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終章2

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 なにがなんでも王城に置くな、自分が身柄を引き受けると口々に言いだす大臣たち。皆そこそこいい年なのに、唾を飛ばしあいながら我先にと立候補していく。

「どこの馬の骨とは聞き捨てならないな」

 さすがにその言葉を耳にして黙っていないのは宰相閣下であった。突然の宰相の言葉に、欲望を隠せない面々は驚愕し、コルネリウスを凝視した。

「この者は私の息子だ。病弱なため領地で療養していたのに、突然消えたと連絡があって探していたが、まさか神に選ばれたとは……」

 神妙な面持ちで、芝居上手なコルネリウスは右手でその面を隠した。まさかこの国の実質最高権力者の息子であると知らなかった面々は、何度もソーマとコルネリウスを見比べ、一気に手の平を返す。

「宰相のご子息でしたか……それはそれは」

「いや、だからこそ神に選ばれたのでしょうな、あっはっはっはぁ」

「まさか息子がその身に竜を封じるなどと……当然私の息子なのだからその身は我が一族でどうにかすべきだ。だが、万が一傷つけて竜を呼び起こしてしまっては国の一大事。さてどうしたものか……」

 ちらりとコルネリウスがザームエルとゲオルクを見やる。

 それは合図だった。

「当然我らが、いつもお傍で、竜を封じた貴きその身を、お守りいたします」

 ザームエルが意気揚々に告げ、ゲオルクも頷く。

 ここではゲオルクとソーマは一言も発してはならないと命じられている。三文芝居に大根役者が入ってはぼろが出るからだ。内容が三文芝居でも、演者の腕が確かなら相手は騙されるといういい見本だ。

「有難い、ザームエル王子よ。そして勇者ゲオルク、そなたにも感謝しよう」

 これで話はまとまったとばかりに、コルネリウスに促され、強引に強制的に王が退席する。それを見送り、三人は王城を出た。

 この茶番を経れば、もう誰もザームエルとゲオルクがソーマの側にいても文句は言わないだろうし、ソーマの姿がいつまでも変わらなくても、竜を宿しているからですべて切り抜けられる。

「って、本当にこれで皆が信じたの?」

 門を出て人がいないところでソーマはぼそりと呟いた。

「信じた、と思いたい」

 ゲオルクも同じ意見だったが、ザームエルだけは清々しい顔でニヤリと笑った。

「ここで重要なのは信じるか信じないかではない。ソーマが宰相の息子であるという事実の公表だ。これで誰もソーマには手出しが出来ぬだろう。あの狸爺どもも、己の身が可愛いだろうからな」

 そういうものなのだろうか。

 首をひねながら、ソーマは歩き続けた。

 本当なら馬車で送ってもらう手筈だったが、武器屋の店主から鱗が売れたという連絡があり、店に行くついでに街をぶらつきたいとソーマがワガママを言ったため、三人は王都のメインストリートを歩いている。

 これから先、ソーマを含めたこの三人が国の英雄に祭り上げられるのが目に見えているため、こんなにゆっくりと街を練り歩けるのは最後になるかもしれなかった。

 だが、それ以前に、既に英雄として名を馳せているザームエルとゲオルクに、道行く女性たちが目をハートにして近づこうかどうしようかと身体をくねらせながら黄色い声援を送ってくる。

 正直、ソーマは面白くなかった。

(なんだよ二人とも……僕が一番だって言ってたじゃないか)
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