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本編82

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 甲高い音が店内に響き、こちらまで痺れそうな音が鳴り響く。

「凄い音……」

 耳を塞いでも空気振動でゾクゾクしてしまう。

「………………お嬢ちゃん、これどこで手に入れたんだ?」

 店主はソーマに目もくれず、自分が刀を振り下ろした鱗を凝視しながら、ぼんやりと訪ねてきた。
「えっと、その……拾いました」

 自分のを剥がしましたなんて言えるはずがない。

「どこでっ!」

「あ……城門の外?」

 言葉を濁す。明確な場所なんて言えるはずもない。他に落ちているはずもないし、もう一枚欲しいと言われても出すことなど痛すぎてできない。

(剥がれかけを剥いただけでも痛かったのに、しっかりくっついてるやつ剥いたらどうなるんだよ……ダメダメっ!)

「それより、それ本物だった?」

「この剣で傷一つ付いてないって本物以外ありえねーだろ。お嬢ちゃんこれを売ってくれ!」

「いいともー!」

 だが、さすがに一介の武器屋が払うにしては値段が高額過ぎる、らしい。

「え、即金でもらえないの?」

「さすがにそれだけの金をすぐに用意するのは無理だよ。前金でこれを渡す、そんで売れたら残りのをってのはどうだ?」

 前金といいながら渡された金額は、売価の1/4、悪い話ではない(と思いたい)。

「売れたらすぐにお嬢ちゃんに連絡するよ。連絡先を教えてくれ」

「えっと……」

 連絡先がありません。電話もない世界で家の番号を教えることもできない。

(連絡先ってどういえば……)

 竜の洞窟が正式な家だが、さすがにそこに来られては困る。魅了の魔法がいっぱいかかった洞窟まで届けさせて、兵士たちのように変になられては敵わない。

 だからといって他に言えるような場所も…………あった。

「宰相の家に連絡ください! 僕そこにいるので」

 本当の父親が王都に家を構えているのを思い出したソーマは勢いよく告げた。

「なんだい、お嬢ちゃんは宰相様のところの使用人だったのか」

「まあ、そんなところです。ソーマって言えばわかると思うので」

「分かった、宰相様のところのソーマだな。安心しろ、すぐに売れるから!」

「ありがとうおじさん!」

 前金を大事に鞄の底に入れてソーマは武器屋を出た。娼館で以前提示された金額にはまだ足りないが、それでも数日中には手に入る。ソーマはホクホクしながら、心に余裕ができた。これで脱童貞は間違いなし! もう心の憂いをなくしたソーマはゆっくり王都を楽しもうといろんな店を回って街の人と喋ってと、ゲーム上でプレイヤーがよくする行動をとり、王都をくまなく楽しんだ。

 お金もたっぷりあるので、ずっと干し肉だけで過ごした腹を満たすために、ちょっと敷居の高い料亭で食事を摂と、もう昼もすぎ西日が差し始めていた。

「まだお金は……たっぷり残ってるね」

 そこで気付いた。早朝の追加料金込みでの値段で最上級の娼婦に相手をしてもらう値段を言われただけで、案外この金額でもそこそこの女の子とやれるんじゃないか、と。
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