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本編67
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一国の宰相としてその能力を得たいという想いと、存在を知ったばかりの可愛い息子が男に追いかけまわされるのを避けたい想いが葛藤している。この世界の勢力図を一変しかねない存在が我が子であると思うと、王都に連れていくのも躊躇われる。だが、コルネリウスはまだ会ったばかりのソーマに親愛を寄せていた。
なぜなら、今のソーマは出会った時のユリウスにそっくりだからだ。
姿形もだが、困った時の泣きそうな表情も、ザームエルに向けた怒った顔も、なにもかもが愛しい人に似ている。宰相という地位よりも、愛しいものを手元に置きたい男心が勝っていく。
「ソーマ。私はこの国の宰相だし、現在は侯爵という地位にいる。この国の中であれば君を守ることができる。どうだ、私と一緒にユリウスと三人で暮らさないか……その……親子で……」
親子という単語になぜか顔が赤らんでしまう宰相であった。
「王都……でもここはどうすればいいの?」
「ソーマ。この竜王の館はもともと、竜族が子供を育てるための物なんだ。人に見つからずゆっくりと子供を育てるためのね。だからまだ妊娠もしていないのだったらどこにいても問題はない」
「本当? だったら僕、一度王都に行ってみたい」
そしてあわよくば、この竜族の魔法が全く効かない女の子を探したい。
竜族は人間の雌に嫌われる魔法がかけられているなんて、やっぱり信じたくないソーマであった。望みはあくまでも、童貞喪失。
前世で果たせなかった夢をどうしても叶えたい。先っぽだけでもいいから……。
「では決まったな。ソーマ、君のその魔法は危険すぎる。王都では竜の姿になるのも、魔法を使うのも駄目だ。分かっているな」
「はい……あの、なんて呼べばいいのかな? やっぱり…宰相様?」
「いや、ここはぜひお父さんと呼んでくれ。君の実の父なのだから!」
「じゃあ……お父さん」
呼ばれただけでコルネリウスはハートを射抜かれたのを感じた。ユリウスだけがこの世界にいればいいと思っていた彼であったが、最愛の人に似た血の繋がった息子というのもそう悪いものではない。むしろ可愛すぎて成人をとうに過ぎている息子なのに、幼い娘を相手にしている父の気持ちになる。この子に近づく男は全員殺処分だ。
「そう言えばコルネリウス、王子はどうしたらいいんだい。ここに残していくわけにはいかないからね」
「あぁそう言えばいたな、そんなのが」
ソーマを前にしてしまえば、ザームエルなどどうでもよくなっているコルネリウスであった。
「国外にでも送っておいてくれ」
「いいのかい? でも彼もソーマの恋人だろう」
「なんだとっ! それは本当かソーマっ!」
「ぁ……その……えっと」
「ソーマのことを妃と呼んでいたじゃないか。聞こえていなかったのかい。それと、扉の前にいるのは幼馴染で……あれ、どっちがソーマの恋人なんだい」
父よ、なぜこのタイミングでそんな質問をしてくる。言えるわけないじゃないか、どちらとも恋人じゃないが、どちらにもつい数刻前まで犯されましたとは。今も立てないのはその名残であると。
「一度に二人の恋人を持つ竜族はそうそういないよ。凄いな、ソーマは」
「ちっちがうよ! 多分二人とも魔法でそうなっちゃただけだよ」
なぜなら、今のソーマは出会った時のユリウスにそっくりだからだ。
姿形もだが、困った時の泣きそうな表情も、ザームエルに向けた怒った顔も、なにもかもが愛しい人に似ている。宰相という地位よりも、愛しいものを手元に置きたい男心が勝っていく。
「ソーマ。私はこの国の宰相だし、現在は侯爵という地位にいる。この国の中であれば君を守ることができる。どうだ、私と一緒にユリウスと三人で暮らさないか……その……親子で……」
親子という単語になぜか顔が赤らんでしまう宰相であった。
「王都……でもここはどうすればいいの?」
「ソーマ。この竜王の館はもともと、竜族が子供を育てるための物なんだ。人に見つからずゆっくりと子供を育てるためのね。だからまだ妊娠もしていないのだったらどこにいても問題はない」
「本当? だったら僕、一度王都に行ってみたい」
そしてあわよくば、この竜族の魔法が全く効かない女の子を探したい。
竜族は人間の雌に嫌われる魔法がかけられているなんて、やっぱり信じたくないソーマであった。望みはあくまでも、童貞喪失。
前世で果たせなかった夢をどうしても叶えたい。先っぽだけでもいいから……。
「では決まったな。ソーマ、君のその魔法は危険すぎる。王都では竜の姿になるのも、魔法を使うのも駄目だ。分かっているな」
「はい……あの、なんて呼べばいいのかな? やっぱり…宰相様?」
「いや、ここはぜひお父さんと呼んでくれ。君の実の父なのだから!」
「じゃあ……お父さん」
呼ばれただけでコルネリウスはハートを射抜かれたのを感じた。ユリウスだけがこの世界にいればいいと思っていた彼であったが、最愛の人に似た血の繋がった息子というのもそう悪いものではない。むしろ可愛すぎて成人をとうに過ぎている息子なのに、幼い娘を相手にしている父の気持ちになる。この子に近づく男は全員殺処分だ。
「そう言えばコルネリウス、王子はどうしたらいいんだい。ここに残していくわけにはいかないからね」
「あぁそう言えばいたな、そんなのが」
ソーマを前にしてしまえば、ザームエルなどどうでもよくなっているコルネリウスであった。
「国外にでも送っておいてくれ」
「いいのかい? でも彼もソーマの恋人だろう」
「なんだとっ! それは本当かソーマっ!」
「ぁ……その……えっと」
「ソーマのことを妃と呼んでいたじゃないか。聞こえていなかったのかい。それと、扉の前にいるのは幼馴染で……あれ、どっちがソーマの恋人なんだい」
父よ、なぜこのタイミングでそんな質問をしてくる。言えるわけないじゃないか、どちらとも恋人じゃないが、どちらにもつい数刻前まで犯されましたとは。今も立てないのはその名残であると。
「一度に二人の恋人を持つ竜族はそうそういないよ。凄いな、ソーマは」
「ちっちがうよ! 多分二人とも魔法でそうなっちゃただけだよ」
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