トモコパラドクス

武者走走九郎or大橋むつお

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67『シオリクライシス・激突』

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RE・友子パラドクス

67『シオリクライシス・激突』 



 三十年前、友子の娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来から来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により友子は義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、完全に義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に復帰する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」。 そう、友子は十六歳。女高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……そのマッタリ生活が破綻。第五世代の義体の攻撃を受けた。



 乃木坂に着いていつもの階段を上がったら……渋谷の駅前だった。


 ワープした!?


 自分でやったわけじゃない…………誰かにワープさせられたんだ!


 くそ!


 その瞬間殺気を感じ、アナログで高速移動した。滝川からもらったメモリー、その中にある戦士の直感だ。

 移動の瞬間、直前にいたところで背広姿の首がすっ飛ぶのが見えた。ワープしたバスケ通りでも台車を押している宅配が二メートルほどの高さに血を吹き出した。首のない宅配スタッフの周囲で悲鳴が上がる。

 キャーー!

 友子は反射的に制服をバトルスーツに変換した!

 0・5秒で敵の位置が分かった。

 交番の前で、スマホを見ながら歩いているフェリペの女生徒が、それであると知れた。右手のスマホがパルスブレイド。使用後の55度の余熱が感知できた。

 シュバ!

 友子は躊躇せずに、パルス弾を撃った。敵はスマホを見ながら一瞬驚いた顔になったが、次の瞬間、パルス弾の直撃で、第五世代の義体は、血しぶきと生体の断片や肉片、金属パーツをまき散らしてバラバラになった。

 ギョエエエエ!

 周囲で、また悲鳴が上がった。並の人間には、自爆にしか見えないだろう。敵は、わざと通常のパルス弾を使っている。あいつらは義体専用のパルス砲を持っているはずなのに……!

 お母さん、まだ四体いる!

 栞がワ-プしてきて、耳元で囁いた。瞬間パルス弾の気配。栞はワープで、友子はアナログの高速移動で一体の義体の後ろに回り込んだ。義体はこのあたりの女子大生に擬態し、パルス弾発射直後に前方にシールドを張っていた。

「アナログの高速移動は分からないようねっ!」

 シュパ!

 言いながらパルスブレイドで縦に真っ二つにした。一瞬右半身が反応して振り返ろうとしたが、左半身が付いてこず、生体組織と大量の血液を吹きだして倒れた。次の瞬間には、三方からパルス弾が飛んできた。側にいた通行人三人が、友子の代わりに弾を受けてバラバラになった。

「卑怯者! 一般人を巻き込んで!」

 高速移動しながら友子は悔しくなった。高速移動で、姿をくらませるのは二秒が限界だった。二秒後には、居場所が突き止められ、パルス弾が飛んできて、その都度通行人が犠牲になる。

 高速移動に乱数は使っていない。使えば、すぐに読まれて攻撃されることは学校の屋上の戦いで分かっている。

――栞、ワープは直ぐに読まれる。乱数無しの高速移動で!――

 滝川からもらったメモリーのお陰だろう。友子は、人にも物にもぶつからずに移動できるが、栞は無理なようで、主に建物の陰や屋上を使って移動している。

 二度目にすれ違ったとき、栞の右腕は無かった。

 三体目を倒したとき、友子はおかしいと感じた。

 もう、敵の残りは一体のはずなのに、攻撃の密度が変わらない。この一帯には、友子達が逃げられないようにバリアーが張ってあるので、敵も新戦力の投入は出来ないはずだ。

――お母さん、こいつら、50秒で復活する!――

――栞、冷静になって。生体を破壊しても、こいつらは破壊されたことにはならない。電脳が生きている限り、リペアしてしまうんだ――

――ど、どうしたら、キャー!――

――栞、どうした!?――

――足がぁ!――

 友子は0・1秒遅らせて、栞の前に出た。櫻女学園のナリをした義体が栞にトドメを刺そうとしていた。友子の反撃を予想して、背中と側面にはバリアーを張っていたが、パルス砲を撃つために前はがら空きだった。

 ジュバ!

 パルス弾で破壊したあと、そいつの電脳を探した……0・4秒で発見した。

――くそ、足の踵にあったんだ!――

 一撃で電脳を破壊したが、クラッシュの寸前に信号を発していた。

 直感だった。

 信号を受信し、ほんの一瞬信号を送ってきた義体を高速移動で追いつめた。さすがに歴戦の義体たちのメモリーだ、30秒で追いつめ、バリアーが張れないように敵を抱きしめ、パルス砲の右手を捻り、しっかりと右足の踵をぶち抜いた。神楽坂高校の女生徒に擬態していた義体はぐったりとなって、動かなくなった。

――こいつが、司令義体だったんだ――

 残り3体を破壊しようとして、移動しかけた刹那に体が反応する。横様に飛び、死んだふりをしていた義体の踵をパルス弾で破壊した。が、まだ動いている――旧式?――頭を吹き飛ばすと動かなくたった。直後、右頬をパルス弾がかすめた。司令義体の電脳が直前に発した指令で、ちぎれた右腕がパルス弾を撃ったのだ。

 あとの三体は、第四世代に司令義体による遠隔再生機能をつけただけの改良型だったので、司令義体を破壊したあとは、容易く破壊できた。

 栞の手と足の再生を手伝い終わったころに、救急車とパトカーが何台もやってきた。



 渋谷早朝無差別テロ!



 マスコミは報じた。犠牲者は33人。そのうち身元が判明したのは12人。残りは義体である。判明のしようがない。

 その身元不明の遺体のDNA鑑定に入る前に、遺体は20%の金属部品と共に消えてしまった。


 今度は、こちらから仕掛けなければと決心する友子であった。



☆彡 主な登場人物

鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎        友子の弟で父親
鈴木 春奈        一郎の妻
鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛  聡        クラスの委員長
王  梨香        クラスメート
長峰 純子        クラスメート
麻子           クラスメート
妙子           クラスメート 演劇部
水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士
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