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本編101
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「もしかしたら竜族は、人に恋をしてはいけないのかもしれない。どんなに頑張ってもすぐに別れが来てしまう。だから、その時その時に相手を大切にしていかないと、すぐに死んでしまうよ」
「死ぬ?」
「第五王子もゲオルクも、いつソーマの前からいなくなるかわからないんだ。二人とも、戦いに出る人間だからね」
「ぁ……」
そうだ、年を取ることだけが死に繋がるんじゃない。前世の自分のように不慮の事故だってありうるし、いざ戦争になったら二人とも前線に行かなければならない。生きて帰ってくる保証はどこにもないんだ。今は平和な世の中だけど、いつ何があるかなんて、誰にもわからない。
うっかり者の運命の女神だってこの世界には存在するのだ。
「もし明日、いなくなったらと考えてごらん。そうしたら答えはすぐに出るよ」
明日いなくなったら……。
同じ明日はやってこない。
もう二度と会うことができない二人に、自分はどうをしたいのだろうか。
「父さんは、お父さんに会えない間どうだったの?」
「言えばよかったとずっと後悔してた。コルネリウスがどんな僕でも受け入れてくれたからね。逃げなければ一緒にソーマを育てることができたんだろうな。きみは僕とコルネリウスの愛の証だからね、一緒に育てたかったよ」
ずっと童貞喪失に拘っていた自分を、どうしようもなく恥ずかしく思えてきた。今日と変わらない明日がずっと続くんだと思い込んでいた自分が、どこまでも小さな人間に思えた。
このままじゃダメなんだ。
「ありがとう、父さん。二人とどうしたいのか早く結論を出すよ」
「それがいいね。あと、勝手に寝室を覗かないようにね」
「えっ……気付いてたの?」
「ふふっ。また夕食の時間に呼びに来るよ」
そう言ってユリウスは立ち上がり、部屋を出ていった。足の鎖を鳴らしながら。
今までは重苦しい音だったのに、ユリウスの心を知ればそれは、とても涼し気な音に聞こえてきた。
ソーマは次の日に使用人に頼み、ザームエルとゲオルクへ会いたいと手紙を託した。ザームエルから日時と場所の指定があり、ザームエルが宰相宅を訪れた五日後、ソーマは屋敷の馬車を借り指定の場所と向かった。城門を出てひたすら西に向かった小高い丘にあったのは小さな城だった。
「凄い……お城だ…」
おとぎ話に出てくるような愛らしい建物の前で口を開きながら見上げてしまう。
五番目であっても、ザームエルは本当に王子なんだとしみじみする。使用人に連れられて応接室へ連れていかれるのかと思いきや、なぜか厳つい机が置かれた執務室へ案内された。
ザームエルはもちろんのこと、ゲオルクも既にそこにいた。
「あ……遅くなってごめん」
「いや、たいして待ってない」
上げたゲオルクの手には新しい傷跡が付いている。見つけてソーマは、ユリウスの言葉がさらに重くのしかかった。
『いつソーマの前からいなくなるかわからないんだ。二人とも、戦いに出る人間だからね』
「死ぬ?」
「第五王子もゲオルクも、いつソーマの前からいなくなるかわからないんだ。二人とも、戦いに出る人間だからね」
「ぁ……」
そうだ、年を取ることだけが死に繋がるんじゃない。前世の自分のように不慮の事故だってありうるし、いざ戦争になったら二人とも前線に行かなければならない。生きて帰ってくる保証はどこにもないんだ。今は平和な世の中だけど、いつ何があるかなんて、誰にもわからない。
うっかり者の運命の女神だってこの世界には存在するのだ。
「もし明日、いなくなったらと考えてごらん。そうしたら答えはすぐに出るよ」
明日いなくなったら……。
同じ明日はやってこない。
もう二度と会うことができない二人に、自分はどうをしたいのだろうか。
「父さんは、お父さんに会えない間どうだったの?」
「言えばよかったとずっと後悔してた。コルネリウスがどんな僕でも受け入れてくれたからね。逃げなければ一緒にソーマを育てることができたんだろうな。きみは僕とコルネリウスの愛の証だからね、一緒に育てたかったよ」
ずっと童貞喪失に拘っていた自分を、どうしようもなく恥ずかしく思えてきた。今日と変わらない明日がずっと続くんだと思い込んでいた自分が、どこまでも小さな人間に思えた。
このままじゃダメなんだ。
「ありがとう、父さん。二人とどうしたいのか早く結論を出すよ」
「それがいいね。あと、勝手に寝室を覗かないようにね」
「えっ……気付いてたの?」
「ふふっ。また夕食の時間に呼びに来るよ」
そう言ってユリウスは立ち上がり、部屋を出ていった。足の鎖を鳴らしながら。
今までは重苦しい音だったのに、ユリウスの心を知ればそれは、とても涼し気な音に聞こえてきた。
ソーマは次の日に使用人に頼み、ザームエルとゲオルクへ会いたいと手紙を託した。ザームエルから日時と場所の指定があり、ザームエルが宰相宅を訪れた五日後、ソーマは屋敷の馬車を借り指定の場所と向かった。城門を出てひたすら西に向かった小高い丘にあったのは小さな城だった。
「凄い……お城だ…」
おとぎ話に出てくるような愛らしい建物の前で口を開きながら見上げてしまう。
五番目であっても、ザームエルは本当に王子なんだとしみじみする。使用人に連れられて応接室へ連れていかれるのかと思いきや、なぜか厳つい机が置かれた執務室へ案内された。
ザームエルはもちろんのこと、ゲオルクも既にそこにいた。
「あ……遅くなってごめん」
「いや、たいして待ってない」
上げたゲオルクの手には新しい傷跡が付いている。見つけてソーマは、ユリウスの言葉がさらに重くのしかかった。
『いつソーマの前からいなくなるかわからないんだ。二人とも、戦いに出る人間だからね』
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