36 / 87
36『50年後 友子の決着・1』
しおりを挟む
RE・友子パラドクス
36『50年後 友子の決着・1』
ズゥイーーーーーン
2トンもある隔壁の扉が開いた、50年タイムリープした栞の時代のラボの扉が。
1メガトンの戦術核にも耐えられる特殊部隊のラボは黒部峡谷の近く、人を寄せ付けぬ岩山の中にある。その存在は防衛省の数人しか把握しておらず、総理でさえ五年以上在職した者にしか伝えられていない。
「母を捕獲しました。安全のため全ての動力をダウンし、僅かでも電脳が起動の兆しを見せたら、即破壊されるようにしてあります」
栞は無表情に答えた。
このラボでは、感情を交えたコミニケーションは禁止されている。長官は、無機質に聞いた。
「この二体の君の義体は?」
「ご覧のように、母にプラグインして、万一の場合は、自分の動力とショートさせ、身をもって安全を確保するようにしてあります」
「栞らしい念の入れようだな。しかし、こいつは本当にオリジナルなんだろうな?」
「戦闘詳報は、ダイレクトで送らせていただきましたが」
「たしかに、君と義体二体で友子を捕獲し、フリーズさせた上で動力をダウンさせたところは確認している。しかし、こいつがオリジナルであることは、状況証拠しかないからな」
「しかし、このラボに入るときに、我々も含めてアナライズされたと承知していますが」
「栞と、その義体はな。しかし友子は違う。なんせ、こいつを作ったのはミームの連中だ。詳しいスペックも、シリアルも確認できていない」
「我々のメモリーの確認だけではいけませんか?」
「君のメモリーには主観が入っている。こいつがオリジナル友子であるという」
「では、どのようにして確認を?」
「八十年前、人間だったころの友子を争奪しようとしたことがあるだろう」
「はい、ミームの工作員は始末。母は、瀕死の重傷で、それが義体化のきっかけになったと承知しております」
「そのとき、破壊された工作員の電脳から、一部だけだが、義体の情報を抜き出せた」
この情報は、栞は知らなかった。
長官から得ていた情報にはフィルターがかけられていたようだ。
「これを見たまえ」
長官のガード兼秘書が、モニターに、あるものを写した。
「これは……」
「友子のシリアルだ。3Dのホログラムになっている。我々の技術でもできない高度なものだ。この友子の義体に宇宙人のテクノロジーが使われているのは間違いない」
「まさか、母のシリアルと照合しようと!?」
「ああ、それが一番確実だからな」
「いけません。そのためには母の電脳の一部を起動させなくてはなりません。何が起こるか分かりません。危険すぎます!」
「多少のリスクを冒しても、確認はしなくてはな。おい」
長官は、直接栞の合成義体に命じた。
「はい、10秒お待ち下さい。安全性の確認を行った上で実施します」
「これで、君たちが本物であることも確認できる。オリジナルの君を含め、栞の義体は俺には反抗できないからな」
「安全性の確認ができました」
「ようし、シリアルを出せ」
モニターに資料とそっくりなシリアルが映し出され、ラボのコンピューターも百パーセント本物であることを証明した。
「よし、確認できた。友子を破壊しろ」
シートに深く座りなおすと、長官は自慢の長い脚を組みなおして静かに命じた。
「……某ロボットアニメの12回目に似たようなシーンがありました」
「12回目……フフフ、最終回だな」
めずらしく短い感想が交わされて、友子は、その最後を迎えようとした。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
鈴木 栞 未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
36『50年後 友子の決着・1』
ズゥイーーーーーン
2トンもある隔壁の扉が開いた、50年タイムリープした栞の時代のラボの扉が。
1メガトンの戦術核にも耐えられる特殊部隊のラボは黒部峡谷の近く、人を寄せ付けぬ岩山の中にある。その存在は防衛省の数人しか把握しておらず、総理でさえ五年以上在職した者にしか伝えられていない。
「母を捕獲しました。安全のため全ての動力をダウンし、僅かでも電脳が起動の兆しを見せたら、即破壊されるようにしてあります」
栞は無表情に答えた。
このラボでは、感情を交えたコミニケーションは禁止されている。長官は、無機質に聞いた。
「この二体の君の義体は?」
「ご覧のように、母にプラグインして、万一の場合は、自分の動力とショートさせ、身をもって安全を確保するようにしてあります」
「栞らしい念の入れようだな。しかし、こいつは本当にオリジナルなんだろうな?」
「戦闘詳報は、ダイレクトで送らせていただきましたが」
「たしかに、君と義体二体で友子を捕獲し、フリーズさせた上で動力をダウンさせたところは確認している。しかし、こいつがオリジナルであることは、状況証拠しかないからな」
「しかし、このラボに入るときに、我々も含めてアナライズされたと承知していますが」
「栞と、その義体はな。しかし友子は違う。なんせ、こいつを作ったのはミームの連中だ。詳しいスペックも、シリアルも確認できていない」
「我々のメモリーの確認だけではいけませんか?」
「君のメモリーには主観が入っている。こいつがオリジナル友子であるという」
「では、どのようにして確認を?」
「八十年前、人間だったころの友子を争奪しようとしたことがあるだろう」
「はい、ミームの工作員は始末。母は、瀕死の重傷で、それが義体化のきっかけになったと承知しております」
「そのとき、破壊された工作員の電脳から、一部だけだが、義体の情報を抜き出せた」
この情報は、栞は知らなかった。
長官から得ていた情報にはフィルターがかけられていたようだ。
「これを見たまえ」
長官のガード兼秘書が、モニターに、あるものを写した。
「これは……」
「友子のシリアルだ。3Dのホログラムになっている。我々の技術でもできない高度なものだ。この友子の義体に宇宙人のテクノロジーが使われているのは間違いない」
「まさか、母のシリアルと照合しようと!?」
「ああ、それが一番確実だからな」
「いけません。そのためには母の電脳の一部を起動させなくてはなりません。何が起こるか分かりません。危険すぎます!」
「多少のリスクを冒しても、確認はしなくてはな。おい」
長官は、直接栞の合成義体に命じた。
「はい、10秒お待ち下さい。安全性の確認を行った上で実施します」
「これで、君たちが本物であることも確認できる。オリジナルの君を含め、栞の義体は俺には反抗できないからな」
「安全性の確認ができました」
「ようし、シリアルを出せ」
モニターに資料とそっくりなシリアルが映し出され、ラボのコンピューターも百パーセント本物であることを証明した。
「よし、確認できた。友子を破壊しろ」
シートに深く座りなおすと、長官は自慢の長い脚を組みなおして静かに命じた。
「……某ロボットアニメの12回目に似たようなシーンがありました」
「12回目……フフフ、最終回だな」
めずらしく短い感想が交わされて、友子は、その最後を迎えようとした。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
鈴木 栞 未来からやってきて友子の命を狙う友子の娘
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
銀河太平記
武者走走九郎or大橋むつお
SF
いまから二百年の未来。
前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。
その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。
折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。
火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。
シンクの卵
名前も知らない兵士
児童書・童話
小学五年生で文房具好きの桜井春は、小学生ながら秘密組織を結成している。
メンバーは四人。秘密のアダ名を使うことを義務とする。六年生の閣下、同級生のアンテナ、下級生のキキ、そして桜井春ことパルコだ。
ある日、パルコは死んだ父親から手紙をもらう。
手紙の中には、銀貨一枚と黒いカードが入れられており、カードには暗号が書かれていた。
その暗号は市境にある廃工場の場所を示していた。
とある夜、忍び込むことを計画した四人は、集合場所で出くわしたファーブルもメンバーに入れて、五人で廃工場に侵入する。
廃工場の一番奥の一室に、誰もいないはずなのにランプが灯る「世界を変えるための不必要の部屋」を発見する五人。
そこには古い机と椅子、それに大きな本とインクが入った卵型の瓶があった。
エポックメイキング。
その本に万年筆で署名して、正式な秘密組織を発足させることを思いつくパルコ。
その本は「シンクの卵」と呼ばれ、書いたことが現実になる本だった。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

超能力者の私生活
盛り塩
SF
超能力少女達の異能力バトル物語。ギャグ・グロ注意です。
超能力の暴走によって生まれる怪物『ベヒモス』
過去、これに両親を殺された主人公『宝塚女優』(ヒロインと読む)は、超能力者を集め訓練する国家組織『JPA』(日本神術協会)にスカウトされ、そこで出会った仲間達と供に、宿敵ベヒモスとの戦いや能力の真相について究明していく物語です。
※カクヨムにて先行投降しております。

いつか日本人(ぼく)が地球を救う
多比良栄一
SF
この小説にはある仕掛けがある。
読者はこの物語を読み進めると、この作品自体に仕掛けられた「前代未聞」のアイデアを知ることになる。
それは日本のアニメやマンガへ注がれるオマージュ。
2次創作ではない、ある種の入れ子構造になったメタ・フィクション。
誰もがきいたことがある人物による、誰もみたことがない物語がいま幕を開ける。
すべてのアニメファンに告ぐ!! 。隠された謎を見抜けるか!!。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
25世紀後半 地球を襲った亜獣と呼ばれる怪獣たちに、デミリアンと呼ばれる生命体に搭乗して戦う日本人少年ヤマトタケル。なぜか日本人にしか操縦ができないこの兵器に乗る者には、同時に、人類を滅ぼすと言われる「四解文書」と呼ばれる極秘文書も受け継がされた。
もしこれを人々が知れば、世界は「憤怒」し、「恐怖」し、「絶望」し、そして「発狂」する。
かつてそれを聞いた法皇がショック死したほどの四つの「真理」。
世界でたった一人、人類を救えも、滅ぼしもできる、両方の力を手に入れた日本人少年ヤマトタケル。
彼は、世界100億人全員から、救いを求められ、忌み嫌われ、そして恐れられる存在になった。
だが彼には使命があった。たとえ人類の半分の人々を犠牲にしても残り11体の亜獣を殲滅すること、そして「四解文書」の謎を誰にも知られずに永遠に葬ることだった。


【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる