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本編10

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 豊作を願う祭りはひと際盛大に行われる、村一番のイベントだ。。そのための準備も時間をかけ、ソーマもゲオルクもその準備に駆り出された。

 言葉を交わす間もなくひたすら夏祭りの準備と畑の管理をし続けの毎日であっという間に当時になる。

 この祭りが村で重要な意味は、村人の親戚も集まり、簡易的な集団見合いに発展し、近隣の村との絆を持つとともに、人口を絶えさせない目的もある。

 祭りで大篝火の周りを共に踊り、気持ちを通わせ新しい家庭を作っていくのに重要な場所で、心密かにソーマもこの日が待ち遠しかった。

 大人になった自分にも嫁が来てくれるかもしれない、と。

 だが蓋を開ければ若い娘は皆ゲオルクの元に集まり、年頃の男はポカンとするしかなかった。

 19歳になっても特定の相手がいないゲオルクに腹を立てながら、早く誰か一人決めてくれと懇願してしまいたくなる。

 そうすれば残ったこの一人くらいは自分のところに回ってくれるかもしれないのに!

 今日のために誂えた一張羅を纏った独身の面々は苦虫を噛み潰すしかなかった。

 モテる男は良いよなと愚痴りながら。

「ゲオルクの独り勝ちかよ……」

「まあそう言うなって。本人は結婚する気がないみたいだしな」

「そうなの?」

「なんだよソーマ。ゲオルクと一番親しいのに聞いてないのか?」

「そうだよ、お前らいつも一緒じゃないか。二人で森に行って何してんだよ」

「それは……まぁ色々」

 約束の証を交わして終わってしまうとは言えない。

 本当は話をしたいのに、それにばっかり夢中になって、気が付けば空が夕焼けに染まっていることもよくある。

 秘密ではないが、なんとなくゲオルクと自分だけの特別なことだから、人に言いたくない。ゲオルクを独占している優越感もあるし、なによりも、自分がしていることを他の人に取られるんじゃないかという、根拠のない危機感もあった。

 あの心地よいことを奪われたくはなかった。

 真面目なゲオルクのことだ、結婚しても約束が果たされるまでは絶対に約束の証を交わし続けてくれるだろう。

 だから、どんな相手がゲオルクの嫁になってもいいが、他の人たちに知られ奪われるのは嫌だった。

 この数年繰り広げられている祭りの夜の独身男の寂しい集まりに、今年から加わったソーマは口を噤みながら初めて口にする甘い酒を飲んでいった。酔いが回った面々が潰れていく中、ソーマはぼんやりと星空を眺めるしかなかった。

 酒を飲めば嫌なことを忘れられると教えてもらったが、ちっとも酔うことができないし、忘れることもできない。

 むしろ、酔うという感覚すらソーマには訪れなかった。

 まだ大篝火の周りを踊る大人たちと、逃げ回るゲオルクを追いかける若い娘たちの声だけが村に響き渡っていた。
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