上 下
16 / 16

BL・キスの日なので自キャラで甘いキスシーン

しおりを挟む
X(元Twitter)上で行われた「BL・キスの日なので自キャラで甘いキスシーン」企画に参加したときの二人のイチャイチャ話です

***************************

 ガチャッと立つ音に気付いた碧は慌てて手を拭いて玄関に走った。

「お帰りなさい、一輝さん!」

 嬉しくていつものように伸び上がりその首に腕を巻き付けた。仕事で疲れただろう一輝も表情を柔らかくして身体を屈めた。

「ただいま碧」

 唇が合わさるだけのキス。

 それだけでも嬉しくて碧の心臓はいっきに動きを早める。大好きな夫が帰ってきてくれた。それだけで世界が彩りを華やかにする。

「今日帰ってくるの早くて嬉しいです」

 離れようとする碧にまた一輝の唇が重なった。柔らかい感触。嬉しくて嬉しくて、碧も離れたくないとばかりにまた自分から一輝にしがみ付いた。

 夫婦の時間の始まりはいつもキスからだ。

 唇へのキスを教えて貰ってから碧はそれが好きになった。

 たっぷりと二人で互いの感触を味わって、それからゆっくりと身体を離す。まだ一輝は靴を履いたままだ。

 スリッパに履き替えるのを待って一緒にリビングへと向かう。今日あった出来事を報告し合い、ゆっくりと食事をする。

 やっと慣れた料理が盛られたさらに箸を伸ばす一輝を見るのが好きだ。嬉しそうに美味しいと食べてくれるから。

「今日は随分と凝った料理を作ったんだね」

「前に一輝さんが美味しいって言ってくれたから」

 どんな料理を並べても一輝は美味しいと言ってくれる。けれど、本当に美味しいときは箸の進みが違うからわかる。一輝が碧のちょっとした変化にすぐ気付いてくれるように、碧も一輝の表情をよく見てしまう。彼が何を気に入り何に喜ぶのか知りたいから。

 まだ主婦初心者の碧はレパートリーが少ないが、レシピ本を捲っては一輝が喜んで食べてくれるのを想像して色々と作ってみる。そして喜んでくれた料理をちゃんとメモに書き留めている。

「ありがとう、碧」

 ふわりと笑ってくれるのが嬉しくて、すぐに顔が真っ赤になる。

 格好いい一輝はただ笑うだけで凄く素敵な表情になる。いつ見ても、初めて会ったときのように心臓は煩いくらいに音を早め、ときめいてしまう。もう結婚して一年なのに、未だに一輝を見るだけで好きだって感情が溢れてくる。

 一緒に食事をして交互にお風呂に入って、寝るまでの数時間を二人でソファに腰掛け過ごす。いつもと変わらない穏やかな時間。

 今日も持ち帰った仕事を処理している一輝の隣で美術書を捲る。今度描く作品の雰囲気を掴むために好きな画家の筆遣いを研究していく。

 一輝がペンを片付け始めた。それだけで碧の心臓がまた跳ね上がる。名残惜しさなど振り切って本を閉じた。

 仕事道具を片付けた一輝がこちらを向いた。

「おいで、碧」

 この瞬間が大好きだ。嬉しくて手を開いた一輝の膝に乗る。すぐに抱きしめられた。

 逞しい身体から伝わってくる熱に、碧も上気する。

「愛しているよ」

 夫婦の時間の始まりを告げる言葉。

「僕も好きです」

 目を閉じ少しだけ唇を前に突き出せば、温かく柔らかい感触がそこに当たる。

 大好きなキスの時間。もう子供じゃない碧は少しだけ唇を開いた。どうして欲しいのか、一輝ならすぐに分かってくれる。

 欲しかったものが碧の口内に入ってきた。自分も舌を伸ばし絡める。一輝の舌に擦られるだけで身体がどんどんと熱くなっていく。唇を離したときには一緒に熱い吐息が甘い声と一緒に漏れた。

「碧はキスが本当に好きだね」

 うっとりと夫を見る。あれほど激しいキスをしたのに変わらない余裕のある表情。でも知っている、この人が切羽詰まって自分を欲しがる瞬間の顔を。今日も見せてくれるだろうか。

「うん好き。一輝さんとのキス、気持ちいい」

 でもこれだけじゃ満足できないから夫婦がもっと愛し合うためにすることを催促する。

 昂ぶった下半身を逞しい身体に擦り付けた。

「これ、辛いの……助けて、一輝さん」

 いつも碧の願いを叶え助けてくれる夫は、甘く微笑んだ。けれどその目の奥に熱が灯るのがわかる。

「当たり前だろう。私以外におねだりしてはいけないよ」

 唇の傍で囁きかける甘い吐息を吸い込んで、自分から唇を押し当てる。すぐに淫らなキスが始まる。もっと身体が昂ぶってしまう。

「しない、こんなことするの、一輝さんだけだから」

 身を捩らせ擦り付ける。

「ベッド、行こうか」

「うん。一輝さん大好き」

 ひょいと抱き上げられ、寝室へと運ばれる。キスをしながらのこの僅かな時間が好きと言ったら一輝はどう思うだろうか。ベッドに下ろされた後どんなことをするんだろうかと想像しながらキスをするのが大好きだ、なんて。

 ベッドに下ろされたと同時に唇も離れた。

「今日も可愛い碧を私に見せてくれ」

 どんな姿が可愛いと思っているのかわからない。けれど一輝ならどんな碧でも受け入れてくれる。

 だから碧は全てを晒しこれからやってくる感覚に没頭し、感じたままを一輝に伝える。愛しいこの人に、自分の全てを。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(12件)

こゆきねこ
2024.04.29 こゆきねこ

「いいね」機能追加に合わせて、大好きな作品を巡ってポチポチさせていただいています。
本当に大好きです。ただただ幸せで、お互いに一途で、無駄なモブも無く無駄な陵辱もなく…
穏やかに幸せでありますようにと思える作品。ありがとうございます。
キスの日番外編も、新婚旅行後の穏やかな日常を見せていただいて幸せになれました。

完結話を読んだ時に、「一輝が碧に絵を贈られた時のエピソードがあったら読みたかったなぁ」と思っていたのを思い出しました。幸せだったんだろうなぁ。

椎名サクラ
2024.04.30 椎名サクラ

こゆきねこ様

大好きと仰ってくださりありがとうございます!
ただ二人がふわふわと時に泣いてしょっちゅうイチャイチャする話を気に入ってくださって嬉しい限りです。
なるほど、絵を贈られたエピソードですね、時間ができ次第書きます!
また、現在フジョッシーさんで行われておりますコンテストで本作を出しておりますので、よろしければそちらでも応援お願いします!

解除
iku
2023.08.05 iku

お久しぶりにおふたりのイチャイチャ💞😘ありがとうございます🤤 大好きが溢れ出して、こちらまでドキドキ💓いっぱいです🙏❣️ またいつの日かファミリーのご様子を覗き見させて頂きたいです😂💕💕💕

椎名サクラ
2023.08.05 椎名サクラ

iku様

いつもありがとうございます!
この二人は本当に書けば書くほど砂しか出てきません😂
いつかファミリーの話を書きますので、もうしばらくお待ちくださいね。
ちょっと予定が押していて自分でもきけーん💦な状態に陥ってます

解除
iku
2023.05.25 iku

こんばんは✨
キスの日のTwitterで拝見し、こちらで拝読させて頂きました🙏 深窓の小悪魔無自覚天然な碧くんにスパダリαのはずの一輝さんが、翻弄されまくりの甘々😘とっても楽しく、一気読みさせて頂きました🤤 お兄さん達など周りの方々も魅力的(🤣)でした😍 楽しませて頂きまして本当にありがとうございました💕💕💕

椎名サクラ
2023.05.25 椎名サクラ

iku様

いつもありがとうございます❤
こちらも読んでくださり感謝でいっぱいです‼️‼️
そうなんですよ、一輝が純粋培養天然小悪魔にただただ翻弄されてアップアップなのに、碧の目からはスパダリに見えるという不思議な話でございます🤣🤣
兄たちも気に入ってくださりありがとうございます‼️
長兄の玄の話もございますのでそちらもよろしくお願いします❤

解除

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

【完結】Ω嫌いのαが好きなのに、Ωになってしまったβの話

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)
BL
【概要】 無遠慮に襲ってくるΩが嫌いで、バースに影響されないβが好きな引きこもり社会人α VS βであることを利用してαから寵愛を受けていたが、Ω転換してしまい逃走する羽目になった大学生β \ファイ!/ ■作品傾向:ハピエン確約のすれ違い&両片思い ■性癖:現代オメガバースBL×友達以上、恋人未満×攻めからの逃走 βであることを利用して好きな人に近づいていた受けが、Ωに転換してしまい奔走する現代オメガバースBLです。 【詳しいあらすじ】 Ωのフェロモンに当てられて発情期を引き起こし、苦しんでいたαである籠理を救ったβの狭間。 籠理に気に入られた彼は、並み居るΩを尻目に囲われて恋人のような日々を過ごす。 だがその立場はαを誘惑しないβだから与えられていて、無条件に愛されているわけではなかった。 それを自覚しているからこそ引き際を考えながら生きていたが、ある日βにはない発情期に襲われる。 αを引き付ける発情期を引き起こしたことにより、狭間は自身がΩになり始めていることを理解した。 幸い完全なΩには至ってはいなかったが、Ω嫌いである籠理の側にはいられない。 狭間はβに戻る為に奔走するが、やがて非合法な道へと足を踏み外していく――。

落ちこぼれβの恋の諦め方

めろめろす
BL
 αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。  努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。  世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。  失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。  しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。  あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?  コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。  小説家になろうにも掲載。

【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

年上オメガは養いアルファの愛に気づかない

神谷レイン
BL
オメガの凛には、養い子がいた。 しかし引き取ってから六年後、養い子の朝陽は立派なアルファに成長し、今や大学生。 そうなると大きくなった朝陽に凛の体は反応してしまい、困ったことに。 凛はフェロモンで朝陽を誘惑しないように発情期はΩ対応のホテルに泊まるが……ホテルに朝陽がやってきてーー?! いちゃいちゃ、甘々のオメガバース短編。 タイトル通りのお話です。

結婚式は箱根エンパイアホテルで

高牧 まき
BL
木崎颯太は27歳にして童貞処女をこじらせているオメガの男性だ。そんなある日、体調を崩して病院に診察に行ったところ、颯太は衝撃の事実を知らされる。妊娠。しかも10週目。だけど、当日の記憶が何もない。いったいこの子の父親は? オメガバースものです。

可愛くない僕は愛されない…はず

おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。 押しが強いスパダリα ‪✕‬‪‪ 逃げるツンツンデレΩ ハッピーエンドです! 病んでる受けが好みです。 闇描写大好きです(*´`) ※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております! また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)

俺のかつての護衛騎士が未だに過保護すぎる

餡子
BL
【BL】護衛騎士×元王子もどきの平民  妾妃の連れ子として王家に迎え入れられたけど、成人したら平民として暮らしていくはずだった。というのに、成人後もなぜかかつての護衛騎士が過保護に接してくるんだけど!? ……期待させないでほしい。そっちには、俺と同じ気持ちなんてないくせに。 ※性描写有りR18

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。