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書籍化記念

柾人が嫉妬をした夜は15

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 この人と出会えて、本当に良かった。

 この人に愛されて、本当に良かった。

 嬉しくて嬉しくて、悦びに涙が流れ続ける。

 やっと力が入り始めた手で、抱き留めてくれる柾人の腕にしがみ付いて啼き続けた。

 好きだから、愛しているから、もっとして。そう何度も心で叫び感じ続ける。

 どれほど揺さぶられ続けたのか、一番深い場所に柾人の熱を浴びた。

「ぁあっ!」

 熱を感じると同時に朔弥も何度目かわからない絶頂に到達して身体を震わせた。

 ずるりと力を失った欲望が抜け、手が離れたと同時にベッドへと突っ伏した。痙攣が治まらないまま、充足を味わう。

「バカだね、している最中に『愛してる』なんて言われたら、抱き潰してしまうだろう」

 満たされたとわかる優しい声音が耳元に注がれ、紅潮した頬に唇を押し当てられた。

 それでいい。

 嬉しいから。

 柾人に抱かれるのは。

 愛されるのは。

 明日には東京に戻らなければならないのに、そんなことはもう頭から吹き飛んでいた。沿わされた手をギュッと握って口元へと運ぶ。男らしい節の張った指に口付けを落とし、熱い吐息を吹きかける。

「好き……」

 掠れた声で想いを告げる。どんなことをされてもこの想いは消えることはない。だってこの五年、ずっと大切にされてきたから。そしてこれから先もずっと変わらず大切にしてくれると信じているから。

 柾人の戸籍に入れてくれ、ただ一人の家族として側に置いてくれて。だから仕事でもずっと一緒にいられるように頑張らなきゃダメなんだ、一人で重責を背負うこの人を少しでも支えるために。

「嫉妬、してくれたの……嬉しかった」

 わざとではない、まさか飲み会であんなスキンシップを取られるとは夢にも思わなかった。けれど、柾人の熱い視線は嬉しかった。あんな射貫くような眼差しは初めて見たから。こんなにも想われているんだと嬉しかった。

 だから激高していても平静でいられる。

 思いの丈をぶつけられて陶酔してしまう。

 それほど自分は愛されているんだと。

「もっと……あいして」

 舌っ足らずの掠れ声。

「どうなっても知らないぞ」

「ん……いいから……」

「昔みたいに平日も抱き潰して、仕事に行けないようにしてしまいそうだ」

 それは嫌だ、自分にとって仕事はとても大切だから。けれどそんな情熱をぶつけて欲しいとも思う。品行方正な恋人でなくていい。愛情のまますべてをぶつけて欲しい。

「……お休みの日なら……」

「ふっ、こういう時でもいいとは言わないところが朔弥らしい」

 チュッと汗に濡れた髪にキスを落とす。それすら気持ちよくて甘い吐息が零れ落ちる。
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