トモコパラドクス

武者走走九郎or大橋むつお

文字の大きさ
上 下
44 / 87

44『東京異常気象・3』

しおりを挟む
RE・友子パラドクス

44『東京異常気象・3』 




 美麗は大使館の機密電信室に入るまで異常には気づかなかった。

 自分のあとについて入ってきたのが仲間の秀麗だったからである。



「美麗、収穫があったみたいね」

「そんなふうに見える? 残念ながら坊主よ、アリバイの定時報告をするだけ」

 そう言って、美麗はUSBをパソコンにかけ、気乗り薄にキーをいくつか叩いた。

「暗号化して、圧縮……」

「いつもやってることでしょ」

「左手で隠したけど、F3ボタンを押したでしょ。それは最高機密専用の変数ボタン……だわよね」

「フフ、秀麗って見かけほどバカじゃないのね」

「そうよ、美麗が谷口三佐から受け取ったのは『あかぎ』のスペックとイージス艦の配置計画でしょ」

「……そんなの知らないわ」

「エンターキーは押すんじゃないわよ。それには、とんでもないウィルスが付いてる。我が国の国防、外交に関するデータが、全部オシャカになるわ」

「やっかまないでよ、自分のノルマが果たせないからって」

 カシャ

「……あ~あ、押しちゃった。親友としての忠告だったのにぃ」

「だから、定時連絡と、アリバイのカスみたいな情報だって」

「カスを入力して、コンピューターが、そんな反応するかしら?」

 電信室の全てのモニターのスイッチが入り、大使館がこれまで営々として集めてきた機密情報が、現れては、すごい早さで消去されていった。

「こ、これは……(;゚Д゚)」

「だから言ったでしょ、全部オシャカになるって。同じことが、軍や外交部のコンピューターでもおこっている」

 カシャカシャ!

 美麗は慌てて強制終了のボタンを押した。

「あ……バカだなぁ。それ押すと消去したデータが、日本の防衛省とアメリカのペンタゴンと、世界中のプレイステーションに送られたわよ」

「こんなこと……(๑ºдº๑)」

「仲間の忠告を聞かないからよ」

「秀麗、あんた……(꒪ꇴ꒪ ; )」

「日本の公安なめんじゃないわよ」

 秀麗は、顔のゴムマスクを取った。そこには、美麗と同じ顔があった。

「くそ!」

 美麗は、ルージュ形のピストルの引き金を引き、もう一人の美麗の心臓を貫いた……が、効果は無かった。

 もう一人の美麗は胸から弾をほじくり出すと、指で弾を弾いた。弾は美麗のブラジャーの右のストラップを切った。

 銃声でアラームが鳴り、武装した警備員が機密電信室に向かった。

「なにをしている!? 銃を捨てて出てこい!!」

 警備課長が怒鳴った。

「待って、出て行くから撃たないで」

 電信室からルージュ形のピストルが放り出され、美麗が出てきた…………次々と!

「ドアを閉めろ!」

 警備課長が、怒鳴ったときには、美麗は100人になっていた。そして、大使館内部の部屋からも次々に美麗が飛び出し、その数は1000人を超え、一斉に正面ゲートに殺到した。ゲ-トは、すぐに閉じられたが、大使館のゲートは、左右のフェンスごと倒された。

 そう、1000人の美麗は友子の義体が変身しテレポートしたもので、大使館を出ると四方に散っていった。



「リアル美麗さんは、どうした?」

 大使館向かいのビルの屋上で紀香が聞いた。

「アメリカ大使館。メイクで人相変えてるから、しばらくは分からない」

「しばらくって?」

「アメリカへの亡命が済むまでぐらい」

 友子が仮想インタフェイスを出すと、C国大使館のパニックの映像が流れていた。

「こいつを、なんとかしなきゃね」

「じゃ、こんなもんで……」

 シャララ~ン……

 陽炎のようなエフェクト付きで散った美麗たちが消えた。



 政府もマスコミも一連の事件を、むりやり、ここのところの異常気象のせいにした……。



☆彡 主な登場人物

鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎        友子の弟で父親
鈴木 春奈        一郎の妻
鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛  聡        クラスの委員長
王  梨香        クラスメート
長峰 純子        クラスメート
麻子           クラスメート
妙子           クラスメート 演劇部
水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

銀河太平記

武者走走九郎or大橋むつお
SF
 いまから二百年の未来。  前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。  その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。  折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。  火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。

モニターに応募したら、系外惑星に来てしまった。~どうせ地球には帰れないし、ロボ娘と猫耳魔法少女を連れて、惑星侵略を企む帝国軍と戦います。

津嶋朋靖(つしまともやす)
SF
近未来、物体の原子レベルまでの三次元構造を読みとるスキャナーが開発された。 とある企業で、そのスキャナーを使って人間の三次元データを集めるプロジェクトがスタートする。 主人公、北村海斗は、高額の報酬につられてデータを取るモニターに応募した。 スキャナーの中に入れられた海斗は、いつの間にか眠ってしまう。 そして、目が覚めた時、彼は見知らぬ世界にいたのだ。 いったい、寝ている間に何が起きたのか? 彼の前に現れたメイド姿のアンドロイドから、驚愕の事実を聞かされる。 ここは、二百年後の太陽系外の地球類似惑星。 そして、海斗は海斗であって海斗ではない。 二百年前にスキャナーで読み取られたデータを元に、三次元プリンターで作られたコピー人間だったのだ。 この惑星で生きていかざるを得なくなった海斗は、次第にこの惑星での争いに巻き込まれていく。 (この作品は小説家になろうとマグネットにも投稿してます)

日本が危機に?第二次日露戦争

歴史・時代
2023年2月24日ロシアのウクライナ侵攻の開始から一年たった。その日ロシアの極東地域で大きな動きがあった。それはロシア海軍太平洋艦隊が黒海艦隊の援助のために主力を引き連れてウラジオストクを離れた。それと同時に日本とアメリカを牽制する為にロシアは3つの種類の新しい極超音速ミサイルの発射実験を行った。そこで事故が起きた。それはこの事故によって発生した戦争の物語である。ただし3発も間違えた方向に飛ぶのは故意だと思われた。実際には事故だったがそもそも飛ばす場所をセッティングした将校は日本に向けて飛ばすようにセッティングをわざとしていた。これは太平洋艦隊の司令官の命令だ。司令官は黒海艦隊を支援するのが不服でこれを企んだのだ。ただ実際に戦争をするとは考えていなかったし過激な思想を持っていた為普通に海の上を進んでいた。 なろう、カクヨムでも連載しています。

【フリー台本】朗読小説

桜来
現代文学
朗読台本としてご使用いただける短編小説等です 一話完結 詰め合わせ的な内容になってます。 動画投稿や配信などで使っていただけると嬉しく思います。 ご報告、リンクなどは任意ですが、作者名表記はお願いいたします。 無断転載 自作発言等は禁止とさせていただきます。 よろしくお願いいたします。

銀河戦国記ノヴァルナ 第1章:天駆ける風雲児

潮崎 晶
SF
数多の星大名が覇権を目指し、群雄割拠する混迷のシグシーマ銀河系。 その中で、宙域国家オ・ワーリに生まれたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、何を思い、何を掴み取る事が出来るのか。 日本の戦国時代をベースにした、架空の銀河が舞台の、宇宙艦隊やら、人型機動兵器やらの宇宙戦記SF、いわゆるスペースオペラです。 主人公は織田信長をモデルにし、その生涯を独自設定でアレンジして、オリジナルストーリーを加えてみました。 史実では男性だったキャラが女性になってたり、世代も改変してたり、そのうえ理系知識が苦手な筆者の書いた適当な作品ですので、歴史的・科学的に真面目なご指摘は勘弁いただいて(笑)、軽い気持ちで読んでやって下さい。 大事なのは勢いとノリ!あと読者さんの脳内補完!(笑) ※本作品は他サイト様にても公開させて頂いております。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

処理中です...