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本編50

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(しょうがない、やるしかないのかな……)

 ソーマは嘆息して腹の奥に力を溜め始めた。ザームエルとたっぷり性的なことをしたためか、いつもよりもすぐに力が集まり、一気に変化した。

(あれ、今までで一番早くできちゃった)

 緊急事態だからだろうと割り切り、ソーマは竜の姿で人々の前に現れた。

「出たな竜!」

「王子を出せっ!」

「うるさい、人の子よ。ここは神聖なる竜の住処である。すぐさま立ち去れ」

「なにを! 王子を出さなければお前を倒すしかない」

「人の子ごときが我を倒すか、笑止!」

「竜! おまえを倒して平和な世を手に入れる」

「笑止だ人の子よ。お前ごときがこの鋼の鱗に傷をつけられるものか」

「やって見せよう、覚悟しろ!」

 あれ、このやり取りどこかで見たような……しかも、発している声に聞き覚えもあるような……。

 だがわーっと攻めてくる兵たちにすぐに熟考できない状況になる。

 兵たちに当たらないようしっぽを振って近づけさせないようにするので精いっぱいだ。

 なぜならソーマには戦うすべなど、持ち合わせていないのだ。しかも小心すぎて誰も傷つけたくない。もしここで人が死んだらやりきれないし、怪我人が出るのも嫌だ。なるべく当たらないように威嚇して、どうにか退去してくれるのを待つしかなかった。

 だが、王宮の精鋭だろう兵たちは、そんな攻撃で怯むような軟な精神構造はしていなかった。次々と武器を手に飛び掛かり、ソーマに襲い掛かってくる。

「ちょっと、多勢で攻めるなんてひどいよぉぉぉ」

 だがなぜか泣き言は無視される。

 なんとか攻撃が届かないよう防衛するが、ちょっと手をかざすだけ、尻尾を振り回すだけで土煙が上がってしまう。そのたびに兵から悲鳴が上がり、恨み言が返ってくる。

(僕酷いことしてないのに、そんな言い草ないだろぉ)

 勝手に転んで勝手に怪我してこっちを恨むなんて酷すぎると叫んでも、なぜか竜の姿だと弱音は人々に届かないようだ。

 だが、この場所を守るためには何としても兵たちを追い払わなければならない。でなければ、大切な石碑が壊されるから。

 何としても死守しなければと、いやいやながら使命感を背負うソーマは、兵たちをどんどんと入口へと追いやろうと、威嚇の意味も込めて彼らに近づくふりをした。

 距離を縮められたと思った兵たちがじりじりと後ずさる。

(これはいいかも)

 ちょっと手を上げて、鋭い爪を見せつけるようにしながら振り下ろすことを繰り返し、徐々に壁へと追い詰めていく。

(あれ、なんで壁に行っちゃうかな? 出口に行ってよ)

 だが、その作戦は隙があった。後方が広く空き、俊敏な兵の一人に回りこまれてしまう。
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