クロムクドリが鳴くまでは

椎名サクラ

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第四章 贖罪 13

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「貴方の心だけでなく、全てに俺を刻みつける」

 生成りの服が強い力に破かれ、白くみすぼらしい身体が露わになる。悲鳴にも似た音なのに、エドゼルは頬と眦を紅潮させたまま、余裕なく自分を貪ろうとするその姿を見つめた。

 こんなにも想われているのになぜ気付かなかったのか。

 後悔と恐怖が胸を占める。もっと早く知っていたのなら宮廷でも心は揺れ動かなかっただろう。だが一度でもこんな激しい感情を受け入れたなら自分がどう変わってしまうかわからない。

 怖いが、溺れんばかりの想いに陶酔する。

 彼に愛されるこの一瞬だけ、一瞬だけでいい、自分が罪人だと忘れさせてくれと神に祈る。

 そうすればこの先、終わりのない贖罪の旅を続けられる。

 エドゼルは少し乱暴なヒルドブランドの愛撫を受け入れた。

「あぁ……んっ」

 白い肌に赤い花弁が刻み込まれ、場所を変え幾度も散り重なる。胸もへこんだ腹も余すところなく刻まれ、胸が熱くなる。

 下着の中にまで手が入ってくる。

 エドゼルは僅かに腰を上げ脱ぐのを助ければ、すぐに足元まで下ろされた。勃ち上がった分身が揺れる。

 遠慮なくそれを握り込んだヒルドブランドは、先走りのぬめりを借り扱き始めた。

「あぁぁっ、駄目だヒルドっ! やめてくれ」

 すぐにでも達ってしまう。旅を始めてから一度も触れていない分身は嬉しいとばかりに透明の涙を零した。感じてしまう自分が恥ずかしくて拒む言葉を紡いでも、その声は甘くねだっているようだ。

「やめてくれっ……もぉ、はなして……ぁぁぁっ」

 エドゼルは身体を仰け反り背中が浮く。ヒルドブランドの口内に含まれ、腰から艶めかしい痺れが背筋を通って駆け上がる。

 嬌声の中で拒んでも意味がないとばかりに、動きが早められた。

 分身がヒルドブランドの口内にあるというだけで、身体は昂ぶり腹の奥の熱が暴れてしまう。簡単に達してしまうのが怖くて嫌がっても、吸われるとまた嬌声を放った。

 指と唇で容赦なく追い上げられ、エドゼルは首を振って愉悦から逃げるが、力強い刺激にすぐに捕まり快楽の海に沈められる。

「もうだめだっ……はなしてくれ!」

 拒むように先端の穴に舌が潜り込み広げられる。駄目だと何度言っても許しては貰えない。そのまま強く吸い上げ放出を促される。

 堪らなかった。

 エドゼルは拒み続けた末、屈するしかない。

「ぃくっ……ゃあぁぁぁぁぁっ!」

 何度も腰を揺らし大量の蜜を放った。全てを受け止めたヒルドブランドがやっと身体を起こす。白濁の蜜が掌に吐き出される。久しぶりに味わった快楽に惚けたエドゼルは見るともなしにそれを見つめた。蜜と唾液で濡れた指が、弛緩した身体に伸ばされる。

「あっ」

 すぐに窄んだ蕾へと潜り込んでくる。

 もうそこを弄られれば感じると知っている身体は、嬉しいとばかりに指を締め付けた。

「あぁ……だめだ……水の魔法で……」

 濡らせばいいと伝えてもヒルドブランドは険しい顔をするばかりだった。

「いやだ。貴方を悦ばせるのに魔法は使いたくない」

 白濁をまぶし中を探るように動く。どこを弄られれば啼くかを知っている指がすぐに分身の裏側を押した。

「ひっ……そこは!」

「ここが感じるんだろう」

「まだだ、もう少し待ってくれ……」

 身体が鎮まらないまま愉悦にまた流されるのが怖い。だが余裕をなくしているヒルドブランドはエドゼルの願いを聞いてはくれなかった。何度もそこを押し感じさせると、指を増やし抽挿を繰り返した。

「あぁぁっだめだ! おかしくなってしまう……」

「なれ……なって俺だけを求めてくれ」

 嫌だ、そうなってしまったならもうヒルドブランドから離れられなくなる。胸に宿った恐怖が大きくなるのに、溺れたいと切望してしまう。

 今だけ、今だけなら。

 エドゼルは愉悦を堪えるために掴んでいた敷布を放し、ヒルドブランドの逞しい腕を両手で抱えるように掴んだ。触れた肌から流れ込む熱すら愉悦を増幅させる。

「ヒルドっ、ヒルド! そこばかりしないでくれ」
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