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本編21

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 もう四年だ。充分に竜について学んだ。未だに自分の魔法がなんなのかわからないが、それでも魔法の代わりに多くの知識を持つようになった。

 単調な毎日に飽きると、ふと王都への憧れを思い出した。

「いっぱい勉強したし、いいよな」

 もう無力な自分ではないのだから。

 それに、相変わらず金はないが、昔のように歩いて王都へ行くなどと考えなくてもいいのだ。父のように竜の姿になれば空を駆けることができるのだから。

「っと、その前に、王都の位置を確認しよう」

 迷子になっては意味がない。

 最新の地図(それでも100年前のもの)を広げ、今の場所から王都の位置を確認した。

「僕がいるのがここだから……山を3つ超えればいいのか。結構近いんだな」

 人間の足ならひと月以上かかるだろうが、空からならゆっくり飛んでも一刻もかからないだろう。
 善は急げだ。

 そうと決まると、ソーマはまず風呂に入った。泥を落とし家に残っていた石鹸でちょっと贅沢をする。

 すっかり伸びてしまった髪を一人で切る事ができないからそのままにして、綺麗に櫛を入れた。

 伸びてから知ったが、いつの間にかソーマの髪は、父に似た赤毛から銀色へと変わっていた。

 きっと他にも変わっているところがあるのかもしれないが、ソーマは己の姿形にあまり頓着することはなかった。

 王都に向かうための身支度は整った。

 新しい(だろう)服も着たし、不潔に思われない程度には綺麗にした。

「よーし、王都に行くぞ!」

 石版に教えて貰ったやり方で、全身の力を身体の中心に溜め込んだ。

 何度も練習したが、この瞬間が一番緊張する。総毛立つ感覚がいつまでも慣れない。

 集中して大きな力を身体の裡に溜め込んで一気に開放する。光に包まれた身体は段々と大きくなり、巨大な竜へと変貌していった。

「よし、上手くできたぞ!」

 初めてやった時はしっぽがお尻についただけだったので、順調に成長していっている自分の力を単純に喜び、ソーマはヌッコヌッコ歩き出した。まだ竜の姿で歩くことに慣れていないせいか、妙に足運びがゆっくりだ。しかも、気を付けないとドシンドシンと地面が揺れてしまう。そんな大きな音を立てたら見つかってしまうから、そろりそろりと歩きながら洞窟を出、翼を羽ばたかせた。

「うん、なんとか飛べそう」

 実はまだ飛んだことがない。

 訓練も兼ねて思い切り翼を使ってみる。

「あ、浮いた!」

 これならいけるぞ。

 ソーマは意気揚々と地図で確認した王都へと向かった。

 その時、ゲオルクとの約束はすっかり頭から消え失せていた。
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