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序章2
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はずなのに、ここはどこだ?
四方八方どこを見渡しても白一色の世界で、颯馬はぼんやりと佇んでいた。
なにもない真っ白な空間で、何をしていいかも解らないままぼんやりとするしかなかった。
(オレ、確かに死んだ。そうだよな)
蘇るのはダンプカーが猛スピードで視界に近づいてくるシーン、そして衝撃。あれで死なないのは人造人間か超人くらいだろう。筋肉なんてすべて削げ落ちているニートが、鉄の塊に勝てるわけがない。
だから自分は死んだ、それには納得していたが、果たしてここはどこなのだろう。
天国?
それとも地獄?
まぁどちらにしろ死後の世界というものだろう。
長らく立っていては疲れるので、とりあえずその場で胡坐をかいた。
(そのうち案内する奴が来てくれるか。それから考えればいいや)
こんななにもない空間ではやることもない。人生の半分以上を放棄した30歳ニートだ、思い残すことは……たくさんある。
本当はニートじゃなく、まっとうな人生を歩みたかった。できれば高校生という青春を謳歌したかったし、彼女も欲しかった。せめて童貞卒業ぐらいは経験したかったが、残念なことに恋人はright handだ。時々left handも加わってくれるが、それだけだ。
いとも残念な経験しかない。せめてまっとうな人生を送っていたら恋人くらいはできたのだろうか。
いつもそう振り返っては、現実逃避してそのまま眠りについていた。だから死後の国だというのに、いつもの癖でそのままゴロンと寝転がりスヤスヤと夢の中へと旅立っていった。
「もしもーし、起きてくださーい」
うとうとする颯馬に誰かが声をかける。母親にしては随分と若い女声だ。
「お話がありますので起きてくださいねー。聞こえますかー?」
「っさいな……」
「起きてくださいよぉ、でなければ地縛霊になっちゃいますよ」
地縛霊?
なんだそれは、と目を開けると、あの真っ白な空間だ。誰もいなかったはずの世界に、今度は白く古臭いドレスを身に着けた若い女が立ち、寝転がっている颯馬に声をかけていた。
「やっと起きましたね。良かったです。あなたは人間No.54,689,756,148,947番さんですね」
なんだ、その番号は。しかも数が多すぎて覚えられないし、そんなナンバリングされていることすら知らない。というか、知るはずがない。
「迎えに来るのが遅くなってごめんなさいね。ちょっとトラブルが発生してしまいまして」
「はぁ……」
若い女性となんて話した経験がないから返事をするのがやっとだ。しかも言っていることがよく解っていなかった。
「そのトラブルなんですけどね……あっ、自己紹介が遅れました。私、運命の女神です。うーにゃんと呼んでね」
「うーにゃん?」
「まあ、早速ありがとうございます。それでですね、トラブルというのが、うっかりあなたを殺してしまったんですね」
凄くさらりと言われ、そうかと納得しようとして慌てた。
「うっかり?」
「そうなんですよ、うっかり。新しい管理システムに代わって操作方法が難しくなっちゃったんですね。それでうっかり」
テヘペロと舌を出して誤魔化そうとする女神に、さすがのニートも「はぁそうですか」とは聞き流せなかった。
「俺、死ぬ予定じゃなかったってこと?」
「まぁそうですね。でもちょっとだけ早まったというか……50歳で衰弱死を30歳で事故死にしちゃったんですね」
どっちも嫌だ。でも本来ならあと20年は生きられたということか。
四方八方どこを見渡しても白一色の世界で、颯馬はぼんやりと佇んでいた。
なにもない真っ白な空間で、何をしていいかも解らないままぼんやりとするしかなかった。
(オレ、確かに死んだ。そうだよな)
蘇るのはダンプカーが猛スピードで視界に近づいてくるシーン、そして衝撃。あれで死なないのは人造人間か超人くらいだろう。筋肉なんてすべて削げ落ちているニートが、鉄の塊に勝てるわけがない。
だから自分は死んだ、それには納得していたが、果たしてここはどこなのだろう。
天国?
それとも地獄?
まぁどちらにしろ死後の世界というものだろう。
長らく立っていては疲れるので、とりあえずその場で胡坐をかいた。
(そのうち案内する奴が来てくれるか。それから考えればいいや)
こんななにもない空間ではやることもない。人生の半分以上を放棄した30歳ニートだ、思い残すことは……たくさんある。
本当はニートじゃなく、まっとうな人生を歩みたかった。できれば高校生という青春を謳歌したかったし、彼女も欲しかった。せめて童貞卒業ぐらいは経験したかったが、残念なことに恋人はright handだ。時々left handも加わってくれるが、それだけだ。
いとも残念な経験しかない。せめてまっとうな人生を送っていたら恋人くらいはできたのだろうか。
いつもそう振り返っては、現実逃避してそのまま眠りについていた。だから死後の国だというのに、いつもの癖でそのままゴロンと寝転がりスヤスヤと夢の中へと旅立っていった。
「もしもーし、起きてくださーい」
うとうとする颯馬に誰かが声をかける。母親にしては随分と若い女声だ。
「お話がありますので起きてくださいねー。聞こえますかー?」
「っさいな……」
「起きてくださいよぉ、でなければ地縛霊になっちゃいますよ」
地縛霊?
なんだそれは、と目を開けると、あの真っ白な空間だ。誰もいなかったはずの世界に、今度は白く古臭いドレスを身に着けた若い女が立ち、寝転がっている颯馬に声をかけていた。
「やっと起きましたね。良かったです。あなたは人間No.54,689,756,148,947番さんですね」
なんだ、その番号は。しかも数が多すぎて覚えられないし、そんなナンバリングされていることすら知らない。というか、知るはずがない。
「迎えに来るのが遅くなってごめんなさいね。ちょっとトラブルが発生してしまいまして」
「はぁ……」
若い女性となんて話した経験がないから返事をするのがやっとだ。しかも言っていることがよく解っていなかった。
「そのトラブルなんですけどね……あっ、自己紹介が遅れました。私、運命の女神です。うーにゃんと呼んでね」
「うーにゃん?」
「まあ、早速ありがとうございます。それでですね、トラブルというのが、うっかりあなたを殺してしまったんですね」
凄くさらりと言われ、そうかと納得しようとして慌てた。
「うっかり?」
「そうなんですよ、うっかり。新しい管理システムに代わって操作方法が難しくなっちゃったんですね。それでうっかり」
テヘペロと舌を出して誤魔化そうとする女神に、さすがのニートも「はぁそうですか」とは聞き流せなかった。
「俺、死ぬ予定じゃなかったってこと?」
「まぁそうですね。でもちょっとだけ早まったというか……50歳で衰弱死を30歳で事故死にしちゃったんですね」
どっちも嫌だ。でも本来ならあと20年は生きられたということか。
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