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本編85

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 ただ自分の気持ちにばかり目が向き、すべてを後回しにしてしまった罪悪感に、小さく「ごめん」とまた呟いた。

「だって……童貞喪失したかったんです」

「なんだと?」

 しょんぼりと心の中だけで呟いたが、どうやらしっかりと口に出ていたらしい。

「うわっ! あ、これはそのっ!」

「俺がいなくなった間にしっかりと処女喪失だけでなく童貞まで喪失したかったんだな、ソーマは」
「いやだから、これにはいろんな誤解があって……」

「その誤解とやらはゆっくりと聞いてやるよ。俺たちの家でな」

 絶対聞いてもらえない……聞いてくれたとしてもその後の展開がもう見えてます……。

 ソーマはしおらしかったのが嘘のようにまた暴れ出した。

 だがソーマがちょっと暴れたくらいで歩けなくなったり落としたりするようなゲオルクではない。逞しい身体でジタバタするソーマをそのままに、どんどん歩き続けそして一軒の大きな家の前で立ち止まった。

「もしかしてここ……」

 周囲よりも大きい煉瓦造りの家の扉を開き、ゲオルクは何も言わないまま二階へと上がった。

(ここ、アパートじゃない)

 大きいのに一軒家だ。二人の他に人はなく、乱暴に開けられた二階の一番奥の部屋には、大きな寝台がドーンと鎮座していた。

 これから何が始まるのか、もう嫌でも理解したソーマはベッドの上へと乱暴に投げ出された。

「あの……ゲオルク……えっともしかして……」

 一縷の望みをかけて訊ねてみたが、その前にゲオルクは着ていたものを脱ぎ始めた。

「ちょっ!」

「あいつに聞いた。お前、一か月以上も二人で過ごしてたんだってな。その分を取り返してやる」

 上着を投げ捨て逞しい肌を露にしたゲオルクは、寝台に乗りあがった。

「とりかえすって……」

 どんな意味なのか、知りたいような知りたくないような……。

 これから何をされるのか分かっているのに、ソーマは寝台に投げ出されたままの姿勢で動こうとしなかった。正確には動けなかった。もう期待に蕾の奥がジンジンと熱くなり、言葉とは裏腹に身体が火照り始めていた。触れられてもいないのに、されるんだと思うだけで腰が痺れ始めていた。

「ソーマの身体に、あいつといたのと同じだけの時間、俺のを挿れてやる」

 言うや否や、ゲオルクはソーマの着を脱がしにかかった。乱暴にズボンを抜き、下着も剥ぎ取る。

「ちょっ……やだっ!」

 身体をくねらせながら、抵抗しているのかそれとも脱がしやすくしているのか分からない動きをしながら、口ではしおらしく嫌がってみせる。だが本当に嫌なのかと問われればソーマにもわからなかった。

 すべてを剥ぎ取られ一カ所以外が生まれたままの姿になる。

 そこをゲオルクがじっと見つめた。

「どうしたんだ、これ……どこかで切ったのか?」

 いびつに服で巻いた手首の布をそっと辿られる。

「まあそんなところ」

 金を得るために鱗を取った際の傷とは、さすがのソーマも口にはできない。

「……痛かったな」

 ゲオルクは傷ついた腕を取ると、無様な包帯の上に唇を落とした。
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