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本編9
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男なのに女よりも綺麗なんて、ソーマだって望んでいない。なのに毛嫌いされ、側に寄るだけで凄い目で睨まれるのだ。こんなんじゃ村の中で結婚相手なんて見つけることもできない。
おばちゃん連盟からは、王都で流行ってるらしい見栄えのいい男が芝居をする『役者』というやつにでもなれと囃されている。それをすれば女の子に大人気になり、食うにも困らないそうだ。
だがその話をすると決まってゲオルクが間に入って話を中断させるのだ。
まるでソーマの耳に入れまいとするように。
自分のほうが村の娘たちに人気があるくせに、ちょっとでもソーマが褒められるとそれを掻き消そうとするのだ。そして二人きりになればいつものように抱きしめ、しつこいまでに約束の証をしてくる。
その不安定さに逆に心配になってくる。
日に日に格好良くなるゲオルクにも間もなく嫁が来るだろう。いつまでも王都などと言っていられない時が来る。
大人たちがどの子にするかを必死に決めていることだろう。年頃の娘なら皆ゲオルクとの結婚を望んでいるから、誰か一人に絞るのに困難を極めていることだろう。誰を決めても他の娘たちから文句が飛んできそうだ。
幼馴染の事とは言え、ソーマにできるのは人気があるのは大変だなと遠くから傍観しているしかない。もしこの中に入って何か言おうものなら明日には娘たちに何をされるかわからないからだ。
それほど村の中はゲオルクのことでピリピリしている。
だからソーマと二人で出かけようとすれば、大顰蹙を買い、直接文句を言われてしまう。
徐々にゲオルクと距離を置くようにしても、彼の方からやってきては森に行こうと誘ってくる。皆の前で堂々と。
人目に付かない森の深い場所まで連れ込んでは、痛いくらいに抱きしめて唇を啄みと、そんな繰り返しだ。
一年以上も続けている約束の証も、ソーマはすっかり慣れた。
自分からゲオルクの真似をして唇を啄めるようになったし、ゲオルクの首に腕を絡めてするほうが体勢が楽なのにも気づいた。まだ唇を舐めるところまではいっていないが、それでもそこそこ上手になった気はする。
心のどこかで、いつになったら約束が果たされるのだろうと想いながら。
小さい頃よりもほんの少し……だいぶ王都への憧れが薄くなっているからだ。それよりも自分に嫁が来るかのほうが身近で切実な問題になっている。
結婚の申し込みをする前に娘たちからきっぱり言われているのだ。
「ソーマとだけは絶対結婚は嫌っ! 自分よりも綺麗なのが気に食わないのよっ」
そんなことを言われたって、ソーマだってなりたくてこんな優男としか言いようのない体躯になったわけではない。一生懸命に鍛えているし、畑仕事だって以前よりは頑張っている。
なのに現実は嫁の貰い手ゼロを更新している。
だから心のどこかでゲオルクと約束の証を交わしていていいのだろうかと思っても、その気持ちよさや心地よさを投げうつまでにはならなかった。ゲオルクと触れ合うとそれだけで満たされていくから。
お腹も心も満たされ幸せな気持ちになる。
止めて欲しくなくて、もっと欲しくて、自分から腕を絡ませてしまうこともある。そうするとゲオルクも嬉しいようで、いつもよりも啄んでいる時間が長くなる。一緒にいる時間が短くなるにつれ、二人になれる時間すべてをこれに費やしてしまう。
話したいことはたくさんあるのに、それよりも触れ合うのが心地よくてやめられない。
誰と結婚するのか訊かないとと思いながらも、ゲオルクの結婚相手よりも目の前の心地よさを優先してしまう。
約束の証だけを交わし続けて、夏祭りの時期になる。
おばちゃん連盟からは、王都で流行ってるらしい見栄えのいい男が芝居をする『役者』というやつにでもなれと囃されている。それをすれば女の子に大人気になり、食うにも困らないそうだ。
だがその話をすると決まってゲオルクが間に入って話を中断させるのだ。
まるでソーマの耳に入れまいとするように。
自分のほうが村の娘たちに人気があるくせに、ちょっとでもソーマが褒められるとそれを掻き消そうとするのだ。そして二人きりになればいつものように抱きしめ、しつこいまでに約束の証をしてくる。
その不安定さに逆に心配になってくる。
日に日に格好良くなるゲオルクにも間もなく嫁が来るだろう。いつまでも王都などと言っていられない時が来る。
大人たちがどの子にするかを必死に決めていることだろう。年頃の娘なら皆ゲオルクとの結婚を望んでいるから、誰か一人に絞るのに困難を極めていることだろう。誰を決めても他の娘たちから文句が飛んできそうだ。
幼馴染の事とは言え、ソーマにできるのは人気があるのは大変だなと遠くから傍観しているしかない。もしこの中に入って何か言おうものなら明日には娘たちに何をされるかわからないからだ。
それほど村の中はゲオルクのことでピリピリしている。
だからソーマと二人で出かけようとすれば、大顰蹙を買い、直接文句を言われてしまう。
徐々にゲオルクと距離を置くようにしても、彼の方からやってきては森に行こうと誘ってくる。皆の前で堂々と。
人目に付かない森の深い場所まで連れ込んでは、痛いくらいに抱きしめて唇を啄みと、そんな繰り返しだ。
一年以上も続けている約束の証も、ソーマはすっかり慣れた。
自分からゲオルクの真似をして唇を啄めるようになったし、ゲオルクの首に腕を絡めてするほうが体勢が楽なのにも気づいた。まだ唇を舐めるところまではいっていないが、それでもそこそこ上手になった気はする。
心のどこかで、いつになったら約束が果たされるのだろうと想いながら。
小さい頃よりもほんの少し……だいぶ王都への憧れが薄くなっているからだ。それよりも自分に嫁が来るかのほうが身近で切実な問題になっている。
結婚の申し込みをする前に娘たちからきっぱり言われているのだ。
「ソーマとだけは絶対結婚は嫌っ! 自分よりも綺麗なのが気に食わないのよっ」
そんなことを言われたって、ソーマだってなりたくてこんな優男としか言いようのない体躯になったわけではない。一生懸命に鍛えているし、畑仕事だって以前よりは頑張っている。
なのに現実は嫁の貰い手ゼロを更新している。
だから心のどこかでゲオルクと約束の証を交わしていていいのだろうかと思っても、その気持ちよさや心地よさを投げうつまでにはならなかった。ゲオルクと触れ合うとそれだけで満たされていくから。
お腹も心も満たされ幸せな気持ちになる。
止めて欲しくなくて、もっと欲しくて、自分から腕を絡ませてしまうこともある。そうするとゲオルクも嬉しいようで、いつもよりも啄んでいる時間が長くなる。一緒にいる時間が短くなるにつれ、二人になれる時間すべてをこれに費やしてしまう。
話したいことはたくさんあるのに、それよりも触れ合うのが心地よくてやめられない。
誰と結婚するのか訊かないとと思いながらも、ゲオルクの結婚相手よりも目の前の心地よさを優先してしまう。
約束の証だけを交わし続けて、夏祭りの時期になる。
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