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本編103

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 まっすぐに自分に愛情を向けてくるザームエルも、おかしいくらいに自分を縛り付けようとするゲオルクも。異なった形の愛情で、どちらも嬉しくて愛おしかった。そしてどちらかが今消えたとしたら、ソーマは狂ったように泣くだろう。生きていると解るまで探し続けるだろうし、その間は心配で寝食もままならなくなるだろう。

「こんな僕でも、いい?」

 ソーマはただ縋るような思いで二人を見つめた。これで二人が去ってしまっても仕方ないと思いながら。

 最初に動いたのはザームエルだった。

 立ったままのソーマに近づき、いつものように強く抱きしめてくる。

「ザームエル……」

 縋るように抱きしめられ、何も言わなくても彼の気持ちが流れ込んでくる。

「ごめんね、自分よりも年下のザームエルに、こんなに苦しませちゃって……」

「……ソーマは私よりも年上だったのか?」

「うん、二つ上なんだ実は。ごめんねこんなに悲しい顔させちゃって」

「構わない。ソーマが私を選んでくれたなら、もう何もいらない」

 悲痛な言葉に胸が締め付けられる。

 そこにゲオルクも近づいてきた。いつものゆったりとした足取りで。

「お前がここに来る前にそいつと決めたことがあるんだ」

「何を?」

「ソーマがどちらを選んでも、もう一方は潔く身を引く、と。紳士協定だな。だがどちらも選ばないときは、二人でお前をここに閉じ込めて犯し続けるつもりだった」

 酷く物騒なことを耳にしているはずなのに、なぜだろう胸がキュンとしてしまう。狂うくらい自分を愛してくれる人が二人もいることが嬉しくて、二人を選ばなかった末を想像して頬が紅潮する。同時に、はしたない蕾が犯して欲しいと疼き始めた。

「まさか二人とも欲しいと言われると思わなかった。どちらも選べないのなら無理して選ばなくていい。だが頼む、俺とザームエル以外のやつに心を奪われないでくれ……俺たちが死ぬまでの間でいいから」

 一生とは言わないところが、きっとゲオルクとザームエルの優しさなのだろう。

「うん、今度はちゃんと約束する」

 もういい加減な気持ちではない。きちんと二人の気持ちを受け止めたうえで、二人にこの身を委ねよう。彼らが生きている、この時間だけは。

 長い長い竜の一生で、振り返ったら二人といられるのはたった一瞬かも知れないが、それでも自分の精一杯で応えたかった。

「二人が大好きなんだ」

「……どちらも選べないというのがお前らしいな、ソーマ」

 小さい頃からの駄目っぷりを知っているゲオルクは一瞬だけ、幼いソーマによく見せた兄貴分の顔で苦笑を浮かべ、顔を近づけてきた。ソーマも応える代わりにそっと瞼を閉じ口づけを待つ。

「ん……」

 肉厚の唇の感触を味わい、離れたら次はザームエルの唇が押し当てられる。

「もう我慢できない」

 いつにない性急さでザームエルはソーマの手を引き、入ってきたのとは違う扉へと導いた。開け放たれた扉の向こうには、大きな窓からたっぷりと日差しが入り込む明るい部屋に、大きな寝台が一つだけ。なぜか窓には格子が設けられ簡単に出られないようになっている。
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