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本編61

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 ぐったりとしたまま食堂に辿り着いたのは、あれからもう数回二人に嬲られてからだった。

 予想通り競うようにしてソーマを抱く二人が、自分たちも空腹を覚えたころ、やっと解放され食堂に連れてきてもらえた。少なくとも食事をする間はなにもされない。

 だが喘ぎすぎてもうスープぐらいしか喉を通らなかった。

「なんだソーマ、大食いのお前がそれだけで満足するのか?」

「うん……これでいい……」

 二人にさんざん嬲られてもうスプーンを持ち上げるので精いっぱいだ。それを口に運んでと考えると気が遠くなってくる。しかも、腹は相変わらず満たされた感覚にある。

「疲れさせてすまなかった。大丈夫かソーマ。私が飲ませてやろう」

 優雅な手つきでザームエルがスープを掬い、ソーマの口元へと運ぶ。

「ありがと……んっ」

 ゆっくりと流れ込んでくる温かい液体は、それだけでホッとして肩に残っていた力が抜けていく。ソーマが飲みこむタイミングを見ながら、無理のない速度でスープが運ばれ、ソーマはただ口を開くだけとなってしまう。

 それは俺の役目だとザームエルを睨みつけるゲオルクの自然に気づかないまま、ソーマは時間をかけゆっくりとスープを飲み干すと、もうそれだけで胃が膨れ上がった。今日はもう何もしたくないほどに朝からの交情で疲れ切っている。

 また寝台に戻ろうか……でも寝台に戻ったらなんかされそうで怖い。

 ご馳走様と小さく呟き、ソーマはフラフラと食堂から出て、滅多に使うことのない大きなソファのあるリビングへとやってきた。

 ここで少し休もう。そして隙を見て抜け出そう。

 ヘロヘロの状態で竜に変身した昨日を思い出し、同じ失敗は繰り返さないと心に誓う。うっかりお尻を突かれた時の痛みを思い出しても、今はとにかく寝て体力を回復させるのが一番だ。

 さすがに二人ともソファで変ないたずらはしないだろう。

 ソファにゴロンとしながら、今後のことを考える。

 冷静になろう。

 とりあえず、自分が一番したいことがなにかを考える。

(やっぱり、童貞喪失が急務だよな……二回続けて童貞ってやだもん)

 なにを押しても、まずは童貞喪失だ。それ以外のことは童貞を卒業してから考えよう。ゲオルクのこともザームエルのことも、その次だ。

 前世の記憶が戻った今、女の子との交際方法ももうばっちりだ……実戦はしたことないけど。夜の作法もちゃんと勉強した……同人誌で。だから問題ない……はずだ。

(前世の記憶があったって恋愛経験ゼロの童貞ニートじゃ役立たずじゃないか! しかも、ここが『レストレーヤー』の世界だったとしても、冒険シーンと竜王撃破シーンしかなかった話で、ヒントなんて何もない……)

 前世の記憶を取り戻して分かったのは、うーにゃんが全く使えない運命の女神だと再認識できたことくらいだ。

 よくある、前世の記憶をもとにカッコよく活躍なんてできっこない。しかも、ここ最近は寝台から起き上がることすらできていない。
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