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42『東京異常気象・1』
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RE・友子パラドクス
42『東京異常気象・1』
30年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺されたが、これに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは30年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」 友子は16歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された。娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。
東京は、もう10日連続の真夏日で、学者や評論家たちが、地球温暖化のせいだと騒いでいる。
温暖化がガセだというのは、未来を知っている友子にはフンってなもんだが、それを信じ込んでいる現代人には深刻だ。クールビズはダサイので下火気味だが、冷感繊維を利用した衣類は今年のヒット商品になってきた。
残念ながら、乃木坂の制服は、そういう繊維でできていないので、学校に着くころにはアセビチャで、朝の教室は、耐汗スプレーや、抗菌スプレー、それに汗などものともしない男どもの臭いが混ざって一種異様な臭いがする。
友子も紀香も義体なので、汗をかかないでおこうと思えばできるのだが、自然さを装うためにも人並みの汗はかかなければならない。先日の『ベターハーフ事件』では、うっかり汗も忘れていた友子だったが、あれから、16歳の女子高生に相応しい汗をかくようにプログラムしなおした。
しかし、それが問題だった。
汗というのは適度なフェロモンが含まれていて、地下鉄の中などでは、異常接近になり、男どものイヤラシイ欲望を刺激してしまう。
友子は、なるべく普通にふるまっているので、地下鉄でも必要が無くてもつり革に掴まっている。当然脇の下は無防備になり、合成フェロモンをまき散らしっぱなしである。また、見た目には、ごく清楚な女子高生にできていて、とても10万馬力の義体には見えない。
……気づくと、お尻と右の胸を触られていた。
お尻は大学生のニイチャン。胸は新聞で巧妙に手を隠した公務員風のオッサン。二人とも顔はあさっての方角を向いている。
大学生のニイチャンは、彼女に振られた腹いせが原因であることが分かったが、その後ろのサラリーマンのオッサンが――うまいことやりやがって――と、羨望の目で目撃しているので、放ってはおけない。
方や、公務員風のオッサンは、どうやらプロで、この混雑の中、友子の足の間に膝を割り込ませてきた。
グニ! グチャ!
同時に悲劇的な音がした。
「痴漢です! 警察呼んでください!」
友子は両手でニイチャンとオッサンの手をひねりあげ、股でオッサンの膝を締め付けたのだ。
ちょっとやりすぎた……ニイチャンとオッサンは手首を骨折、オッサンは膝の骨にヒビが入った。
「オッサン、よく、こんな痛む脚で……よっぽどのスケベだな」
「違う! こいつが凄い力で、オレの脚挟みやがって、イテテテ……」
「それにしても、お嬢ちゃん偉かったねえ!」
「わ、わたし、怖くて怖くて、でも、女性の敵だと思って一生懸命で(#'∀'#)」
友子は、顔を赤くして、涙さえうかべてみせた。
「でも、大した度胸! 大した力だったよ!」
駆けつけたお巡りさんが、あまりに褒め称えるので、つい言ってしまった。
「はあ、合気道を少々やっていたものですから……」
「ほう、自分もやっておるのですが、どこの流派で?」
友子は、お巡りさんの心に浮かんだ流派を、そのまま口にした。
「はい……青芝流を」
「奇遇だ、自分と同じだ!」
「あ、わたしは本を読んで、ほんの真似事で……(^_^;)」
この遣り取りが新聞に載り、SNSにも流れ、テレビでも放送したので、その影響は凄かった。
絶滅寸前だった青芝流は入門者が引きも切らず。絶版になっていた『青芝流合気道入門』は大増刷になった。
乃木坂の女生徒は被害者も多かったので、わざわざ全校集会が開かれ、理事長表彰を受けただけでなく、痴漢撃退の講師までやらされた。
「あ、その……わたしが掴まえられたのは、たまたまですが。犯人の手を掴まえること、それが無理なら『通報してください!』とか『警察を呼んでください!』と叫ぶことが大事です。『助けて下さい』では、一瞬意味が分からず、取り逃がすことがあります。乃木坂学院からこれ以上の犠牲者を出さないためにも、がんばりましょう!」
パチパチパチパチパチパチ
みんなが拍手をする中、紀香一人が笑いを堪えていた。
そして、この「警察呼んでください!」が、とんでもない事件を引き起こすのだった……。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
鈴木 栞 未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
42『東京異常気象・1』
30年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺されたが、これに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは30年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」 友子は16歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された。娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。
東京は、もう10日連続の真夏日で、学者や評論家たちが、地球温暖化のせいだと騒いでいる。
温暖化がガセだというのは、未来を知っている友子にはフンってなもんだが、それを信じ込んでいる現代人には深刻だ。クールビズはダサイので下火気味だが、冷感繊維を利用した衣類は今年のヒット商品になってきた。
残念ながら、乃木坂の制服は、そういう繊維でできていないので、学校に着くころにはアセビチャで、朝の教室は、耐汗スプレーや、抗菌スプレー、それに汗などものともしない男どもの臭いが混ざって一種異様な臭いがする。
友子も紀香も義体なので、汗をかかないでおこうと思えばできるのだが、自然さを装うためにも人並みの汗はかかなければならない。先日の『ベターハーフ事件』では、うっかり汗も忘れていた友子だったが、あれから、16歳の女子高生に相応しい汗をかくようにプログラムしなおした。
しかし、それが問題だった。
汗というのは適度なフェロモンが含まれていて、地下鉄の中などでは、異常接近になり、男どものイヤラシイ欲望を刺激してしまう。
友子は、なるべく普通にふるまっているので、地下鉄でも必要が無くてもつり革に掴まっている。当然脇の下は無防備になり、合成フェロモンをまき散らしっぱなしである。また、見た目には、ごく清楚な女子高生にできていて、とても10万馬力の義体には見えない。
……気づくと、お尻と右の胸を触られていた。
お尻は大学生のニイチャン。胸は新聞で巧妙に手を隠した公務員風のオッサン。二人とも顔はあさっての方角を向いている。
大学生のニイチャンは、彼女に振られた腹いせが原因であることが分かったが、その後ろのサラリーマンのオッサンが――うまいことやりやがって――と、羨望の目で目撃しているので、放ってはおけない。
方や、公務員風のオッサンは、どうやらプロで、この混雑の中、友子の足の間に膝を割り込ませてきた。
グニ! グチャ!
同時に悲劇的な音がした。
「痴漢です! 警察呼んでください!」
友子は両手でニイチャンとオッサンの手をひねりあげ、股でオッサンの膝を締め付けたのだ。
ちょっとやりすぎた……ニイチャンとオッサンは手首を骨折、オッサンは膝の骨にヒビが入った。
「オッサン、よく、こんな痛む脚で……よっぽどのスケベだな」
「違う! こいつが凄い力で、オレの脚挟みやがって、イテテテ……」
「それにしても、お嬢ちゃん偉かったねえ!」
「わ、わたし、怖くて怖くて、でも、女性の敵だと思って一生懸命で(#'∀'#)」
友子は、顔を赤くして、涙さえうかべてみせた。
「でも、大した度胸! 大した力だったよ!」
駆けつけたお巡りさんが、あまりに褒め称えるので、つい言ってしまった。
「はあ、合気道を少々やっていたものですから……」
「ほう、自分もやっておるのですが、どこの流派で?」
友子は、お巡りさんの心に浮かんだ流派を、そのまま口にした。
「はい……青芝流を」
「奇遇だ、自分と同じだ!」
「あ、わたしは本を読んで、ほんの真似事で……(^_^;)」
この遣り取りが新聞に載り、SNSにも流れ、テレビでも放送したので、その影響は凄かった。
絶滅寸前だった青芝流は入門者が引きも切らず。絶版になっていた『青芝流合気道入門』は大増刷になった。
乃木坂の女生徒は被害者も多かったので、わざわざ全校集会が開かれ、理事長表彰を受けただけでなく、痴漢撃退の講師までやらされた。
「あ、その……わたしが掴まえられたのは、たまたまですが。犯人の手を掴まえること、それが無理なら『通報してください!』とか『警察を呼んでください!』と叫ぶことが大事です。『助けて下さい』では、一瞬意味が分からず、取り逃がすことがあります。乃木坂学院からこれ以上の犠牲者を出さないためにも、がんばりましょう!」
パチパチパチパチパチパチ
みんなが拍手をする中、紀香一人が笑いを堪えていた。
そして、この「警察呼んでください!」が、とんでもない事件を引き起こすのだった……。
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