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16 身体を重ねて君を知る1
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悠人がシャツのボタンを一つ一つ外している。それを見ているだけでいつものように中西の下半身が見事に反応した。ドッキンドッキンした心臓が煩い。このままだと確実にやばいことになる。いつも悠人をおかずに処理しているベッドに本人が座っているこの事実に、自分が愚かな選択をしたことをまじまじと突きつけられる。
(俺のベッドに井ノ上が……)
これから毎日ベッドに入るたびに悠人の顔がちらついて安眠なんてできなくなる。
しかもそんなベッドの上で服を脱ぐなど悠人はなにを考えているのか。
止めた方が良いのか……いや、いけない期待している自分が悪い、きっと悠人には別の考えがあるはず……と思いながらも、元気な下半身が暴れ始める。
「あ……なにしてるの井ノ上?」
最後までボタンを外した手は、当たり前のようにシャツを脱ぎ落とした。当然のように肌着に手をかける。
ゴクリ。
生唾を飲み込みながら、その一部始終から目を離せない。
悠人がここにいるだけでも奇跡なのに、こんなシーンを見せつけられたら、今まで頑張った自制心なんてあっという間に粉々になってしまいそう。
無意識に握りしめていた掌に汗が浮かぶ。
(これってつまり、そういうことをしろってこと……なのか?)
告白の返事をするといって服を脱ぐならつまりそういうことなのだろうか。
ドンッとまた血が下半身に集まりだした。つられて首筋まで真っ赤になるのが分かる。全身を駆け巡る血が大暴れして、近くにいる悠人にまでこの激しい程の心音が聞かれているのではと焦ってしまう。
肌着から頭を抜いた悠人は、それもシャツと同じようにベッドに落とすと、いつもよりもずっと硬い表情でこちらを向いた。
「こんな身体でも僕が良いのか?」
「こんな身体って……」
痩せ細った身体に日本人にしては色の薄い肌。その胸の部分を中心にたくさんの手術痕が残っている。薄れているのもあればそうでないのもあり、ずっと繰り返し辛い思いをしていたことを物語っている。
「気持ち悪いだろ、これ」
悠人の細い指がまだはっきりと跡を残す大きな手術痕を辿った。すっかり塞がれているが、生々しいそれを見せてどうしようというのだろう。
そんな痕なら自分の足にもある。
もう飛べなくなった証のようにくっきりと、いつ癒えるのかも分からないままはっきりと、刻み込まれている。
「それがなんだ?」
「こんな痕がいっぱいの身体でも、お前はまだ綺麗だとか好きだとか言えるのか?」
中西は頭の中にクエッションマークを鏤(ちりば)めながら、真剣な表情の中に悠人の怯えを感じた。なにを怖がっているのか分からない。けれど、それを目の当たりにしても、一向に萎える気配がない。むしろもっと興奮してしまう。
衝動のように悠人が辿った傷跡を自分も辿れば、身体が一層熱くなる。
「うん、言える。だってこの傷、井ノ上が生きるために必要な物だろ。だったらこれ込みで井ノ上ってことじゃん」
「……そういうことじゃなくて、これを見ても勃つのかと言ってるんだ!」
「えっ、すでに勃ってるんですけど……」
「はぁ?」
「あ……」
悠人が胡乱な目でそこを見つめて初めて、自分がなにを言ったのかがようやく頭に辿り着いた。
(やばっ!)
さすがに「あなたを見て勃起してます」なんて直に言われたら誰だってこんな目をするだろう。
「ほら、あれ! 井ノ上が急に服を脱いだから……あの、その……ごめんなさい」
すっと前を隠すように押さえれば、じっとそこを見つめられ、思い切り笑われた。今まで見たこともない明るい表情で、どこまでも楽しげに。
「こんな痕を見ても勃つのか……あは……あはははは」
「そんなに笑うことないだろぉ」
勃ったしまうものはしょうがない。大好きな悠人が、自分がいつも使っているベッドにいるというシチュエーションだけでも興奮するのに、上半身を露わにされたら余計に反応するに決まっている。みっともないと分かっていても、それが事実だ。
同時に、初めて見た悠人の破顔が可愛くて、より一層その気になってしまったなんて口にもできない。
情けない顔をした中西を悠人は笑いすぎて流れた涙を拭いながら、手招いた。
忠犬よろしく、その足下に正座する。
伸びた髪を悠人が撫でた。
「こんなのがあっても、まだ好きって言うのか?」
「うん。めちゃくちゃ好きだし、めちゃくちゃ大事にしたいと思ってる」
こんな格好悪いところを見られても、悠人が許してくれるならずっと側にいたい。いさせて貰えるだろうかと期待を込めて見上げてしまう。
悠人が今までにないほど穏やかに微笑んだ。
「本当に物好きだな」
「すみません……」
「……お前だったら良いよ」
「ほんと! ありがとう井ノ上!!」
嬉しくてガバリと抱きつけば細い身体はすっぽりと両手の中に収まった。
「めちゃくちゃ嬉しい……」
悠人の体温が伝わってくる。早く服を着させないとと思う反面、もうしばらくこのままでいたい。肺いっぱいにその匂いを吸い込み、生きているその温かさを味わう。
「俺、本当に井ノ上のことが大好きだから」
細い肩に顔を埋めた中西を悠人もそっと抱きしめた。
「ありがとう、中西……」
細い細い腕に力が込められても痛みは感じない。ただ心地良いだけだ。
けれど、中西のある部分だけは穏やかになりはしなかった。むしろ悠人の体温を感じたことで今までより激しく自己主張を繰り返している。
口に付いてしまった言葉でも、さすがに体感させたらまずいだろうと少しだけ腰を引けば、腕の中に悠人がふぅっと細く長い息を吐き出した。
「俺としたいのか?」
なにが、とは訊かない。この状況で思い当たることは一つしかない。
「できれば……。でも井ノ上がいやだったら俺、トイレ行くから!」
そこで下半身をすっきりさせておけば、さすがに襲うことはない、はずだ。多分。経験値なんてないからそれで収まるかどうか確証はないが、悠人の嫌がることはしたくなかった。
「いいよ」
悠人が上目遣いでこちらを見る。今までにない蠱惑的な表情に、心臓が爆発しそうになった。熱が身体中を駆け巡り、一点に集まっていく。頬を真っ赤にしながら、小悪魔のような仕草を見つめて膨らんだアーモンド型の目の端が僅かに朱に染まっている。
こんな表情を見せられたら自制心なんてあっという間に瓦解する。
(卑怯だよ、井ノ上……こんなときに限ってそんな可愛い顔するなんて)
襲ってしまう。
本人の同意を得ているから襲うという表現はおかしいかも知れないが、少なくともこのまま押し倒したくてしょうがない。
なのに悠人は躊躇うことなく、中西が着ていたパーカの裾を掴んでたくし上げた。
「い……のうえ?」
「したいんだろ。良いって言ってるんだからさっさと脱げ」
「でもっ」
「どうせお前と付き合うんだったらいつかするんだろ。だったら今でも良いじゃないか」
「そうだけど……本当にいい、のか? その……井ノ上は無理とかしてないか?」
「いいから早くしろ!」
「はいっ!」
慌てて服を脱ぎ捨てていくが、下着を脱ぐのだけは躊躇われた。いくらしていいと言われても、露骨な場所を見て怯えてしまうからも知れない。悠人が怖がったらすぐにでも止められるようにしたいが、できる自信が本当にない。だって夢にまで見た悠人が自分と付き合うことになって、していいって言われている。このまま行けば悠人が嫌がったときに自分を止められなくなってしまう。
中西はそれが怖かったが、下半身はもうガチガチになってしまっていて収まりが付かなくなっている。
悠人も当たり前のように勢いよく下着ごとズボンを脱ぎ捨てた。あまりの潔さに自分が情けなくなっていく。
「本当にいい、のか?」
「だから良いって言ってるだろ。押し倒したいなら早くしろ」
「じゃ……じゃあ」
ベッドに座っている悠人の上体を軽く押せば、ほっそりとした身体はふわりと倒れ込んだ。その上に覆い被さり、じっと見つめてくる綺麗な顔を見ながら、緊張しながら、少しだけ開いた唇にキスをした。
柔らかい感触に心臓が高鳴る。
(俺今、井ノ上と、キスしてる……)
現実かどうか確かめたくて、少し離れてはもう一度淡い色の唇を塞ぐ。何度も離れては触れるキスを続け、ほんの少しだけ大胆に下唇を吸った。
「んっ」
薄目を開け悠人の表情を確かめれば、閉ざされた目元の端の赤みが増していく。悠人も興奮しているのだと分かると、行動はさらに大胆さになった。
薄く開かれたままの唇の隙間に舌を潜り込ませ、その奥に引っ込んでいる舌先を突く。怖がって怯えているのかと思えば、悠人は躊躇いもなく舌を動かし絡んできた。
(やばいって!)
キスをしているだけなのに、凄く気持ちよくてもっともっと悠人に触れたくなる。初めてでどうすれば良いかなんて分からない中西は、欲望のままに舌を絡ませたまま、悠人の肌を撫で始めた。
(俺のベッドに井ノ上が……)
これから毎日ベッドに入るたびに悠人の顔がちらついて安眠なんてできなくなる。
しかもそんなベッドの上で服を脱ぐなど悠人はなにを考えているのか。
止めた方が良いのか……いや、いけない期待している自分が悪い、きっと悠人には別の考えがあるはず……と思いながらも、元気な下半身が暴れ始める。
「あ……なにしてるの井ノ上?」
最後までボタンを外した手は、当たり前のようにシャツを脱ぎ落とした。当然のように肌着に手をかける。
ゴクリ。
生唾を飲み込みながら、その一部始終から目を離せない。
悠人がここにいるだけでも奇跡なのに、こんなシーンを見せつけられたら、今まで頑張った自制心なんてあっという間に粉々になってしまいそう。
無意識に握りしめていた掌に汗が浮かぶ。
(これってつまり、そういうことをしろってこと……なのか?)
告白の返事をするといって服を脱ぐならつまりそういうことなのだろうか。
ドンッとまた血が下半身に集まりだした。つられて首筋まで真っ赤になるのが分かる。全身を駆け巡る血が大暴れして、近くにいる悠人にまでこの激しい程の心音が聞かれているのではと焦ってしまう。
肌着から頭を抜いた悠人は、それもシャツと同じようにベッドに落とすと、いつもよりもずっと硬い表情でこちらを向いた。
「こんな身体でも僕が良いのか?」
「こんな身体って……」
痩せ細った身体に日本人にしては色の薄い肌。その胸の部分を中心にたくさんの手術痕が残っている。薄れているのもあればそうでないのもあり、ずっと繰り返し辛い思いをしていたことを物語っている。
「気持ち悪いだろ、これ」
悠人の細い指がまだはっきりと跡を残す大きな手術痕を辿った。すっかり塞がれているが、生々しいそれを見せてどうしようというのだろう。
そんな痕なら自分の足にもある。
もう飛べなくなった証のようにくっきりと、いつ癒えるのかも分からないままはっきりと、刻み込まれている。
「それがなんだ?」
「こんな痕がいっぱいの身体でも、お前はまだ綺麗だとか好きだとか言えるのか?」
中西は頭の中にクエッションマークを鏤(ちりば)めながら、真剣な表情の中に悠人の怯えを感じた。なにを怖がっているのか分からない。けれど、それを目の当たりにしても、一向に萎える気配がない。むしろもっと興奮してしまう。
衝動のように悠人が辿った傷跡を自分も辿れば、身体が一層熱くなる。
「うん、言える。だってこの傷、井ノ上が生きるために必要な物だろ。だったらこれ込みで井ノ上ってことじゃん」
「……そういうことじゃなくて、これを見ても勃つのかと言ってるんだ!」
「えっ、すでに勃ってるんですけど……」
「はぁ?」
「あ……」
悠人が胡乱な目でそこを見つめて初めて、自分がなにを言ったのかがようやく頭に辿り着いた。
(やばっ!)
さすがに「あなたを見て勃起してます」なんて直に言われたら誰だってこんな目をするだろう。
「ほら、あれ! 井ノ上が急に服を脱いだから……あの、その……ごめんなさい」
すっと前を隠すように押さえれば、じっとそこを見つめられ、思い切り笑われた。今まで見たこともない明るい表情で、どこまでも楽しげに。
「こんな痕を見ても勃つのか……あは……あはははは」
「そんなに笑うことないだろぉ」
勃ったしまうものはしょうがない。大好きな悠人が、自分がいつも使っているベッドにいるというシチュエーションだけでも興奮するのに、上半身を露わにされたら余計に反応するに決まっている。みっともないと分かっていても、それが事実だ。
同時に、初めて見た悠人の破顔が可愛くて、より一層その気になってしまったなんて口にもできない。
情けない顔をした中西を悠人は笑いすぎて流れた涙を拭いながら、手招いた。
忠犬よろしく、その足下に正座する。
伸びた髪を悠人が撫でた。
「こんなのがあっても、まだ好きって言うのか?」
「うん。めちゃくちゃ好きだし、めちゃくちゃ大事にしたいと思ってる」
こんな格好悪いところを見られても、悠人が許してくれるならずっと側にいたい。いさせて貰えるだろうかと期待を込めて見上げてしまう。
悠人が今までにないほど穏やかに微笑んだ。
「本当に物好きだな」
「すみません……」
「……お前だったら良いよ」
「ほんと! ありがとう井ノ上!!」
嬉しくてガバリと抱きつけば細い身体はすっぽりと両手の中に収まった。
「めちゃくちゃ嬉しい……」
悠人の体温が伝わってくる。早く服を着させないとと思う反面、もうしばらくこのままでいたい。肺いっぱいにその匂いを吸い込み、生きているその温かさを味わう。
「俺、本当に井ノ上のことが大好きだから」
細い肩に顔を埋めた中西を悠人もそっと抱きしめた。
「ありがとう、中西……」
細い細い腕に力が込められても痛みは感じない。ただ心地良いだけだ。
けれど、中西のある部分だけは穏やかになりはしなかった。むしろ悠人の体温を感じたことで今までより激しく自己主張を繰り返している。
口に付いてしまった言葉でも、さすがに体感させたらまずいだろうと少しだけ腰を引けば、腕の中に悠人がふぅっと細く長い息を吐き出した。
「俺としたいのか?」
なにが、とは訊かない。この状況で思い当たることは一つしかない。
「できれば……。でも井ノ上がいやだったら俺、トイレ行くから!」
そこで下半身をすっきりさせておけば、さすがに襲うことはない、はずだ。多分。経験値なんてないからそれで収まるかどうか確証はないが、悠人の嫌がることはしたくなかった。
「いいよ」
悠人が上目遣いでこちらを見る。今までにない蠱惑的な表情に、心臓が爆発しそうになった。熱が身体中を駆け巡り、一点に集まっていく。頬を真っ赤にしながら、小悪魔のような仕草を見つめて膨らんだアーモンド型の目の端が僅かに朱に染まっている。
こんな表情を見せられたら自制心なんてあっという間に瓦解する。
(卑怯だよ、井ノ上……こんなときに限ってそんな可愛い顔するなんて)
襲ってしまう。
本人の同意を得ているから襲うという表現はおかしいかも知れないが、少なくともこのまま押し倒したくてしょうがない。
なのに悠人は躊躇うことなく、中西が着ていたパーカの裾を掴んでたくし上げた。
「い……のうえ?」
「したいんだろ。良いって言ってるんだからさっさと脱げ」
「でもっ」
「どうせお前と付き合うんだったらいつかするんだろ。だったら今でも良いじゃないか」
「そうだけど……本当にいい、のか? その……井ノ上は無理とかしてないか?」
「いいから早くしろ!」
「はいっ!」
慌てて服を脱ぎ捨てていくが、下着を脱ぐのだけは躊躇われた。いくらしていいと言われても、露骨な場所を見て怯えてしまうからも知れない。悠人が怖がったらすぐにでも止められるようにしたいが、できる自信が本当にない。だって夢にまで見た悠人が自分と付き合うことになって、していいって言われている。このまま行けば悠人が嫌がったときに自分を止められなくなってしまう。
中西はそれが怖かったが、下半身はもうガチガチになってしまっていて収まりが付かなくなっている。
悠人も当たり前のように勢いよく下着ごとズボンを脱ぎ捨てた。あまりの潔さに自分が情けなくなっていく。
「本当にいい、のか?」
「だから良いって言ってるだろ。押し倒したいなら早くしろ」
「じゃ……じゃあ」
ベッドに座っている悠人の上体を軽く押せば、ほっそりとした身体はふわりと倒れ込んだ。その上に覆い被さり、じっと見つめてくる綺麗な顔を見ながら、緊張しながら、少しだけ開いた唇にキスをした。
柔らかい感触に心臓が高鳴る。
(俺今、井ノ上と、キスしてる……)
現実かどうか確かめたくて、少し離れてはもう一度淡い色の唇を塞ぐ。何度も離れては触れるキスを続け、ほんの少しだけ大胆に下唇を吸った。
「んっ」
薄目を開け悠人の表情を確かめれば、閉ざされた目元の端の赤みが増していく。悠人も興奮しているのだと分かると、行動はさらに大胆さになった。
薄く開かれたままの唇の隙間に舌を潜り込ませ、その奥に引っ込んでいる舌先を突く。怖がって怯えているのかと思えば、悠人は躊躇いもなく舌を動かし絡んできた。
(やばいって!)
キスをしているだけなのに、凄く気持ちよくてもっともっと悠人に触れたくなる。初めてでどうすれば良いかなんて分からない中西は、欲望のままに舌を絡ませたまま、悠人の肌を撫で始めた。
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