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33『友子暗殺!?』
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RE・友子パラドクス
33『友子暗殺!?』
ピッシャーーーー!!
閃光が走ったかと思うと友子の体は微塵に粉砕された……!
「ごめんね、お母さん……」
アーマードスーツを着た少女が使い捨ての破動砲を投げ出した。
富士の樹海は広くて深い。直径10メートルのクレーターが出来たが、気づいた者はいないだろう。
「あなた、わたしの娘なの……?」
友子は、そう言って、腕に内蔵された小型破動砲の筒先を少女の背中に当てた。
「え、あ……なんだ、今のはダミーだったのね」
「ダミーじゃかわいそう。あの友子は、わたしの分身だったのよ」
「そっか……ざぁんねん」
そう言うと、少女は自爆装置のスイッチを入れた。
ブシュッ!!
焼け石に水滴を落としたような音がして母子共に蒸発するように消し飛び、クレーターはその直径を倍にした……。
「これ、どう思う?」
昼休み、友子は情報教室に紀香を呼び出して一部始終の話をした。
「分かることは二つ。未来の政府が動いていることと、友子の娘が心が壊れる寸前まで追い込まれていたこと」
「念のため、これを解析してくれる」
友子は、少女が自爆する寸前に、うっかり開いてしまった心からインストールした情報を紀香に転送した。
「う……悲しみでいっぱいだ!」
あまりの悲しみの大きさに、思わず解析を中断した。
「ごめん、この悲しみをダイレクトに感じておかないと、かえって冷静な解析ができないと思って」
紀香は、チラリと友子の顔を見ると自分と情報教室内のコンピューターを繋いで解析を始めた。令和のコンピューターなどおもちゃのようなものなのだが、多少は紀香の負荷を下げるし、強力なエアコンがあるのはこの情報教室しかないのだ。
ブゥゥゥゥン
二重に防壁をかけながらやるので、紀香の体温は90度を超え、ラジエーターがうなりを上げ放熱のため全身の毛が逆立ち、室内の温度上昇を検知したエアコンもフルパワーの運転になった。
「国防大臣のところまで、行き着いた……」
「国防大臣……紀香の時代の?」
「そう」
「でも、あの子は十五六だった。紀香は五十年後の義体……計算が合わなくない?」
「それは後で……『君は、いずれはC国と戦争を起こす。いや……君が自分の存在を消しても、お母さんは別の娘を生み、その子が義体化して、必ず同じことをやる。解決方法は、ただ一つ。過去に行って、お母さん。いや鈴木友子を抹殺することだ』……ん、最後の「抹殺のあたりは、わたしが最初に命ぜられたときのコピーを貼り付けただけだね?」
「コピーの張り付け?」
「……どうやら、大臣はなにかワケありだね。そのままの言葉で言ったら、本心を見抜かれるんで、わたしに命じた時の大臣が、まだ本気で友子の娘が極東戦争を引き起こすと信じていたときのコピーを使ったんだ」
「と、いうことは、やはり、あの子は極東戦争を起こさないのね?」
「うん、それを娘に気づかれないように、わたしの時のコピーを使ったんだ。友子の娘は、初めて聞く言葉だから気づず、友子を抹殺しようと決意した」
「かわいそう……」
「友子が、オリジナルを学校に置いといたから助かったんだね」
「富士の樹海に呼ばれたんで、危ないと思ってね……でも、あの子が、わたしの娘……」
「もうちょい解析……あの子の名前は……栞(しおり)だ」
「栞……わたしには73S106ってコードナンバーしか分からなかった」
「感情はブロックしていたからね。栞……え! なんてこと!?」
「どうかした?」
ビューン!
紀香の体温が限界値の100度を超え、紀香のCPUのシールドが甘くなり、解析された情報がそのまま友子に流れ込んできた。
「ああ……分かっちゃった……?」
しまった、という顔で紀香が言った。
「あの子は、十五歳で極東戦争を予測して、政府が義体化したのね!?」
「そう……お母さんに会えるという誘惑と、同時に抹殺しなきゃならないという使命感を刷り込まれて」
「その後、極東戦争は国の利益にならないと判断して、わたしを三十年前に襲った」
「そして、スナイパーとして、わたしを送り込んだ。わたしも、最初は使命感に燃えていたけどね。いろいろ連絡取り合っているうちに、いい加減なところが分かってきたってわけ。あたしのアナライザー能力が、ここまで自己成長するとは未来の政府も分かってなかったみたい」
「今回は、C国から日本が極東戦争の準備をしてるってインネンつけられて、その対策のために行われた謀略だったのね。それを、あの子は信じ切って……」
友子は拳を握りしめ、机の上には涙がこぼれて、すぐに蒸発した。
キンコーンカンコーン……
「あ、予鈴鳴ってる。あたし教室戻るね、友子みたいに分身の術使えないから」
「わたしも、戻る。分身したら、その数だけ、たくさん悩まなくちゃならないから」
「じゃ、行こうか」
娘との攻防戦が、まだ続くとは思わない友子であった……情報教室の室温は容易には下がらず、不審に思った学校は、業者に電話して緊急のメンテナンスをするほどだった。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊 水島結衣との二重人格 バニラエッセンズボーカル
33『友子暗殺!?』
ピッシャーーーー!!
閃光が走ったかと思うと友子の体は微塵に粉砕された……!
「ごめんね、お母さん……」
アーマードスーツを着た少女が使い捨ての破動砲を投げ出した。
富士の樹海は広くて深い。直径10メートルのクレーターが出来たが、気づいた者はいないだろう。
「あなた、わたしの娘なの……?」
友子は、そう言って、腕に内蔵された小型破動砲の筒先を少女の背中に当てた。
「え、あ……なんだ、今のはダミーだったのね」
「ダミーじゃかわいそう。あの友子は、わたしの分身だったのよ」
「そっか……ざぁんねん」
そう言うと、少女は自爆装置のスイッチを入れた。
ブシュッ!!
焼け石に水滴を落としたような音がして母子共に蒸発するように消し飛び、クレーターはその直径を倍にした……。
「これ、どう思う?」
昼休み、友子は情報教室に紀香を呼び出して一部始終の話をした。
「分かることは二つ。未来の政府が動いていることと、友子の娘が心が壊れる寸前まで追い込まれていたこと」
「念のため、これを解析してくれる」
友子は、少女が自爆する寸前に、うっかり開いてしまった心からインストールした情報を紀香に転送した。
「う……悲しみでいっぱいだ!」
あまりの悲しみの大きさに、思わず解析を中断した。
「ごめん、この悲しみをダイレクトに感じておかないと、かえって冷静な解析ができないと思って」
紀香は、チラリと友子の顔を見ると自分と情報教室内のコンピューターを繋いで解析を始めた。令和のコンピューターなどおもちゃのようなものなのだが、多少は紀香の負荷を下げるし、強力なエアコンがあるのはこの情報教室しかないのだ。
ブゥゥゥゥン
二重に防壁をかけながらやるので、紀香の体温は90度を超え、ラジエーターがうなりを上げ放熱のため全身の毛が逆立ち、室内の温度上昇を検知したエアコンもフルパワーの運転になった。
「国防大臣のところまで、行き着いた……」
「国防大臣……紀香の時代の?」
「そう」
「でも、あの子は十五六だった。紀香は五十年後の義体……計算が合わなくない?」
「それは後で……『君は、いずれはC国と戦争を起こす。いや……君が自分の存在を消しても、お母さんは別の娘を生み、その子が義体化して、必ず同じことをやる。解決方法は、ただ一つ。過去に行って、お母さん。いや鈴木友子を抹殺することだ』……ん、最後の「抹殺のあたりは、わたしが最初に命ぜられたときのコピーを貼り付けただけだね?」
「コピーの張り付け?」
「……どうやら、大臣はなにかワケありだね。そのままの言葉で言ったら、本心を見抜かれるんで、わたしに命じた時の大臣が、まだ本気で友子の娘が極東戦争を引き起こすと信じていたときのコピーを使ったんだ」
「と、いうことは、やはり、あの子は極東戦争を起こさないのね?」
「うん、それを娘に気づかれないように、わたしの時のコピーを使ったんだ。友子の娘は、初めて聞く言葉だから気づず、友子を抹殺しようと決意した」
「かわいそう……」
「友子が、オリジナルを学校に置いといたから助かったんだね」
「富士の樹海に呼ばれたんで、危ないと思ってね……でも、あの子が、わたしの娘……」
「もうちょい解析……あの子の名前は……栞(しおり)だ」
「栞……わたしには73S106ってコードナンバーしか分からなかった」
「感情はブロックしていたからね。栞……え! なんてこと!?」
「どうかした?」
ビューン!
紀香の体温が限界値の100度を超え、紀香のCPUのシールドが甘くなり、解析された情報がそのまま友子に流れ込んできた。
「ああ……分かっちゃった……?」
しまった、という顔で紀香が言った。
「あの子は、十五歳で極東戦争を予測して、政府が義体化したのね!?」
「そう……お母さんに会えるという誘惑と、同時に抹殺しなきゃならないという使命感を刷り込まれて」
「その後、極東戦争は国の利益にならないと判断して、わたしを三十年前に襲った」
「そして、スナイパーとして、わたしを送り込んだ。わたしも、最初は使命感に燃えていたけどね。いろいろ連絡取り合っているうちに、いい加減なところが分かってきたってわけ。あたしのアナライザー能力が、ここまで自己成長するとは未来の政府も分かってなかったみたい」
「今回は、C国から日本が極東戦争の準備をしてるってインネンつけられて、その対策のために行われた謀略だったのね。それを、あの子は信じ切って……」
友子は拳を握りしめ、机の上には涙がこぼれて、すぐに蒸発した。
キンコーンカンコーン……
「あ、予鈴鳴ってる。あたし教室戻るね、友子みたいに分身の術使えないから」
「わたしも、戻る。分身したら、その数だけ、たくさん悩まなくちゃならないから」
「じゃ、行こうか」
娘との攻防戦が、まだ続くとは思わない友子であった……情報教室の室温は容易には下がらず、不審に思った学校は、業者に電話して緊急のメンテナンスをするほどだった。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
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