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52『友子の夏休み 軽井沢・4』

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RE・友子パラドクス

52『友子の夏休み 軽井沢・4』 




 バニラエッセンズがやってくることになった!


 バニラエッセンズとは、この春まで東京ドームの横っちょでヘブンアーティスト(東京都が発行している路上アーティストの許可書)で、ディユオをやっていたコンビ。そこに、わが乃木坂学院に長年住み着いていた幽霊の水島君が、宇宙人マイの戦争のお手伝いしたお礼に、かわいいアテンダントの義体をもらって女子高生として、この世に復活。そして、このデュオが気に入って仲間入り。名前もバニラからバニラエッセンズと改名、いまでは「いきものがかり」にならぶ男女混成ユニットとして有名になってきた。

 で、水島……いや、清水結衣の夏休みとして、ボーカルの結衣が友だちの夏休みにお邪魔するという企画が急に決まったのだ。



「お早うございます!」



 にこやかにやってきた結衣の後ろには、メンバーの岩崎と西川、そして画面には映らないが、カメラや音声、スタッフの面々がゾロゾロ。で、その後ろには、軽井沢に避暑に来ている老若男女がゾロゾロゾロゾロ……。

 何も聞いていない梨花たちはオロオロ、その能力で、あらかじめ知っていた友子と紀香はオロオロのふりをしながら、スタッフに混じって、場内整理にかかった。で、この際、社会的なマナーを身につけさせてやろうと竹内興産のセガレグループも呼んでやったのだ。

 最初は結衣を中心にして、デビュー前の思い出、乃木坂駅前のパンケーキ屋さんの話なんかに花が咲き、なぜか用意されていたパンケーキをみんなで食べ、ヘブンリーアーティスト時代の苦労話。そんな中、毎日岩崎と西川の演奏を聞きに来た結衣との運命的な出会い。それぞれの学校時代、結衣は、まだ現役の女子高生だけど、そんな話に発展し、この軽井沢がジョンレノンにゆかりの地であることに話題が移った。



「それでは」



 ということで、バニラエッセンズが即興でビートルズやジョンレノンの曲にチャレンジしてみせるという、まるでアドリブのような構成台本通りに進んだ。

 結衣には、もう幽霊時代の記憶はない。三月前以前の記憶は作られたものだが、それだけに美しかった。

 宇宙人マイが作った結衣の経歴はドラマチックであった。

 中学のころは新聞配達のバイトで母子家庭の家計を助け、高校授業料無償化のおかげで、思いもかけず乃木坂学院に入学。気後れから、なかなか友だちが出来ず、ようやく友だちになってくれたのが、この軽井沢に来ている友子たち、そして生まれもった音楽の才能を開かせてくれたバニラの二人。

 友子は気づいていた。

 プロダクションは、あたかも偶然のように見せかけて、次のアルバムでジョンレノンの曲をカバーさせようと狙っていること。そして、結衣が自然にジョンレノンやビートルズに触発されるように演出していることも。

 少し手の込んだヤラセなのだが、友子も結衣には自然な跳躍になると、進んで協力した。

 竹内興産のセガレグループを運転手と案内人に仕立て、紳士的に軽井沢を案内させた。

 そして、これは予想外だったけど、メンバーの西川君が、雰囲気にイマジネーションをうけ、『軽井沢の思い出』という曲を休憩時間に創ってしまった。まだ、詩はできていなかったので、結衣はスキャットで合わせて、もう、それがジョンレノンへのオマージュになっていた。

「良い曲だなあ……( ノД`)(゚´Д`゚)(*´□`*。)」

 竹内興産のセガレグループは本当に感動の涙を流し、昨日まで、あんなに嫌がっていた純子たちもホロリときた。



――うまくいった……けど、ちょっと面白くないぞ。思わないかい、友子ぉ?――

――うん、美談すぎぃ――

――美しすぎる思い出はからだにわるいぞ――

――毒だよねえ――

――じゃあ、もう一つ夏の思い出つくってやるかぁ――

――とびきり楽しい思い出をね――



 ウシシシシシ(*`艸´)( ´艸`)

 

 いいところ持って行かれそうになった友子と紀香はある企みを企てるのであった。



☆彡 主な登場人物

鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎        友子の弟で父親
鈴木 春奈        一郎の妻
鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛  聡        クラスの委員長
王  梨香        クラスメート
長峰 純子        クラスメート
麻子           クラスメート
妙子           クラスメート 演劇部
水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
滝川 修         城南大の学生を名乗る退役義体兵士
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