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本編6

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 そんなある日、村に冒険者と名乗る人々が宿を求めてやってきた。

 この村の傍に大きな魔物が出現し、それを退治に来たのだという。ギルドと呼ばれる冒険者向けの仕事紹介所から依頼で来たのだというその人たちの話を聞いて、村人全員が驚いた。

 だって、そんな凶悪な魔物が出たという話は全く出ていないから。

 しかも決して入ってはいけないと言われている森の奥だ。

「なにそれ、怖い」

 話を聞いたソーマは恐怖した。だってその森の入り口付近ではあるがよくゲオルクと行っては約束の証を交わしているのだから。

「どうしよう……このままじゃ狩りにも行けないよねゲオルク」

「ああ……そうだな」

 ソーマが話しかけているというのに、ゲオルクはどこか上の空だ。なにかを考えているようで、今までソーマが話しかければ目を合わせて話を聞いてくれる幼馴染の今までにない様子に、不安はより募っていった。

「もしかして、その魔物、ゲオルク見たの?」

「あっ、ごめん。違うんだ、ちょっと考え事をして、な」

 そう言うと、魔物が出る夜までゆっくりしている冒険者たちの元へと行き、なにかを話し始めた。
「ソーマ、遊んでいないで畑仕事をするんだ」

「でも父さん、凄い魔物が村の側まで来てるんだって。怖いよ!」

「大丈夫だよ、彼らが退治してくれるんだろう。それが冒険者の仕事だからね。そして父さんとソーマの仕事は農夫だ。さあ、今日から新しい野菜の種を蒔かないと冬に食べるものがなくなるぞ」

「……解ってるよ」

 現実を突きつけるだけでそこに夢も希望もない。嘆息して、けれどゲオルクのことを気にしながらも父の後を追うしかなかった。

 夜に出没するという魔物は、冒険者たちが来てから現れなくなったのか、十日ほど滞在してから冒険者たちは帰途についてしまった。だが彼らが村に滞在していたほとんどの時間、ゲオルクはソーマそっちのけでずっと彼らと話をしていた。とても真剣に、時には皆でどこかへ行き、ソーマは連れていってもらえなかった。

「ソーマ、これは子供の遊びじゃないんだ。危険な魔物も出てるみたいだし、村の中で大人しくしていろ」

「そんな……」

「いい子だからな。ちょっとあの人たちの案内をしてくる」

「……ゲオルクのバカっ!」

 いつも一緒だったのに、村の誰よりも自分を優先してくれていたのに。いつも側にいてくれたのに。ちょっと外の人たちが来たからと言って放っておくなんてひどい。

 ソーマはまた自分を子供扱いし始めたゲオルクにベーッと舌を出して家の中に入っていった。

 丁度父が昼食の用意をしている時だった。

「どうしたんだ、ソーマ」

「ゲオルクが冷たいんだ。冒険者の人たちとばっかり話して、僕のことを構ってくれないんだ」

「ソーマは本当にゲオルクが好きなんだな。大丈夫だよ、ゲオルクもソーマのことがちゃんと好きだから」

「違うよ、別に好きじゃないから!」

 もうあんな奴のことなんて……。

 一緒にいてくれないどころか、突き放すようにするゲオルクのことなんか、もう仲の良い幼馴染じゃない。そう思おうとするのに、寂しくて悲しくて、泣きそうになる。あの人たちが来てからギュって抱いてもくれなくなった。いつもしてくれる約束の証だって……。
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