに仲良しになりましたぁ」

 愛猫のミーが喉をゴロゴロと鳴らして社員の宮本に顔を擦り付けている。しかも、顔に、だ。

 出張に行っている一日だけ預かって貰ったのは、一人で留守番をさせるのが忍びなかったから。実家で猫を飼っているという宮本がペットシッターを引き受けてくれたのには感謝しているが、愛娘として可愛がっている柾人にすらこんな仕草をしてくれたことはない。

 自然と青筋が浮き出る。

「一日もえんちょーしたからぁ、昨夜はミーちゃんと一緒に寝ちゃいましたぁ」

 柾人が凄い形相になっていると知りながら、宮本はちっとも気にすることなく、腕の中で良い子にしているミーの喉元を指で擽った。マンチカン特有の短い両手でしっかりと宮本の腕を掴み、うっとりとした表情を惜しげもなく晒している。

 こんな顔、柾人にはちっとも見せてくれないのにと嫉妬が沸き起こる。
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