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本編102

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 勇者として難しい討伐ばかりを依頼されるゲオルクは、退治するたびにこうして傷を増やしてきたのだろう。

 生々しい傷に、ソーマは目を反らそうとして、奥歯を噛みしめた。自分の悪い癖だ、すぐに逃げようとするのは。

 ちゃんと向き合うと決めたソーマは顔を上げ二人を見た。ザームエルもゲオルクも険しい顔をしている。ソーマがずっといい加減なことをしてきたから、二人の表情に影を残してしまった。

 大きく息をして、自分の気持ちを整える。

「呼び出して、ごめんね。二人にちゃんと言わなきゃって思って」

 まずはとゲオルクに向き合った。

「四年前、ゲオルクの気持ちを軽く受け止めてた。ゲオルクが僕と一緒にいるために、村を出て頑張ってたのに……本当にごめん」

 押し切られてした適当な返事を、ゲオルクはずっと大切にしてくれていた。だからまずはそこから謝らないとと思った。必死に自分を想ってくれた気持ちを軽んじたことを謝ろうと。

 そして次にザームエルと向き合う。

「ザームエルになに一つ言わないまま王都に送り返してごめん。魔法で変になっちゃって、王都に戻ればまた王宮の女性たちと楽しく過ごすんだって勝手に決めつけて……ザームエルが本気で僕のことを想ってくれていたのに」

 何も知らされず、急に蚊帳の外に放り出され、無理矢理に王都に送り返されたザームエルは失意の縁にいたのだろう。王都に戻れば魔法が消え自分に興味などなくなると、あんなに熱い想いを言葉にしてくれたのに、向き合わず耳も傾けずにいた自分で申し訳ないと思う。

 そのうえで二人に伝えたかった。

「こんな僕だけど、二人ともまだ僕がいいの?」

 他の誰かではなく、こんないい加減な自分が傍にいていいのだろうか。こんな自分でも選んでくれるのだろうか。

 ゲオルクは小さな村での幼馴染だ、ただの思い込みで好きだと思っていると考えられるし、ザームエルだってソーマのいい加減さを知ったら嫌になるかもしれない。二人にいらないと言われても、自分がいい加減な言動を取ったから仕方ないと諦められる。

 でももし、それでも選んでくれるならと一縷の望みを持って二人を見つめた。

「僕、竜王だから二人よりも長く生きるんだ。変な魔法も使うし変身だってしちゃう。普通の人間じゃないよ。それでも、僕がいいの?」

 そんな自分だから、ユリウスは言い出せずにいたのだろう。自分が竜族で、本当は人間じゃないのだと。だからコルネリウスの前を去った。けれど、ソーマが竜であることを二人とも知っている。でもその本質は理解していないのかもしれないと改めて突きつける。

「私はソーマが欲しい。お前が手に入るのなら他のないもいらない」

「俺もだ。お前がいいんだソーマ。ずっとお前だけだったんだ」

「ありがとう……あとね、謝らないといけないことがあるんだ。僕……ザームエルもゲオルクも、どっちも欲しい」

 たくさん考えた。たくさん悩んだ。それでもただ一つだけ結論が出ないことがあった。

 普通だったら恋愛は一対一でするものだ。

 さんざん見てきたアニメでも、主人公はヒロインのどちらかを選んでいた。付き合えるのは一人だから。だから悩んでどっちといたいのかを考えて、決めるんだ。

 でも、ソーマにはそれができなかった。どちらかなんて選べない。二人とも大切だから。
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