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 甘いばかりの新婚旅行を終え帰国した一輝と碧は一晩自宅でゆっくりムフフと過ごした後、旅行土産を持って菅原家へと向かっていた。愛車の助手席に少し色疲れした碧を乗せての短いドライブに、なぜか一輝は鼻の下が伸びっぱなしだった。

 それもそのはず。快楽にとことん弱い碧はすっかり一輝とのセックスを気に入り、二人だけの時間に求めてきては教えることすべてを快楽に変え可愛く身悶えるのだ。

 どこまでも淫らになる妻の艶姿に、男子の本懐を遂げた気持ちになる。

 そして今朝も……。思い出すだけで鼻血が出そうだ。

(エッチな碧は可愛すぎる!)

 色事に対して予備知識がないだけに、なんでも素直に受け入れ感じるものだから、ついつい色んなことを試してしまう。果たしてどこまで受け入れ悦ぶのかと。

 ウィーンでの芸術と肉欲の日々がそこで終わりではなく、これから死が二人を別つまで続くのかと思うと、人生が薔薇色に輝いてくる。

 気を緩めるとにやけてしまう己にカツを入れながら、慣れた手つきで菅原家までの道を走っていく。

「大丈夫かい、碧」

 二人きりの時だけ呼び捨てにするのも少し慣れた。そのたびに少し照れながらも嬉しそうに微笑む妻の顔には、未だに慣れずハートを打ち抜かれるが。

「まだ一輝さんが入ってる感じしますけど……大丈夫です」

 腰をモジモジさせながらの淫らな告白。これが一番一輝のハートを打ち抜くのだ。なにも知らなかった碧の口から少し卑猥感のある言葉が出る、この真っ白な存在を汚す暗い喜びがたまらない。癖になりそうだ。

 今まで知らなかった性癖でもあった。

 当たり前か。遊んでばかりいるような、性に奔放な人種しか傍にいなかったのだから。ここまで奥手で純粋な人間は初めてだ。それが自分の妻である。この喜びをどう表現したらいいのやら。

 自然と伸びる鼻の下を意識してずり上げ、爽やかな好青年な夫の仮面を着ける。

「無理はしないで。挨拶だけしたら今日は帰ろう」

 帰ったらまたこの可愛い妻を存分に可愛がろうと下心込みで提案する。

「実家に行ったら、次はパパさんとママさんのところにも行かないと」

「……それは今度でもいいんじゃないかな?」

「でもママさんへのお土産は日持ちしないから、早めにお渡ししたほうが……」

 天羽家のことなどすっかり忘れていた。

 あの口うるさいクソ爺など放っておけと言いたいが、母のことを出されるとさすがの一輝も弱い。やはり生物、特に男は産み育ててくれた人間には強く出れない性質を持っている。

 ふと、碧もそのうち母になるのかと思うと不思議な気持ちに囚われる。

 碧に発情期が来て色々と頑張ってしまったら、当然子供ができてしまう。それは嬉しいことだし自然の摂理なのだが、まだ二人でいたい。まだまだ可愛い碧を堪能し尽くしていないし、もっと二人だけの時間を過ごしたい。

 一輝のワガママだ。

 けれど、もう少しだけ……少なくともあと五年は碧と二人だけの生活を続けたいと切望する。さすがに五年も経てば一輝の碧熱も少しは冷めるだろう。

 下半身的苦痛で敢えて反らしていたが、そろそろ家族計画を真剣に考える時が来てしまった。

 子供の数や時期を碧と話さなければ。同時にバースの話も彼にしなければならない。さて、どう説明をしよう。

 その前にアフターピルを一応注文しておこう。

 悶々としながら菅原家へ赴き挨拶をし、口うるさい兄たちがいなかったことに安堵しながら(ちょっと色疲れした碧を見せつけたい気持ちはあったが)菅原母に念入りに礼を言い、ついでにアフターピルの相談をした後に天羽家へと向けて車を走らせる。

 休日だというのにしっかりと両親が揃って出迎え、父は相変わらず自分の隣に座らせ愛息子のように碧を可愛がっている。いや、むしろ孫を前にした爺の顔かもしれない。

「旅行はどうだったんだ」

「美術館巡りをしました。とてもたくさんの絵があって、ウィーンにいる間ずっと通っていたんですけど、全部見ることができませんでした」

「そうかそうか。だったらルーブル美術館はもっと時間がかかるな。そうだ、一輝は仕事が忙しいから、今度はパパとママと一緒に行こう」

「私と一緒にが一般的だろう、そこは。会社はどうするんだ、社長」

「そこなんだが、いい機会だから隠居しようと思う。会社をよろしく」

「ふざけるな」

 すべてを息子に押し付けて楽隠居しようと画策する父に釘を刺す。今隠居されたら碧とのラブラブ新婚生活が過ごせないし、今以上に多忙になり碧との時間が減ってしまうではないか。断固反対! 引きずってでも社長椅子に縛り付けてやる。

 まだまだ現役で働いてもらわないと。

 そんな天羽親子の押し問答を、碧はニコニコしながら聞いている。そこに悪意が存在するとは全く考えていないようだ。仲のいい親子ぐらいに思っているのだろう。母は相変わらず父が話しているときは口を挟もうとはしない。

「それはそうと、孫はいつ頃の予定だ?」

「まご?」

 キョトンと碧が首を傾げる。

「新婚旅行も終わったことだし、次は子作りだろう」

 ガハハハと豪快に笑う父を慌てて止める。

「それはっ!」

「男同士で子供はできないよ、パパさん」

 碧が不思議そうにぽつりと窘めた。

 そう、一般的には。だが、オメガなら話は別だ。自分がオメガだという自覚が全くない碧は、いきなりなにを言い出すんだろうと訝しんでいるだろう。菅原家が徹底的にバース情報をシャットダウンしたおかげで。

 それを知らない父も訝しむ。

「碧くんはオメガだろう。オメガなら妊娠できるじゃないか」

「わぁぁぁぁその話はっ!」

「……オメガは男でも妊娠するの?」

 その話はこれからするつもりだったのに……。

 心の中で叫ぶ。自分が主導となってこの話をしたかったのに、なぜおまえが話す。止めようとする一輝を無視して二人が話し込む。

「バース診断を小学校の頃にしただろう」

「しました。オメガと出たからベータのフリをしろとお母さんに言われました」

 でも碧はオメガがどんな性質なのかをしっかりとは理解していないし、今時はイジメに発展するから詳細な説明をしていない。碧の知識はもうそこでストップしてしまっているのだ。

 一輝はすべてを父に委ねず、二人の会話に割って入った。

「オメガだとね、男女関係なく妊娠が可能なんだよ。菅原のお義母さんが碧くんにベータのフリをするように言ったのはきっと、碧くんを守るためなんだ」

 性的被害に遭いやすいオメガはとにかくオメガであることを隠さなければ生きづらい。面白がって犯す輩が一定数いるからだ。それにうっかり発情してアルファに犯されても、法は守ってくれない。きちんと発情抑制剤を服用しなかったオメガ側に責任があると言われるし、裁判でそういう判例が出たこともある。

 自分がオメガだと忘れるくらい必死で守られた碧には実感がないだろうが。

「……そうだったんだ…」

 自分が妊娠すると知らなかった碧だが、あまりにも世間知らずすぎてショックを受けるそぶりもない。

「じゃあパパさんとママさんに孫の顔を見せないといけないんですね。……どうやって?」

「それはだな……」

「親父はもう黙っていてくれ!」

「なんだ、いいじゃないか。せっかく久しぶりに碧くんと話せるんだから、お前が黙っていろバカ息子」

「黙っていられるか。これは夫婦の話なんだから勝手にしないでくれ」

 一輝と父が本格的にケンカを始めると、母はこっそり碧を手招きし、リビングから連れ出した。

「うるさいからあっちでお茶をしましょう。美味しいケーキを用意したのよ」

「わぁい、ママさんのケーキ僕好きなんです。いつも美味しいから」

「あら、嬉しいわ。ウィーンのお土産見たわよ。私の好きなお菓子を覚えていてくれたのね」

「ママさん前に好きだって言ってたでしょ。一輝さんにお願いして買ってもらいました」

 嫁と姑が庭でほのぼのとお茶をし始めたが、男たちはそれに気づかず一時間近くもケンカに励むのだった。

 ぐったりした一輝は夕食をと誘う父を足蹴にし、碧とともに天羽家を出たのは夕方だった。

 無駄な時間を過ごしたと後悔しながら、夕食でも摂りながらバースと将来設計の話をしよう。

「旅行から帰ってきたばかりだから冷蔵庫は空っぽだろう。どこかに食事に行こう」

「僕久しぶりにご飯が食べたいです」

 ずっとパンとスープばかりの食事で、確かに一輝も米とみそ汁という気分だ。それならと何度か行く六本木の懐石料理の店へと車を向かわせる。近所のコインパーキングに車を停め、六本木でも奥まった場所にある店へ入り、完全個室の店で創作和食に舌鼓を打つ。

「父がバカなことを言ってごめんね」

「なんですか?」

 周囲があまりにも繊細になりすぎるほどバースの話をシャットアウトしたから、碧は本当に意にも介していない。今まではそれでよかった。菅原家が権力と財力をもって彼を守り通したから。だがこれからは違う。一輝の妻として生きていかないといけないのだから少しは現実を見る必要がある。

 間もなく彼にも発情期が訪れ、そのうち母になるのだから。

「子供のこと。きちんと碧と二人で話し合わないといけないと思ってね」

「なんか実感がないです。僕が子供を産むっていうのが。まだ実感がないから、僕はよくわからないです」

「そうだね。私はもう少し碧との時間を楽しみたいんだ。しばらくは子供を作らなくてもいいかと思っているんだが、どうかな?」

「でもパパさんは早く孫を見たいと言ってましたよ」

「あれは放っておけばいい。勝手なことを言っているだけだからね」

 父が変なことを言い出したせいで、碧が変に意識してしまっている。クソ爺がと心の中で毒づきながら、箸を進めつつ話も進める。

「だが、ある程度予定を立てておかないと家を建てられないだろう」

「そっか……あの話も早くしないとパパさんが困りますよね。僕と一輝さんの部屋と、犬の部屋と、アトリエと一輝さんの書斎と……」

 そうだねと相槌を打ちつつ心の中で、犬は決定事項で部屋まで設けるのか! とツッコむ。

 いや待て、防犯対策として飼ってもいいかもしれない。一輝が仕事でいないときに一人で家を守る碧が変な輩に襲われないように、番犬は必要だ。だが碧の関心が自分以外に向かうのは嫌だから、さてどうしよう。もう少し落ち着いてからなら許せるか。

 犬と自分が碧を取り合う図を思い浮かべてしまい、慌てて掻き消す。

 碧相手だと犬にまで嫉妬してしまうのか、自分は。

「子供ってどうやったら来てくれるんだろう……」

 犬のことよりも……そこから説明が必要だった。

 碧は性的なことに無知で、なぜそれをするのかすら理解していないのだ。

 ただ夫婦ですることとしか認識してない。しかも気持ちいいからやるんだと思っている節がある。

 それもあるのだが、元来は繁殖行為であると告げるのは少し恥ずかしくもある。

 だが、これは一輝の使命だ。いっそのこと実践で教えよう。そうだ、それがいい。

 そしたら今夜も楽しい新婚ライフが送れるぞ。

「それは家に帰ってから説明するよ。子供の数とか大体のイメージを持とうと思っているんだ」

「そうですね……でもやっぱりイメージできないから一輝さんに任せてもいいですか?」

「それでいいのかい? まあ今すぐ結論を出すことではないね」

 これから時間をかけてじっくりとイメージすればいい。

 二人の時間は始まったばかりなのだから。

 面倒なら増築前提の家を建ててしまえばいいが、これに関しては碧の希望を優先したい。

 ゆっくりと食事を楽しみ、気分よく駐車場に向かう頃になると、少し離れた六本木は夜の街にふさわしい賑わいとなっていた。車の混み始める時間が始まり、帰るのに少し時間がかかるなと思いながら、いつものように碧の肩を抱いていると声をかけられた。

「やっぱり一輝だった!」

 瞬時に一輝の顔色が変わった。

 一番聞きたくない声だ。

「派手な車があると思ったら大当たりだね。……ちょっと、無視しないでよっ!」

「ミヤビ、なんの用だ?」

 同じサークルに所属していた女が、なぜよりによって碧との時間に出会ってしまうのだろう。自分の不運を呪い始めた。

 これは一度神様に謝罪に伺い、祓ってもらわなければ……。

「ぁ……」

 碧が小さな声を上げる。

「なにって、あれ以来会ってないからちょっと挨拶しようと思っただけよ。って、オサナヅマも一緒じゃーん」

 一人なのに、キャーキャーと騒がしい。

 だがそんなミヤビに碧は丁寧にあいさつをした。

「こんばんは……結婚式の二次会に来てくださってありがとうございます」

 可愛く小ぶりな頭が下がる。

「ちょ……やだ…こちらこそお招きありがとうございました」

 碧の丁寧さに、ミヤビもつられたように遊びモードを解除する。そしてサークルのノリで結婚式に不躾に碧を煽ろうとした自分を恥じ始めた。

 顔を上げた碧を再度まじまじと見るミヤビに嫌なものを感じ、一輝はすぐさま碧の身体を自分に引き寄せる。だがそんなのにめげるようなアルファ女性ではなかった。

「よく見たら、オサナヅマってオメガじゃない」

「あ……天羽碧です、よろしくお願いします」

「ミヤビです、こちらこそよろしく……」

 またぺこりと碧が頭を下げる。

 そのたびにミヤビは調子を外すようだ。

 だがふわりと笑う碧の表情を目の当たりにして彼女の眼の色が変わった。今まで小馬鹿にしていたのに、フラフラと碧へと近づいてくる。

「あらやだ、いい匂い……碧くんっていうの? 随分と可愛いわね」

 長い爪が碧の顎をとらえる。それを跳ね除けたいが、手を振り払って碧の可愛い顔に傷をつけてしまいそうだ。だからそっと間に割って入ろうとする。

「邪魔、あっち行って。ねぇ碧くん、お姉さんと遊ばない? なんだったら遊びじゃなくて真剣なお付き合いでもいいんだけど……なんか碧くんとならそれが出来そうな気がするわ」

 手入れの行き届いた指が碧の頬を撫でた。

「止めろっ! 私の妻になにを言い出すんだ」

「妻っていったってまだ番にもなってないじゃん。って事はチャンスありでしょ」

「あるわけがないだろう。碧の番は私だ!」

「……ツガイってなんですか?」

 ……なぜ一輝のタイミングで物事が進まないのだ。発情期が来たらすぐにでも番になり、事後報告するつもりだったのに……。

 卑怯なことを考えるからすべてが後手後手に回ってしまうのだろうか。

「知らないの? アルファが発情したオメガのうなじを噛んだら、オメガはもうその人としかセックスできないのよ。こんな風にね」

 ミヤビが碧の身体を引き寄せ噛もうとする身体を乱暴に押し返し、可愛い妻を自分の後ろに隠した。

「あら、残念」

「ふざけるのも大概にしろ、ミヤビ。本気で怒るぞ」

「この子気に入ったから欲しいの。一輝にはもったいないわ」

「相変わらず、すぐに他人のものを欲しがるな。いい加減にしろ。碧は私のだ」

 オメガというだけで欲しがるミヤビに碧の良さなどわかるものか。どこまでも純粋で愛らしく、真っ直ぐに愛情を向けてくれ、綺麗な世界を教えてくれる彼の魅力を知りもせず奪おうというのか。

 その世界を共に歩みたいと願わず、おもちゃを欲しがりダダをこねるだけのミヤビなどにどうして渡さねばならないのだ。

 我慢できず全身に怒気を孕む。

「一輝から奪い取るなんて簡単そうね」

 怒りのオーラを向けられ、アルファの攻撃性でもってミヤビは挑発してくる。

「私と闘おうっていうのか?」

「勝ったほうがこの子と番になれるのね。いいわよ、受けて立つわ」

 火花を散らす二人に、碧はどうしていいか解らずオロオロするだけだった。

 一体なにを話しているのだろう。内容がよくわからないが、兄たちと一輝とのやり取りとは違うのは感じていた。

 シャツを握ってくる指の強さで碧の不安を感じ取り、一輝は卑怯だとわかっていながら早くこの場を離れるために敢えてこの名前を口にした。

「AMOUビバレッジと菅原製薬を敵に回したいならいくらでも受けて立つが」

 虎の威を借りる狐だが、ミヤビを牽制し碧を守るためなら構ってられない。すぐにでも退散してくれるならどんな虎だろうが借りてやる。

「ちょっ、どうして菅原製薬が出てくるのよっ」

「この子が委員長の弟だからだ」

 委員長とは、当然玄のニックネームである。

「解ったらもう碧には近づくな」

 ミヤビは葛藤で動けなくなっている。碧は欲しいがバックにあの兄がいると思えば躊躇うだろう。なにせ遊びつくした面々にとって玄は正反対で面白みがない癖に威張り尽くす嫌な委員長だったから。できることなら近づきたくないと今でも苦手意識が根底にある。

 当然一輝もだったが、碧を知ればそんなのどうだっていい気持ちになる。玄が兄だろうが碧が欲しくなる。

 逡巡し動かないミヤビを残し車に乗り込むと早々と出発させた。

 思った通り、グルゴーファの効果を失った碧はアルファにとってとてつもなく魅力的な存在になっている。もしこれで発情してしまったら……。アルファというアルファが彼を奪い合う図が頭に浮かぶ。

(絶対家から出せないな、番にするまでは)

 ピリピリした雰囲気を感じ取り、碧は黙ったままだ。

 家に帰りつくと一輝はきつく碧の身体を抱きしめた。

 この子は自分のものだ、そう感じるために。

「……っ一輝さん…痛い……」

「あぁ、すまない。嫌なものを見せてしまったね。あれは忘れてくれ碧」

 懇願する。あんな場面を碧に見せたくはなかった。しばらくは……少なくとも碧と番になるまでは、アルファが集まりそうな場所は避けよう。

「一輝さん、ツガイってなんですか?」

「それも……出来れば忘れて欲しいんだが……」

 無理だろうことはわかっている。

「教えて?」

 いつものように可愛くねだられたら一輝は逆らえない。むしろその少し不安げに縋るような眼差しを向けられると、なぜか下肢の一ヶ所が反応してしまうようになってしまった。

「教えるよ。ベッドでね」

 一輝は碧を寝室まで運ぶと、可愛い妻の着衣を全部剥ぎ取り、ベッドの上で実戦で教えることにした。

 キスとフェラチオでたっぷりと溶かしてから後背位で貫き、碧が一番好きな体位に変えていく。

「ゃぁぁぁっ!」

 腕に力を入れ、碧の身体を上下に揺らす。少し窮屈な体位なのに、啼いて髪を振り乱すほどに狂うのだ。可愛く悶える顔が見られないのが嫌で一輝はあまり好きではないが、これが一番碧の感じる場所を擦るようだ。

 今度ベッドの横に鏡を置こうと心に決めながら、彼の望んでいたことを教えていく。

「碧が発情したら、これをいっぱいすると子供ができるんだ、よっ!」

「ぁぁぁっ……んっ」

 ひと際高い位置から落とせば、碧は堪えられず触れられてもいないのに蜜を吐き出した。

 可愛い分身から吐き出されたものを掬い取り、彼に見せつける。

「この白いのが精液で、発情した碧の身体に注ぎ込んだら子供ができるんだ。わかったかい」

「ん……でも、はつじょうってなに?」

「碧がセックスがしたくてしたくて堪らない時のことだよ……これからそういうのが月に一回起こる時が来る」

「ぁんっ……いまもしたいよぉ…」

 荒い息遣いの合間にまだ欲しがる碧の頬にキスをする。そうするとそこじゃないとばかりに可愛く快楽に弱い妻は、身体をひねらせ唇へのキスをねだってくる。

 細い身体をベッドに横たわらせると、中の締め付けをたっぷりと味わいながら深いキスをする。

「今よりももっとだよ。もっともっとしたくなる時が来る。そうなったら、絶対にすぐに私に知らせなさい。すぐに飛んできて碧を抱いてあげるからね。こんなふうにっ」

「ゃぁぁっ、ぃぃっ……きもち、ぃぃっ」

「碧に気持ちいいことをするのも、していいのも私だけだっ、忘れちゃだめだよ」

 腰を打ち付けながら何度も言い聞かす。一輝だけだと。これは夫婦だけの行為だと。

「んっ、かずきさんだけ……だけだからぁ」

 咽び啼きながら碧が可愛い返事を返してくれる。それだけで一輝の心が震える。どこまでも素直な彼への愛おしさが募っていく。

 遂情した碧にギュウギュウに欲望を締め付けられ、気持ちいいその身体の中に蜜を吐き出した。

「んっ……ぁぁ…」

「でもね、子供はまだだ。もっと碧と気持ちいいことをいっぱいしてから、ね」

 荒い呼吸で恍惚としている彼のうなじを撫でた。

「ん……」

「発情したらここを噛むよ。碧が私以外に目を向けなくなる。他のアルファからも色目を使われないから。本当に私だけの碧になる……」

 潤んだ目が一輝を見上げる。

「僕……もう一輝さんのだよ」

「うん、そうだね。けれど、今日みたいに他の人が碧を欲しがるのが嫌だ。私だけのものだから……碧は私だけのものだ」

 伝えれば伝えるほど、彼が愛おしく、どこまでも自分に狂わせたくなる。この綺麗な目が自分だけを見続けるように。

 滑らかな頬を撫で、キスをする。

 まだ終わらせない。もっと碧が欲しい。

 二回戦の始まりを腰の動きで告げて、また可愛い妻を啼かせていった。
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