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本編72
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「へい親分。上玉を見つけてきましたよ」
「どれ、見せてみろ」
山賊たちを掻き分けてやってきたのは、厳ついオークのような醜い顔の大男だった。いかにも山賊の親分と言った風貌の男は、縮こまってガタガタと震えているソーマの顔を無理矢理に上げさせてニヤリと笑った。
「こりゃ今までで一番だ。売ってもいいが、ここでたっぷりと俺たちと遊んでからだな」
「いつもの店に売りつけるんっすね」
「親分の次は俺だぜ、捕まえてきたのは俺だからな」
「なんだよ、お前ひとりの手柄じゃないだろ。捕まえたやつ全員でこいつとやろうぜ」
順番で争う手下たちの声など聞こえないように、山賊親分はソーマの腕を掴んで立たせた。
「俺の後なら好きにしていいぜ。まずは俺がこいつを女にしてやるよ」
「やだやだやだやだ! ぎゃぁぁぁたすけてぇぇぇぇ!」
大きな手で痛いほどに腕を掴まれたソーマはそのまま引きずるように、奥の部屋へと連れ込まれた。掃除や洗濯などなされていない部屋は、厳つい男特有の匂いが充満している。
「うっ!」
臭い、臭すぎる。しかもいつ洗ったんだよと突っ込みたくなるほどべたついたシーツに投げ出されては、全身にサブイボが立つ。
(こいつ、不潔すぎるよ!)
前世だって清潔なニートが信条だったソーマには堪えられない環境だ。
すぐにでも逃げ出したい……どうしたらいいんだろう……。
「怯えんなよ、すぐに俺様のもので悦がらせてやるよ」
「やだっ! そんないつ風呂入ったかもわからない手で触んなよっ!」
「ほう、威勢がいいな。そんなことを言っていられるのも今のうちだな、せいぜい喚いて俺様を楽しませろ」
今まで自分の周りにいなかった凶悪な人種に、どう対応したらいいの。ソーマは必死で逃げるための道を探した。けれど、扉はただ一つだけ。
(どうしよう……)
ここには自分を守ってくれる存在はない。ゲオルクもザームエルもいない。だって、自分が頼んで王都に送ってもらったのだから。脱童貞という夢を叶えるためだけに。
(助けて……ゲオルク…ザームエル……)
どうしてだろう、窮地に陥って助けを求めるのはどちらかではなく、二人だった。二人に守られていたら、こんな目に遭わなかったのに。変な夢なんか抱かずに大人しくみんなと一緒に王都に行けばよかった。コルネリウスの館でなに不自由ない生活が約束されていたのに……。二人との関係がどうなるかわからないが、それでも今よりは絶対に平和なはずだ。こんな汚い男に襲われるなんて知っていたら、絶対に旅に出なかったのに……。
「ひっひっひ、もっと泣きわめけよ。そうじゃないと面白くないだろ」
毛むくじゃらな汚い手が伸びてくる。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その手を払おうとして伸ばした手から、光が飛び出した。
「ぅふっ!」
光は一直線に山賊へと向かい、当たってはじけた。
「やばっ!」
うっかり魔法を出してしまったソーマは、さっきよりも一層青褪めた。
「どれ、見せてみろ」
山賊たちを掻き分けてやってきたのは、厳ついオークのような醜い顔の大男だった。いかにも山賊の親分と言った風貌の男は、縮こまってガタガタと震えているソーマの顔を無理矢理に上げさせてニヤリと笑った。
「こりゃ今までで一番だ。売ってもいいが、ここでたっぷりと俺たちと遊んでからだな」
「いつもの店に売りつけるんっすね」
「親分の次は俺だぜ、捕まえてきたのは俺だからな」
「なんだよ、お前ひとりの手柄じゃないだろ。捕まえたやつ全員でこいつとやろうぜ」
順番で争う手下たちの声など聞こえないように、山賊親分はソーマの腕を掴んで立たせた。
「俺の後なら好きにしていいぜ。まずは俺がこいつを女にしてやるよ」
「やだやだやだやだ! ぎゃぁぁぁたすけてぇぇぇぇ!」
大きな手で痛いほどに腕を掴まれたソーマはそのまま引きずるように、奥の部屋へと連れ込まれた。掃除や洗濯などなされていない部屋は、厳つい男特有の匂いが充満している。
「うっ!」
臭い、臭すぎる。しかもいつ洗ったんだよと突っ込みたくなるほどべたついたシーツに投げ出されては、全身にサブイボが立つ。
(こいつ、不潔すぎるよ!)
前世だって清潔なニートが信条だったソーマには堪えられない環境だ。
すぐにでも逃げ出したい……どうしたらいいんだろう……。
「怯えんなよ、すぐに俺様のもので悦がらせてやるよ」
「やだっ! そんないつ風呂入ったかもわからない手で触んなよっ!」
「ほう、威勢がいいな。そんなことを言っていられるのも今のうちだな、せいぜい喚いて俺様を楽しませろ」
今まで自分の周りにいなかった凶悪な人種に、どう対応したらいいの。ソーマは必死で逃げるための道を探した。けれど、扉はただ一つだけ。
(どうしよう……)
ここには自分を守ってくれる存在はない。ゲオルクもザームエルもいない。だって、自分が頼んで王都に送ってもらったのだから。脱童貞という夢を叶えるためだけに。
(助けて……ゲオルク…ザームエル……)
どうしてだろう、窮地に陥って助けを求めるのはどちらかではなく、二人だった。二人に守られていたら、こんな目に遭わなかったのに。変な夢なんか抱かずに大人しくみんなと一緒に王都に行けばよかった。コルネリウスの館でなに不自由ない生活が約束されていたのに……。二人との関係がどうなるかわからないが、それでも今よりは絶対に平和なはずだ。こんな汚い男に襲われるなんて知っていたら、絶対に旅に出なかったのに……。
「ひっひっひ、もっと泣きわめけよ。そうじゃないと面白くないだろ」
毛むくじゃらな汚い手が伸びてくる。
「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
その手を払おうとして伸ばした手から、光が飛び出した。
「ぅふっ!」
光は一直線に山賊へと向かい、当たってはじけた。
「やばっ!」
うっかり魔法を出してしまったソーマは、さっきよりも一層青褪めた。
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