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本編84
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ザームエルだけじゃない、ゲオルクでもきっとそうだ。
一度でも抱かれてしまえば、快楽に弱いソーマはずぶずぶとのめり込み、自分から抜け出すことなんて考えられなくなる。
今だって、あの狂った夜を思い出しただけで、勃起するのではなく蕾の奥が疼き、滅茶苦茶に穿って欲しいと願ってしまう。
そんなはしたない身体を抱えたまま、ちゃんと童貞喪失できるか不安でもあった。
もうたっぷりと『抱かれる』悦びを知ってしまって、本当に女性を『抱ける』のだろうか。
ソーマは慌てて頭を振った。
(だめだだめだ、そんな弱気じゃダメなんだっ! このままじゃまた一生童貞で終わっちゃう)
今二人のことを考えちゃだめだと強く自分に言い聞かせて、ソーマは大きく深呼吸をすると悲願達成の第一歩を踏み出した。
が、そんなソーマの腕を誰かが力強く掴んだ。
「え?」
「…………みつけた」
「ゲ……オルク? なんで……?」
今一番会いたくないと思っていたのに、なぜここにいるのだろう。しかも、王都にソーマがいると確信しているような、そんな言葉だ。
「武器屋に竜の鱗が入ったと聞いた……すぐに見に行った……あれお前のだよな」
バレて当然だ。だってあの武器屋はゲオルクの行きつけだと店主は言ったではないか。当然珍しい素材が手に入れば上客に連絡するのは、至極一般的な流れである。だが一度も仕事をしたことのない前世と今生なので当然その知識もなく、だからうっかりゲオルク行きつけの店に鱗を渡してしまったのだった。
「あ……それは……」
「なぜあの時、俺たちから離れたんだソーマ」
「それは……」
脱童貞したいからですっ! なんてこんな往来のあるところで言えるはずもない。口を噤み絶対言わないぞという姿勢を見せるソーマに、長い付き合いのゲオルクはすぐに手法を変えた。
「言わないのならそれでいい。聞き出すまでだ」
ヒョイっとソーマの細い身体を荷物のように肩に抱きかかえると、暴れるのも無視してどんどんと進んでいく。
「ちょっ……下ろしてよゲオルク! どこに連れていくんだよっ!」
「決まっているだろ、俺たちの家だ」
「俺たちって……」
「約束しただろ、お前を迎え入れるために家を構えると。だから待ってろと言ったのに……」
四年前の約束を、ゲオルクは忠実に果たしていたのだ。ソーマを迎え一緒に住むための家を得るために、あの様々な傷を作りながら金を溜めたのだろうか。
大きな身体に数多ある傷を思い出す。断れなくて了承したソーマの知らないところで、命をかけながら約束を果たそうとしたゲオルクがいて、なのにソーマは約束をしたこと自体軽く考えていた。
バタバタと振り回していた手足から力が抜けていく。
「ごめん……」
「ソーマのせいじゃないと解ったからそこは責めない。だがなぜお前だけがあそこに残ったかを教えろ」
ゲオルクからしたら、せっかく再会した婚約者と一晩(邪魔者込みで)過ごしたのに、次の日には強制的に王都に連れ戻されたのがどうしても納得できないらしい。いつ来るとも知らされないまま、ただ宰相とソーマの父に「そのうち来るから」と言われ、ずっと王都で待ち続けたゲオルクの気持ちをソーマは一度も考えたことはなかった。
一度でも抱かれてしまえば、快楽に弱いソーマはずぶずぶとのめり込み、自分から抜け出すことなんて考えられなくなる。
今だって、あの狂った夜を思い出しただけで、勃起するのではなく蕾の奥が疼き、滅茶苦茶に穿って欲しいと願ってしまう。
そんなはしたない身体を抱えたまま、ちゃんと童貞喪失できるか不安でもあった。
もうたっぷりと『抱かれる』悦びを知ってしまって、本当に女性を『抱ける』のだろうか。
ソーマは慌てて頭を振った。
(だめだだめだ、そんな弱気じゃダメなんだっ! このままじゃまた一生童貞で終わっちゃう)
今二人のことを考えちゃだめだと強く自分に言い聞かせて、ソーマは大きく深呼吸をすると悲願達成の第一歩を踏み出した。
が、そんなソーマの腕を誰かが力強く掴んだ。
「え?」
「…………みつけた」
「ゲ……オルク? なんで……?」
今一番会いたくないと思っていたのに、なぜここにいるのだろう。しかも、王都にソーマがいると確信しているような、そんな言葉だ。
「武器屋に竜の鱗が入ったと聞いた……すぐに見に行った……あれお前のだよな」
バレて当然だ。だってあの武器屋はゲオルクの行きつけだと店主は言ったではないか。当然珍しい素材が手に入れば上客に連絡するのは、至極一般的な流れである。だが一度も仕事をしたことのない前世と今生なので当然その知識もなく、だからうっかりゲオルク行きつけの店に鱗を渡してしまったのだった。
「あ……それは……」
「なぜあの時、俺たちから離れたんだソーマ」
「それは……」
脱童貞したいからですっ! なんてこんな往来のあるところで言えるはずもない。口を噤み絶対言わないぞという姿勢を見せるソーマに、長い付き合いのゲオルクはすぐに手法を変えた。
「言わないのならそれでいい。聞き出すまでだ」
ヒョイっとソーマの細い身体を荷物のように肩に抱きかかえると、暴れるのも無視してどんどんと進んでいく。
「ちょっ……下ろしてよゲオルク! どこに連れていくんだよっ!」
「決まっているだろ、俺たちの家だ」
「俺たちって……」
「約束しただろ、お前を迎え入れるために家を構えると。だから待ってろと言ったのに……」
四年前の約束を、ゲオルクは忠実に果たしていたのだ。ソーマを迎え一緒に住むための家を得るために、あの様々な傷を作りながら金を溜めたのだろうか。
大きな身体に数多ある傷を思い出す。断れなくて了承したソーマの知らないところで、命をかけながら約束を果たそうとしたゲオルクがいて、なのにソーマは約束をしたこと自体軽く考えていた。
バタバタと振り回していた手足から力が抜けていく。
「ごめん……」
「ソーマのせいじゃないと解ったからそこは責めない。だがなぜお前だけがあそこに残ったかを教えろ」
ゲオルクからしたら、せっかく再会した婚約者と一晩(邪魔者込みで)過ごしたのに、次の日には強制的に王都に連れ戻されたのがどうしても納得できないらしい。いつ来るとも知らされないまま、ただ宰相とソーマの父に「そのうち来るから」と言われ、ずっと王都で待ち続けたゲオルクの気持ちをソーマは一度も考えたことはなかった。
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