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77『聖骸布の謎・2』
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RE・友子パラドクス
77『聖骸布の謎・2』
レプリカながら聖骸布からは、とんでもない情報が読み取れた……。
聖杯の存在とその在りか。そして聖杯の在りかにたどり着くまでの方法と能力に関してである。しかしレプリカの悲しさ、分かるのはそこまでであった。
聖杯の具体的な在りかはゴルゴダの丘から半径50キロあるいは500キロのどこか。
――50、500、どっちだ?――
50の横のボヤケたのがシミにも0にも見えてしまう。その程度だ。
聖杯の在りかにたどり着くための方法と能力については、友子が直接目にした「空を飛ぶ力」しか分からなかった。
聖杯の力については、皆目分かっていない。
「仕方がない。なにか動きがあるまでは待つしかないわね」
友子と紀香は、そう結論づけた。
ゴルゴダの丘の半径五十キロ以内では毎日事件が起こっていた。
小はカッパライから戦争に至るまで、怪しいと思える事件は数万件もある。中には聖杯がらみのこととはっきり分かるものが何件かあった。
実際、聖杯の強奪事件というのもあった。だが、自分の分身をテレポさせて調べても、先祖代々「聖杯と信じ」保管されていたものが盗まれ、トレースしていくと、ガラクタ、あるいは単なる骨董品に過ぎなかった。
――そっちは、どう?――
――とても手に負えない。自分の電脳で「聖杯欲しい」で、検索したら、サッカーのワールドカップが出てくるよ――
紀香もお手上げのようだ。
「ちょっと、ハナ連れてお散歩に行ってくる」
気分転換のつもりで日曜の街に出た。
ハナも少し大きくなった。
滝川からもらった赤い首輪がかわいい。生後三か月といったところで、人間で言えば五歳ぐらいになる。好奇心も旺盛で、一秒もじっとしていない。あっちの電柱、こっちの生け垣などで匂いを嗅ぎまくり。動くものにはなんにでも興味を示す。出くわす人や犬には、だれかれかまわずに興味を持って追いかける。
可愛いとは思うのだが、考え事をしているので、いささかわずらわしい。
「ちょ、どこ行くの!」
ちょっと気を抜いた隙に、ハナは一人で駆け出した。自分としたことが……と、思ったら、友子の手にはリードが握られたまま。リードの先と首輪が外れてしまっている。
――偶然か? こいつの能力か?――
角を曲がると、ハナは喫茶店の前でお座りしていた。見ると『喫茶 乃木坂』とあった。
これは、友だちのポチの匂いを……ということは、滝川がいる。入ろうとしたら張り紙が目に付いた。
――ペットの持ち込み、ご遠慮願います――
「どうしろってのよ……?」
ホワ~ン
――え!?――
ハナが五歳ぐらいの女の子に変身した。
「トモちゃん、入ろうよ。アイシュ食べたい」
そう言いながら、ワンピのポケットに首輪をしまうハナ。
「ハナ、ちょっと、あんた……」
「はやくぅ(^▽^)」
勝手に入っていく。
「おお、ハナ、ちょっと見ないうちに大きくなったな!」
九歳ぐらいの男の子が後ろの席から声をかけてきた。その子の前には、新聞を読んでいる滝川の背中が見えた。
「ポチ……クンですか?」
「うん、人間の姿してるから」
「すみませーん、アイスとコーヒー、ブレンドで」
「趣味が合うようだね」
ウェイトレスのオネーサンが二組のアイスとコーヒーを持ってきた。
「どうして、ペットの持ち込み禁止になったんですか?」
「マスターの気まぐれ。たまにはペットの実年齢や、個性をしっかり知っておけってことらしいよ」
なるほど、人の姿にするとよく分かる。
「でも、なんで人になっちゃうんですか?」
「ペットショップに行った時、迷わなかっただろ?」
「あ、地図見てたから」
「じゃなくて……」
「あ、すぐにハナが目に飛び込んできて決めちゃった!」
「そういうこと」
「でも、なんで……」
「ねえ、トモちゃん(^〇^)/」
アイスを食べてじっとしていられなくなったハナとポチは公園に行きたがった。
「遠くにいくんじゃないぞ、犬の姿に戻ってしまうからな」
「うん」
「ちゃんと、ハナちゃんの面倒みるんだぞ」
「分かってらい。ハナ、行くぞ!」
「おお!」
二人は、元気に公園に行った。
「なにか、困っているようだな?」
「ええ……」
義体同士なので、瞬間で情報が伝わった。
「ゴルゴダ教団で、検索してごらん」
「やりました。ゴルゴダのつくキリスト教系の宗教団体は20ほどありましたけど、どれも無関係でした」
「名前は、仲間内でしか使ってないんだな」
「でも、バチカン大使には名乗っていってます」
「多少の敬意ははらっているのか、ブラフなのか……じゃ、これで検索してみよう」
「教祖の本人または身内が不治の病……」
ポチとハナが泥だらけになって戻ってきたとき、ターゲットが絞り込めた……。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
鈴木 栞 未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
滝川 修 城南大の学生を名乗る退役義体兵士
77『聖骸布の謎・2』
レプリカながら聖骸布からは、とんでもない情報が読み取れた……。
聖杯の存在とその在りか。そして聖杯の在りかにたどり着くまでの方法と能力に関してである。しかしレプリカの悲しさ、分かるのはそこまでであった。
聖杯の具体的な在りかはゴルゴダの丘から半径50キロあるいは500キロのどこか。
――50、500、どっちだ?――
50の横のボヤケたのがシミにも0にも見えてしまう。その程度だ。
聖杯の在りかにたどり着くための方法と能力については、友子が直接目にした「空を飛ぶ力」しか分からなかった。
聖杯の力については、皆目分かっていない。
「仕方がない。なにか動きがあるまでは待つしかないわね」
友子と紀香は、そう結論づけた。
ゴルゴダの丘の半径五十キロ以内では毎日事件が起こっていた。
小はカッパライから戦争に至るまで、怪しいと思える事件は数万件もある。中には聖杯がらみのこととはっきり分かるものが何件かあった。
実際、聖杯の強奪事件というのもあった。だが、自分の分身をテレポさせて調べても、先祖代々「聖杯と信じ」保管されていたものが盗まれ、トレースしていくと、ガラクタ、あるいは単なる骨董品に過ぎなかった。
――そっちは、どう?――
――とても手に負えない。自分の電脳で「聖杯欲しい」で、検索したら、サッカーのワールドカップが出てくるよ――
紀香もお手上げのようだ。
「ちょっと、ハナ連れてお散歩に行ってくる」
気分転換のつもりで日曜の街に出た。
ハナも少し大きくなった。
滝川からもらった赤い首輪がかわいい。生後三か月といったところで、人間で言えば五歳ぐらいになる。好奇心も旺盛で、一秒もじっとしていない。あっちの電柱、こっちの生け垣などで匂いを嗅ぎまくり。動くものにはなんにでも興味を示す。出くわす人や犬には、だれかれかまわずに興味を持って追いかける。
可愛いとは思うのだが、考え事をしているので、いささかわずらわしい。
「ちょ、どこ行くの!」
ちょっと気を抜いた隙に、ハナは一人で駆け出した。自分としたことが……と、思ったら、友子の手にはリードが握られたまま。リードの先と首輪が外れてしまっている。
――偶然か? こいつの能力か?――
角を曲がると、ハナは喫茶店の前でお座りしていた。見ると『喫茶 乃木坂』とあった。
これは、友だちのポチの匂いを……ということは、滝川がいる。入ろうとしたら張り紙が目に付いた。
――ペットの持ち込み、ご遠慮願います――
「どうしろってのよ……?」
ホワ~ン
――え!?――
ハナが五歳ぐらいの女の子に変身した。
「トモちゃん、入ろうよ。アイシュ食べたい」
そう言いながら、ワンピのポケットに首輪をしまうハナ。
「ハナ、ちょっと、あんた……」
「はやくぅ(^▽^)」
勝手に入っていく。
「おお、ハナ、ちょっと見ないうちに大きくなったな!」
九歳ぐらいの男の子が後ろの席から声をかけてきた。その子の前には、新聞を読んでいる滝川の背中が見えた。
「ポチ……クンですか?」
「うん、人間の姿してるから」
「すみませーん、アイスとコーヒー、ブレンドで」
「趣味が合うようだね」
ウェイトレスのオネーサンが二組のアイスとコーヒーを持ってきた。
「どうして、ペットの持ち込み禁止になったんですか?」
「マスターの気まぐれ。たまにはペットの実年齢や、個性をしっかり知っておけってことらしいよ」
なるほど、人の姿にするとよく分かる。
「でも、なんで人になっちゃうんですか?」
「ペットショップに行った時、迷わなかっただろ?」
「あ、地図見てたから」
「じゃなくて……」
「あ、すぐにハナが目に飛び込んできて決めちゃった!」
「そういうこと」
「でも、なんで……」
「ねえ、トモちゃん(^〇^)/」
アイスを食べてじっとしていられなくなったハナとポチは公園に行きたがった。
「遠くにいくんじゃないぞ、犬の姿に戻ってしまうからな」
「うん」
「ちゃんと、ハナちゃんの面倒みるんだぞ」
「分かってらい。ハナ、行くぞ!」
「おお!」
二人は、元気に公園に行った。
「なにか、困っているようだな?」
「ええ……」
義体同士なので、瞬間で情報が伝わった。
「ゴルゴダ教団で、検索してごらん」
「やりました。ゴルゴダのつくキリスト教系の宗教団体は20ほどありましたけど、どれも無関係でした」
「名前は、仲間内でしか使ってないんだな」
「でも、バチカン大使には名乗っていってます」
「多少の敬意ははらっているのか、ブラフなのか……じゃ、これで検索してみよう」
「教祖の本人または身内が不治の病……」
ポチとハナが泥だらけになって戻ってきたとき、ターゲットが絞り込めた……。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
鈴木 栞 未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
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