トモコパラドクス

武者走走九郎or大橋むつお

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37『50年後 友子の決着・2』

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RE・友子パラドクス

37『50年後 友子の決着・2』 




「よし、確認できた……友子を破壊しろ」

 長官が静かに命じた……。

「はい、ただちに破壊します('◇')ゞ」

 栞が応えると、栞の二体の義体の瞳がブラウンから赤に変わり始めた。ショートの準備が始まったサインである。



「待て、今の復唱には目的語が欠け……」



 長官の秘書は、そこまで言うとフリーズしてして、同時にラボの動力が全て落ちてしまった。

「こ、これは、どういうことだ……(;'∀')!?」

 長官はうろたえて、オロオロするばかりだ。

「もう少し優秀な秘書を配置すべきですね、長官」

 その声は、もう栞ではなかった。二体の義体も、元の友子の姿に戻っていた。そしてストレッチャーの上の友子は栞の姿に……。

「命令承伏順位は長官を優先にしてあります、長官のご指示通りです。だから、アナライズもすんなり通れました」

「じゃ、どうして……」

「この子たちは『友子』という言葉と『ラボ』という言葉を入れ替えてあります」

「なんだと!」

「もう主電脳は機能しません」

「く、くそ!」

 長官は、ラボの出口に向かったが、戦術核にも耐えるドアはビクともしない。

「長官とC国との不適切な関係は、ラボの電脳から、マスメディアはもちろんネットにも流れています。海外逃亡もできません。カビの生えかけた友子クライシスに火を付け、C国は内政の安泰を図り、長官は次の総裁選挙に勝利する。そういうシナリオでしたよね」

「シ、シリアルは、どうコピーした?」

「もう一万倍拡大してみましょう。むろんこのラボでは、そこまでの拡大解析はできないから、わたしのCPUを使います」

 モニターが点き、一万倍でシリアルの部分が映し出された。

「オオー(゚д゚)!?」

 一目瞭然だった。本物のシリアルは一本一本のバーが、無数の友子の顔でできており、その一つ一つが、怒ったり笑ったり、常に変化している。そしてその変化は特急の乱数で管理されていて、この二十一世紀の技術では解析不能だった。

「これで、友子クライシスは、過去の遺物になるというわけか……」

「わたしたちを、こんな義体にしておいて……当面は落ち着くでしょうけど友子クライシスは、まだ続くでしょう。C国や日本のエライ人たちがまだ必要としているから。でも、長官のように荒事にする人はいなくなる。当分は緊張を保ちつつつも平和になるでしょう」



「お母さん、ありがとう……」



 長官を乗せたパトカーが去りゆくのを見ながら、栞が友子の顔を見た。

「これで、栞の任務も形式的なものになるわ。よかったね、マインドコントロールも解けて」

「この現実を見れば、自然に解けるわ……お母さん」

「ん……なに?」

 栞は、夕陽に向かってそっぽを向き、不器用に言った。

「……生んでくれて、ありがとう」

「……よしよし。でも、一つ注文」

「え、なに?」

「お母さんてのは止してくれないかな。お互い、見かけも感受性も16歳なんだからさ」

「そうね……じゃ、ト、トモ…………」

「ん……?」



「トモさん(⁄ ⁄>⁄△⁄<⁄ ⁄)!」



「トモさん( ̄ロ ̄lll)!?」



 友子はガックリしたが、顔を上げると笑い出し、やがて二人は十六歳の少女らしい爆笑になった……。



☆彡 主な登場人物

鈴木 友子        30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎        友子の弟で父親
鈴木 春奈        一郎の妻
鈴木  栞        未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香        2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛  聡        クラスの委員長
王  梨香        クラスメート
長峰 純子        クラスメート
麻子           クラスメート
妙子           クラスメート 演劇部
水島 昭二        談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
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