異世界に転生したら王子と勇者に追いかけられてます

椎名サクラ

文字の大きさ
上 下
109 / 111

終章1

しおりを挟む
■□■□◆◇■□■□


 ソーマは今、王城の接見の間に立たされていた。

 物々しい雰囲気でこの国を動かしている面々がずらりと立ち並び、中央の数段高い場所に設置された豪奢な椅子には、髭を生やした威厳ある男が座っている。その隣に見知った顔がなければ、ソーマはすぐに逃げ出していただろう。

 ソーマの両隣にはゲオルクとザームエルが、その細い身体を守るように立っていた。

「話は聞いた。第五王子と勇者とで、先日の竜をこの者の中に封じたというのだな」

「はっ、左様にございます。この者が死せぬ限り、銀色の竜が再び蘇ることはございません、陛下」

 王城の礼儀に詳しいザームエルが受け答えをする。

「ではこの者を永久に地下牢に閉じ込めるべきです、陛下!」

「それで自死されては敵わん。ここは我が館に招き、丁重に持て成そう」

「何を言っている。これほどまでに危険な者を王都どころかこの国に置いてはならん。すぐさま追放せねば」

 お偉い人々が口々に好き勝手言っているが、ソーマはそれをぼんやりと、だが神妙な顔をしながら聞くしかなかった。

 なぜこうなったのだろうと呆れながら。

 事の発端は、三人が共に生きるのはいいが、ソーマの容姿が変わらないことに周囲が疑問を抱きはしないかと懸念したことだった。

 王都のみならず各地で有名になっている勇者のゲオルクに、王都を竜から守った第五王子のザームエルだ。その隣にいる人間がずっと変わらない姿をしていたら、周囲は変に思うだろう。

 だからと言って三人で各地を転々とする生活もできるはずがない。

 悩んだ三人は、この国でもっとも有能な策謀家の元を訪れた。他でもない、宰相コルネリウスその人である。

 まず三人が恋仲になったことを報告したときは、応接室が壊れるんじゃないかというほど大暴れし大変だったが、そこはユリウスの計らいでなんとかなった。色々と大変だったが。

 だが、自分の死後、息子であるソーマが平穏に暮らせるようにするためと話すと、熟考した後、二人を受け入れある提案をした。

 その案とは、周囲がソーマが不死であっても仕方ないと思わせることだった。

 天命を授かった王子と勇者は二人で竜の討伐に向かい、途中で会った賢者により、竜の封印方法を授かる。それ以外に竜を倒す術はないと伝えたと同時に、その賢者は光り輝き消え、そこに残ったのがこの青年であった。三人は竜の住処へと向かい、教えられたとおりに竜を封じたというシナリオだ。

 ベタである、ベタ過ぎである。RPGのお約束シナリオそのままであった。

 さらに信憑性を増させるために、コルネリウスの指示のもと、ひと月ゲオルクとザームエルは竜の洞窟に籠らされ、そして意図的にぼろぼろの状態でソーマを伴って帰還する演出まで用意した。そして今、帰還の報告のために王の前に三人でいる、という運びだ。

(本当にこんな話信じちゃうのかな、この人たち)

 だが話の流れは変なところに行き、なぜかソーマの身柄を誰が引き受けるかになっている。

 なんか皆が皆して下心があるようなないような、訳の分からない展開だ。

(おかしいな……魔法は使ってないから魅了してないはずなんだけど……)

「こんなどこの馬の骨ともわからぬ者を王城になど置いてはなりませんっ!」

「左様にございます。この者は我が一族が監視いたします!」
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます

野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。 得た職は冒険者ギルドの職員だった。 金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。 マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。 夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。 以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい

おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。 生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。 地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。 転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。 ※含まれる要素 異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛 ※小説家になろうに重複投稿しています

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話

gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、 立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。 タイトルそのままですみません。

神様の手違いで死んだ俺、チート能力を授かり異世界転生してスローライフを送りたかったのに想像の斜め上をいく展開になりました。

篠崎笙
BL
保育園の調理師だった凛太郎は、ある日事故死する。しかしそれは神界のアクシデントだった。神様がお詫びに好きな加護を与えた上で異世界に転生させてくれるというので、定年後にやってみたいと憧れていたスローライフを送ることを願ったが……。 

処理中です...