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本編64
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だがソーマの父も無駄に350年も生きてはいない。二人の雰囲気に何かを察したようだ。口元を緩ませながら、ソーマの腕を掴み、反対の手に中年男性の腕を掴んで壁をくぐっていった。
薄暗い洞窟から一転、長閑な森の中へと出た四人をいち早く見つけたのは、森で寝転がっていた鳥でも食べられにやってきた兎でもなく、きっちりと衣服を身に着けたザームエルだった。
「いたっ! どうして私を置いていったのだ……あれ……」
来訪者を予想していたけれど、その中に見知った顔を見つけ、いつも自信満々のザームエルの表情があっという間にこの世の終わりへと変わった。
「宰相……なぜここに……」
「あなたを探しに来たに決まっているでしょう。さあ帰りますよ、第五王子」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
「と言いたいところですが、王子のことはどうでもいいです。むしろ国ではない所で野垂れ死んでください。むしろこの世から消滅してください」
「……宰相、妙に私のことを嫌っていないか?」
「貴方の女性関係の後始末をしているこちらの身になってください。存在が無駄です」
「えっ……ザームエルそんなに女遊びが酷いの?」
お前だけだとか言いながら、散々遊んでいたのか。なんと羨ましい!
なのに、自分は遊んでおいてソーマを束縛しようとするのが許さない。さっさと脱童貞しておいて、しかも宰相という国の運営の中枢人物からいなくなれと言われるくらいに遊びつくしながら、ソーマが嫁探ししようとしたときに酷いことをしたなんて……。
ソーマは今までにないほどの怒りを感じてザームエルを睨みつけた。
もう昨日までの無知なソーマではない。
無駄な前世の記憶を得た今となっては、そんなザームエルの存在が羨ましくて憎らしかった。
「まだ成人して二年だというのに、一体どれだけ遊び歩いたか……」
「……ザームエルって僕よりも年下なの?」
成人して二年って……二つも下の男に、あんなことやこんなことをされたというのか。しかも超絶技巧を既に身に着けているとは。
嫉妬がメラメラと湧き上がっていく。
「ちがっ! 確かに私は18歳だが、確かにちょっと女性関係が派手ではあったが、今は誓ってソーマ一筋だ。それだけは信じてくれ、我が妃っ!」
嫉妬で、ゲオルクの腕の中にいながらザームエルから顔を背ける。
「これからの人生すべて、ソーマだけだ。信じてくれ!」
縋ってくるザームエルに冷たい一瞥を送り、ソーマはゲオルクに頼んでリビングへと運んでもらった。背後でザームエルの悲痛な叫びが聞こえるが、今は無視だ。あのテクニックを持っているのが自分よりも年下というのが、どうしても許せなかった。まだ年上だったら自分にもと希望が持てたのに……。
さっきまでゴロゴロと転がっていたリビングのソファに下ろされる。
「申し訳ないけど、ゲオルクは席を外してくれるかい。これからソーマに大切な話をしなければならないからね」
当たり前のようにソーマの隣に座ろうとするゲオルクを制し、父がドアへと促す。
「だが……」
「それとも、王都に飛ばされたほうが良いかい?」
「………………ドアの外で待っています」
さっきの魔法を目の当たりにして、ゲオルクが選ぶのは当然、ソーマの傍に留まれる選択肢だ。
「ついでに、あのうるさい王子が入らないように見張っておいてね」
追加注文に頷き、ゲオルクはリビングから出ていく。部屋の中に残ったのは、ソーマと父、そして宰相と呼ばれた男の三人だ。
薄暗い洞窟から一転、長閑な森の中へと出た四人をいち早く見つけたのは、森で寝転がっていた鳥でも食べられにやってきた兎でもなく、きっちりと衣服を身に着けたザームエルだった。
「いたっ! どうして私を置いていったのだ……あれ……」
来訪者を予想していたけれど、その中に見知った顔を見つけ、いつも自信満々のザームエルの表情があっという間にこの世の終わりへと変わった。
「宰相……なぜここに……」
「あなたを探しに来たに決まっているでしょう。さあ帰りますよ、第五王子」
「いやだぁぁぁぁぁぁぁあっ!」
「と言いたいところですが、王子のことはどうでもいいです。むしろ国ではない所で野垂れ死んでください。むしろこの世から消滅してください」
「……宰相、妙に私のことを嫌っていないか?」
「貴方の女性関係の後始末をしているこちらの身になってください。存在が無駄です」
「えっ……ザームエルそんなに女遊びが酷いの?」
お前だけだとか言いながら、散々遊んでいたのか。なんと羨ましい!
なのに、自分は遊んでおいてソーマを束縛しようとするのが許さない。さっさと脱童貞しておいて、しかも宰相という国の運営の中枢人物からいなくなれと言われるくらいに遊びつくしながら、ソーマが嫁探ししようとしたときに酷いことをしたなんて……。
ソーマは今までにないほどの怒りを感じてザームエルを睨みつけた。
もう昨日までの無知なソーマではない。
無駄な前世の記憶を得た今となっては、そんなザームエルの存在が羨ましくて憎らしかった。
「まだ成人して二年だというのに、一体どれだけ遊び歩いたか……」
「……ザームエルって僕よりも年下なの?」
成人して二年って……二つも下の男に、あんなことやこんなことをされたというのか。しかも超絶技巧を既に身に着けているとは。
嫉妬がメラメラと湧き上がっていく。
「ちがっ! 確かに私は18歳だが、確かにちょっと女性関係が派手ではあったが、今は誓ってソーマ一筋だ。それだけは信じてくれ、我が妃っ!」
嫉妬で、ゲオルクの腕の中にいながらザームエルから顔を背ける。
「これからの人生すべて、ソーマだけだ。信じてくれ!」
縋ってくるザームエルに冷たい一瞥を送り、ソーマはゲオルクに頼んでリビングへと運んでもらった。背後でザームエルの悲痛な叫びが聞こえるが、今は無視だ。あのテクニックを持っているのが自分よりも年下というのが、どうしても許せなかった。まだ年上だったら自分にもと希望が持てたのに……。
さっきまでゴロゴロと転がっていたリビングのソファに下ろされる。
「申し訳ないけど、ゲオルクは席を外してくれるかい。これからソーマに大切な話をしなければならないからね」
当たり前のようにソーマの隣に座ろうとするゲオルクを制し、父がドアへと促す。
「だが……」
「それとも、王都に飛ばされたほうが良いかい?」
「………………ドアの外で待っています」
さっきの魔法を目の当たりにして、ゲオルクが選ぶのは当然、ソーマの傍に留まれる選択肢だ。
「ついでに、あのうるさい王子が入らないように見張っておいてね」
追加注文に頷き、ゲオルクはリビングから出ていく。部屋の中に残ったのは、ソーマと父、そして宰相と呼ばれた男の三人だ。
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