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本編78
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そんなソーマの心の叫びなど知らず、老婆は舐めまわすようにソーマの身体や顔を品定めしていく。
「……僕客なんだけど……」
「客なら夜にもう一回来ておくれ。娼館が朝からやってるわけないだろ」
「あ、そっか……でもごめんなさい、夜にはいかなきゃならないところがあるから、ちょっとだけとか、駄目かな?」
「なんだい、そんなに溜まってるのかい。しょうがないね。だけど特別料金だよ、五割増しで良けりゃ、うちの売れっ子を出してやらないこともないね」
「あっ、本当ですか? えっと、いくら……」
値段を聞く前に、自分が無一文なのに気付く。
そうだ、全くと言っていいほど金などなかったのだ。しかも老婆が口にしたのは、町民の三か月の収入でも足りないほどの金額だ。
「そ……そんなに高いの?」
「バカ言うんじゃないよ。王都でも一番の売れっ子娼婦だよ。こんな朝っぱらで五割増しじゃなかったら、三か月先まで客が入っててるんだ。相手して貰えるだけでもありがたいってもんだ」
「そんな……」
「出せないって言うんなら帰りな。それとも、店に借金して、抱いた後に自分がうちの店で客とるってんなら特別にやらせないこともないよ」
条件が不釣り合いだ。世の中やっぱり金か! 金がなかったら身体を売るしかないのか!
しかもこの老婆、後者をごり押ししてきそうな雰囲気がある。でもできるでけ早く童貞を卒業したい。すっきりしてからゲオルクやザームエルとのことを考えたいのだ。すべてを後回しにしてきたから、ちゃんとしたい。そのためにも脱童貞は必須だ。むしろ悲願でもある。
店がどれだけの乗客を抱えているかを話してくる老婆に、ソーマはグッと奥歯を噛みしめ、掌をかざした。
(一か八かだ! ごめんお婆ちゃん!)
意識を集中して魔法を放つ。
いつものように大きな玉が出て老婆にぶつかるとパァンと弾けた。
「………」
「………」
「…………………」
「……………なんだい、お前さん手品師だったのかい。残念だけど、ここじゃ手品見て楽しむような客は来んよ」
「え? あの……お婆ちゃんなんともないの?」
「何がだい? それよりもどうだい、うちの店で働かんか?」
「あ……その………お邪魔しました」
「気が変わったらいつでも声をかけておくれよぉ」
ソーマは失意のまま娼館に背中を向けた。
やっぱりというか、予想通りというか、一縷の望みすら潰えてしまった。
(僕の魔法って男限定なんだ……なんでだよぉ)
あわよくばと思っていたが、昨日あれほど集まっていた鳥は全部雄だけだったというのか。今まで魔法を浴びた人々が狂ったように自分を求めてきたり、信仰対象にしたりを目の当たりにしてきたから、もしかしたらタダでできるかと期待したのに……。
「仕方ない、お金貯めるしかないのか……」
そこでパパである宰相から、お小遣いを貰おうという発想が出ないのがソーマであった。
仕方なく表通りに出ていろんな店を見て回る。どんなものを売ったら金になるのだろうか。商売などしたこともないソーマはまず現状視察から入ろうとした。
様々な店を覗いては時折入って店主に話を聞いて、今どんなものを持ってくれば買ってもらえるのかをリサーチした。
「……僕客なんだけど……」
「客なら夜にもう一回来ておくれ。娼館が朝からやってるわけないだろ」
「あ、そっか……でもごめんなさい、夜にはいかなきゃならないところがあるから、ちょっとだけとか、駄目かな?」
「なんだい、そんなに溜まってるのかい。しょうがないね。だけど特別料金だよ、五割増しで良けりゃ、うちの売れっ子を出してやらないこともないね」
「あっ、本当ですか? えっと、いくら……」
値段を聞く前に、自分が無一文なのに気付く。
そうだ、全くと言っていいほど金などなかったのだ。しかも老婆が口にしたのは、町民の三か月の収入でも足りないほどの金額だ。
「そ……そんなに高いの?」
「バカ言うんじゃないよ。王都でも一番の売れっ子娼婦だよ。こんな朝っぱらで五割増しじゃなかったら、三か月先まで客が入っててるんだ。相手して貰えるだけでもありがたいってもんだ」
「そんな……」
「出せないって言うんなら帰りな。それとも、店に借金して、抱いた後に自分がうちの店で客とるってんなら特別にやらせないこともないよ」
条件が不釣り合いだ。世の中やっぱり金か! 金がなかったら身体を売るしかないのか!
しかもこの老婆、後者をごり押ししてきそうな雰囲気がある。でもできるでけ早く童貞を卒業したい。すっきりしてからゲオルクやザームエルとのことを考えたいのだ。すべてを後回しにしてきたから、ちゃんとしたい。そのためにも脱童貞は必須だ。むしろ悲願でもある。
店がどれだけの乗客を抱えているかを話してくる老婆に、ソーマはグッと奥歯を噛みしめ、掌をかざした。
(一か八かだ! ごめんお婆ちゃん!)
意識を集中して魔法を放つ。
いつものように大きな玉が出て老婆にぶつかるとパァンと弾けた。
「………」
「………」
「…………………」
「……………なんだい、お前さん手品師だったのかい。残念だけど、ここじゃ手品見て楽しむような客は来んよ」
「え? あの……お婆ちゃんなんともないの?」
「何がだい? それよりもどうだい、うちの店で働かんか?」
「あ……その………お邪魔しました」
「気が変わったらいつでも声をかけておくれよぉ」
ソーマは失意のまま娼館に背中を向けた。
やっぱりというか、予想通りというか、一縷の望みすら潰えてしまった。
(僕の魔法って男限定なんだ……なんでだよぉ)
あわよくばと思っていたが、昨日あれほど集まっていた鳥は全部雄だけだったというのか。今まで魔法を浴びた人々が狂ったように自分を求めてきたり、信仰対象にしたりを目の当たりにしてきたから、もしかしたらタダでできるかと期待したのに……。
「仕方ない、お金貯めるしかないのか……」
そこでパパである宰相から、お小遣いを貰おうという発想が出ないのがソーマであった。
仕方なく表通りに出ていろんな店を見て回る。どんなものを売ったら金になるのだろうか。商売などしたこともないソーマはまず現状視察から入ろうとした。
様々な店を覗いては時折入って店主に話を聞いて、今どんなものを持ってくれば買ってもらえるのかをリサーチした。
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