106 / 111
本編103
しおりを挟む
まっすぐに自分に愛情を向けてくるザームエルも、おかしいくらいに自分を縛り付けようとするゲオルクも。異なった形の愛情で、どちらも嬉しくて愛おしかった。そしてどちらかが今消えたとしたら、ソーマは狂ったように泣くだろう。生きていると解るまで探し続けるだろうし、その間は心配で寝食もままならなくなるだろう。
「こんな僕でも、いい?」
ソーマはただ縋るような思いで二人を見つめた。これで二人が去ってしまっても仕方ないと思いながら。
最初に動いたのはザームエルだった。
立ったままのソーマに近づき、いつものように強く抱きしめてくる。
「ザームエル……」
縋るように抱きしめられ、何も言わなくても彼の気持ちが流れ込んでくる。
「ごめんね、自分よりも年下のザームエルに、こんなに苦しませちゃって……」
「……ソーマは私よりも年上だったのか?」
「うん、二つ上なんだ実は。ごめんねこんなに悲しい顔させちゃって」
「構わない。ソーマが私を選んでくれたなら、もう何もいらない」
悲痛な言葉に胸が締め付けられる。
そこにゲオルクも近づいてきた。いつものゆったりとした足取りで。
「お前がここに来る前にそいつと決めたことがあるんだ」
「何を?」
「ソーマがどちらを選んでも、もう一方は潔く身を引く、と。紳士協定だな。だがどちらも選ばないときは、二人でお前をここに閉じ込めて犯し続けるつもりだった」
酷く物騒なことを耳にしているはずなのに、なぜだろう胸がキュンとしてしまう。狂うくらい自分を愛してくれる人が二人もいることが嬉しくて、二人を選ばなかった末を想像して頬が紅潮する。同時に、はしたない蕾が犯して欲しいと疼き始めた。
「まさか二人とも欲しいと言われると思わなかった。どちらも選べないのなら無理して選ばなくていい。だが頼む、俺とザームエル以外のやつに心を奪われないでくれ……俺たちが死ぬまでの間でいいから」
一生とは言わないところが、きっとゲオルクとザームエルの優しさなのだろう。
「うん、今度はちゃんと約束する」
もういい加減な気持ちではない。きちんと二人の気持ちを受け止めたうえで、二人にこの身を委ねよう。彼らが生きている、この時間だけは。
長い長い竜の一生で、振り返ったら二人といられるのはたった一瞬かも知れないが、それでも自分の精一杯で応えたかった。
「二人が大好きなんだ」
「……どちらも選べないというのがお前らしいな、ソーマ」
小さい頃からの駄目っぷりを知っているゲオルクは一瞬だけ、幼いソーマによく見せた兄貴分の顔で苦笑を浮かべ、顔を近づけてきた。ソーマも応える代わりにそっと瞼を閉じ口づけを待つ。
「ん……」
肉厚の唇の感触を味わい、離れたら次はザームエルの唇が押し当てられる。
「もう我慢できない」
いつにない性急さでザームエルはソーマの手を引き、入ってきたのとは違う扉へと導いた。開け放たれた扉の向こうには、大きな窓からたっぷりと日差しが入り込む明るい部屋に、大きな寝台が一つだけ。なぜか窓には格子が設けられ簡単に出られないようになっている。
「こんな僕でも、いい?」
ソーマはただ縋るような思いで二人を見つめた。これで二人が去ってしまっても仕方ないと思いながら。
最初に動いたのはザームエルだった。
立ったままのソーマに近づき、いつものように強く抱きしめてくる。
「ザームエル……」
縋るように抱きしめられ、何も言わなくても彼の気持ちが流れ込んでくる。
「ごめんね、自分よりも年下のザームエルに、こんなに苦しませちゃって……」
「……ソーマは私よりも年上だったのか?」
「うん、二つ上なんだ実は。ごめんねこんなに悲しい顔させちゃって」
「構わない。ソーマが私を選んでくれたなら、もう何もいらない」
悲痛な言葉に胸が締め付けられる。
そこにゲオルクも近づいてきた。いつものゆったりとした足取りで。
「お前がここに来る前にそいつと決めたことがあるんだ」
「何を?」
「ソーマがどちらを選んでも、もう一方は潔く身を引く、と。紳士協定だな。だがどちらも選ばないときは、二人でお前をここに閉じ込めて犯し続けるつもりだった」
酷く物騒なことを耳にしているはずなのに、なぜだろう胸がキュンとしてしまう。狂うくらい自分を愛してくれる人が二人もいることが嬉しくて、二人を選ばなかった末を想像して頬が紅潮する。同時に、はしたない蕾が犯して欲しいと疼き始めた。
「まさか二人とも欲しいと言われると思わなかった。どちらも選べないのなら無理して選ばなくていい。だが頼む、俺とザームエル以外のやつに心を奪われないでくれ……俺たちが死ぬまでの間でいいから」
一生とは言わないところが、きっとゲオルクとザームエルの優しさなのだろう。
「うん、今度はちゃんと約束する」
もういい加減な気持ちではない。きちんと二人の気持ちを受け止めたうえで、二人にこの身を委ねよう。彼らが生きている、この時間だけは。
長い長い竜の一生で、振り返ったら二人といられるのはたった一瞬かも知れないが、それでも自分の精一杯で応えたかった。
「二人が大好きなんだ」
「……どちらも選べないというのがお前らしいな、ソーマ」
小さい頃からの駄目っぷりを知っているゲオルクは一瞬だけ、幼いソーマによく見せた兄貴分の顔で苦笑を浮かべ、顔を近づけてきた。ソーマも応える代わりにそっと瞼を閉じ口づけを待つ。
「ん……」
肉厚の唇の感触を味わい、離れたら次はザームエルの唇が押し当てられる。
「もう我慢できない」
いつにない性急さでザームエルはソーマの手を引き、入ってきたのとは違う扉へと導いた。開け放たれた扉の向こうには、大きな窓からたっぷりと日差しが入り込む明るい部屋に、大きな寝台が一つだけ。なぜか窓には格子が設けられ簡単に出られないようになっている。
0
お気に入りに追加
1,613
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で王子様な先輩に溺愛されちゃってます
野良猫のらん
BL
手違いで異世界に召喚されてしまったマコトは、元の世界に戻ることもできず異世界で就職した。
得た職は冒険者ギルドの職員だった。
金髪翠眼でチャラい先輩フェリックスに苦手意識を抱くが、元の世界でマコトを散々に扱ったブラック企業の上司とは違い、彼は優しく接してくれた。
マコトはフェリックスを先輩と呼び慕うようになり、お昼を食べるにも何をするにも一緒に行動するようになった。
夜はオススメの飲食店を紹介してもらって一緒に食べにいき、お祭りにも一緒にいき、秋になったらハイキングを……ってあれ、これデートじゃない!? しかもしかも先輩は、実は王子様で……。
以前投稿した『冒険者ギルドで働いてたら親切な先輩に恋しちゃいました』の長編バージョンです。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

親友と同時に死んで異世界転生したけど立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話
gina
BL
親友と同時に死んで異世界転生したけど、
立場が違いすぎてお嫁さんにされちゃった話です。
タイトルそのままですみません。

【完結】父を探して異世界転生したら男なのに歌姫になってしまったっぽい
おだししょうゆ
BL
超人気芸能人として活躍していた男主人公が、痴情のもつれで、女性に刺され、死んでしまう。
生前の行いから、地獄行き確定と思われたが、閻魔様の気まぐれで、異世界転生することになる。
地獄行き回避の条件は、同じ世界に転生した父親を探し出し、罪を償うことだった。
転生した主人公は、仲間の助けを得ながら、父を探して旅をし、成長していく。
※含まれる要素
異世界転生、男主人公、ファンタジー、ブロマンス、BL的な表現、恋愛
※小説家になろうに重複投稿しています

女神の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界でオレは愛を手に入れる。
にのまえ
BL
バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。
オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。
獣人?
ウサギ族?
性別がオメガ?
訳のわからない異世界。
いきなり森に落とされ、さまよった。
はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。
この異世界でオレは。
熊クマ食堂のシンギとマヤ。
調合屋のサロンナばあさん。
公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。
運命の番、フォルテに出会えた。
お読みいただきありがとうございます。
タイトル変更いたしまして。
改稿した物語に変更いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる