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23『水島クンのアドベンチャー・2』
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RE・友子パラドクス
23『水島クンのアドベンチャー・2』
海王星近くであいつぐ小爆発! 太陽系辺縁に異変……!?
そんなニュースが世界を駆けめぐった。ただし……扱いは、ほんのコラムではあったが。
今の二十一世紀初頭の科学技術では、海王星の近くまで行って確認することが出来ない。ハッブル宇宙望遠鏡をもってしても、小惑星か隕石の衝突ぐらいにしか見えず、実際、そこから出てくるデータを解析しても、そういう答えしか出てこなかった。
ただ、これまでの観測のデータでは、海王星の近くに、こんな大量の小惑星や、隕石などが確認されていなかったので、世界中の天文学者が騒いだのである。
むろん、このニュースは友子も紀香も知っていた。友子は未来の義体ではあるが未来の出来事に関するデータは入っていないので、他の人類と同じ程度の知識と興味しかない。
紀香のコンピューターには、この情報はあった。
『2023年、海王星付近の未確認連続小爆発』
これに該当するものだと思った。ならばなんの問題もない。
一週間ほどで、この現象は終了するし、地球にはなんの影響もないのだから……。
先週の日曜は、父であり弟である一郎が、新製品開発のツメのため休日出勤。義母の春奈と家中の片づけをやった。片づけたガラクタの中から出てきた友子の昔の写真、その写真で友子が一郎の姉であり義体であることが春奈には分かってしまったが、春奈は、やはり娘として友子を扱ってくれている。一郎にはナイショである。
今日は、一郎も春奈も、新製品のルージュの発表会に、それぞれ開発者と営業担当として休日出勤。従って、今日の友子はホームアロ-ンである。
今日はアキバにでも行って、紀香とAKRのメンバーにでも化けて遊んでみようかと思った。
お気に入りのチュニックを取りだしたところで緊急のメールが直接頭に飛び込んできた。圧縮してあるが、広辞苑二冊分ぐらいの内容があった。そして最後の署名。
――SOS 乃木坂の宇宙人――
あいつだ!
――了解――
そう返信すると、友子はろくに発進地点も確認しないままテレポートした。
え?
気がつくと、そこは宇宙船の中だ。テレポデータを参照すると43億3千万キロを超えている。
地球上のものなら、初めての船の中でも、その全体を掌握し、自在にコントロールすることもできる。しかし、この宇宙船は、そういう点でセキュリティーがきついようで、見えている範囲のことしか分からず、その見えているところも、その構造やスペックまでは分からなかった。
「ごめん、急に呼び出して」
宇宙人が友子と友子の後にいる者に声を掛けた。振り返ると、紀香があさっての方角を向いていたが、驚いて、こちらを見た。ここでは義体同士の相互認識力も人間並みに落ちている。
「あ、ごめん。セキュリティーをかけたままだったわね。一秒間だけ解除する。船に関する情報をインストールして」
頭が一瞬グラリとした。ハンパな情報量ではなく、ショックで後ろの紀香は倒れてしまっている。
「あ、大丈夫?」
「大丈夫、こんな情報量だとは思わなかったんで」
友子は、倒れている紀香に手を貸して起こしてやった。
「じゃ、ブリッジにいきましょう」
「あなた、マネって言うのね」
「あんまり好きな名前じゃないけど、一応、そう呼んで」
「あたしたち、この船コントロールできるようになっちゃったけど、いいの?」
「その必要があるから、そうしたの。さ、ここが……」
ブリッジには、もう一人のマネがいた。
「二人とも、そのマネから離れて、偽者だから!」
もう一人のマネの声に、友子も紀香もプチテレポして離れ、ブリッジの両端に移動した。そして両目のスペシウム光線で、もう一人のマネのコンピューターを直撃した。
ビビビビビビビ!
「ど、どうして……分かったの、完ぺきな義体だったのに……」
偽マネは、苦しい息の中で聞いた。二人は、それに答えず、トドメを刺した。
ジュ!
「ありがとう、助かったわ」
「この子のコンピューターには、パンケーキのレシピが欠けていたから」
「そうでなきゃ、偽者とは分からなかった」
「さっき、セキュリティーを解除したときに進入したのね」
「一秒で……?」
「船体に張り付いていたら、一秒あれば十分。右舷の装甲が破れて、シールドが効かなかったからでしょうね」
「処分するね……」
友子は、偽者の義体を船外十キロの位置までテレポさせると、舷側のパルスレーザー砲を発射した。
ドーーーーーン
原爆並のショックが返ってきた。
「こっちの弾が当たる前に爆発した……自爆装置が付いていたのね」
紀香が、生体組織から冷や汗を流していた。
「やっぱり、あなたたちに来てもらって正解だったわ」
マネも声を震わせ、三人安堵のため息をついた。
ホーーー(*´Д`)
その時左舷後方から一隻の宇宙戦艦が漂流してくるのが分かった。
「宇宙戦艦ヤマト……!?」
「いいえ、あれは宇宙戦艦キイ。ヤマトの拡大発展系……昭二クンが乗っている」
「え?」「談話室の幽霊?」
モニターの映像を拡大する。
ああ……
もし、ここが海なら、キイは沈没寸前の姿であった……。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊
23『水島クンのアドベンチャー・2』
海王星近くであいつぐ小爆発! 太陽系辺縁に異変……!?
そんなニュースが世界を駆けめぐった。ただし……扱いは、ほんのコラムではあったが。
今の二十一世紀初頭の科学技術では、海王星の近くまで行って確認することが出来ない。ハッブル宇宙望遠鏡をもってしても、小惑星か隕石の衝突ぐらいにしか見えず、実際、そこから出てくるデータを解析しても、そういう答えしか出てこなかった。
ただ、これまでの観測のデータでは、海王星の近くに、こんな大量の小惑星や、隕石などが確認されていなかったので、世界中の天文学者が騒いだのである。
むろん、このニュースは友子も紀香も知っていた。友子は未来の義体ではあるが未来の出来事に関するデータは入っていないので、他の人類と同じ程度の知識と興味しかない。
紀香のコンピューターには、この情報はあった。
『2023年、海王星付近の未確認連続小爆発』
これに該当するものだと思った。ならばなんの問題もない。
一週間ほどで、この現象は終了するし、地球にはなんの影響もないのだから……。
先週の日曜は、父であり弟である一郎が、新製品開発のツメのため休日出勤。義母の春奈と家中の片づけをやった。片づけたガラクタの中から出てきた友子の昔の写真、その写真で友子が一郎の姉であり義体であることが春奈には分かってしまったが、春奈は、やはり娘として友子を扱ってくれている。一郎にはナイショである。
今日は、一郎も春奈も、新製品のルージュの発表会に、それぞれ開発者と営業担当として休日出勤。従って、今日の友子はホームアロ-ンである。
今日はアキバにでも行って、紀香とAKRのメンバーにでも化けて遊んでみようかと思った。
お気に入りのチュニックを取りだしたところで緊急のメールが直接頭に飛び込んできた。圧縮してあるが、広辞苑二冊分ぐらいの内容があった。そして最後の署名。
――SOS 乃木坂の宇宙人――
あいつだ!
――了解――
そう返信すると、友子はろくに発進地点も確認しないままテレポートした。
え?
気がつくと、そこは宇宙船の中だ。テレポデータを参照すると43億3千万キロを超えている。
地球上のものなら、初めての船の中でも、その全体を掌握し、自在にコントロールすることもできる。しかし、この宇宙船は、そういう点でセキュリティーがきついようで、見えている範囲のことしか分からず、その見えているところも、その構造やスペックまでは分からなかった。
「ごめん、急に呼び出して」
宇宙人が友子と友子の後にいる者に声を掛けた。振り返ると、紀香があさっての方角を向いていたが、驚いて、こちらを見た。ここでは義体同士の相互認識力も人間並みに落ちている。
「あ、ごめん。セキュリティーをかけたままだったわね。一秒間だけ解除する。船に関する情報をインストールして」
頭が一瞬グラリとした。ハンパな情報量ではなく、ショックで後ろの紀香は倒れてしまっている。
「あ、大丈夫?」
「大丈夫、こんな情報量だとは思わなかったんで」
友子は、倒れている紀香に手を貸して起こしてやった。
「じゃ、ブリッジにいきましょう」
「あなた、マネって言うのね」
「あんまり好きな名前じゃないけど、一応、そう呼んで」
「あたしたち、この船コントロールできるようになっちゃったけど、いいの?」
「その必要があるから、そうしたの。さ、ここが……」
ブリッジには、もう一人のマネがいた。
「二人とも、そのマネから離れて、偽者だから!」
もう一人のマネの声に、友子も紀香もプチテレポして離れ、ブリッジの両端に移動した。そして両目のスペシウム光線で、もう一人のマネのコンピューターを直撃した。
ビビビビビビビ!
「ど、どうして……分かったの、完ぺきな義体だったのに……」
偽マネは、苦しい息の中で聞いた。二人は、それに答えず、トドメを刺した。
ジュ!
「ありがとう、助かったわ」
「この子のコンピューターには、パンケーキのレシピが欠けていたから」
「そうでなきゃ、偽者とは分からなかった」
「さっき、セキュリティーを解除したときに進入したのね」
「一秒で……?」
「船体に張り付いていたら、一秒あれば十分。右舷の装甲が破れて、シールドが効かなかったからでしょうね」
「処分するね……」
友子は、偽者の義体を船外十キロの位置までテレポさせると、舷側のパルスレーザー砲を発射した。
ドーーーーーン
原爆並のショックが返ってきた。
「こっちの弾が当たる前に爆発した……自爆装置が付いていたのね」
紀香が、生体組織から冷や汗を流していた。
「やっぱり、あなたたちに来てもらって正解だったわ」
マネも声を震わせ、三人安堵のため息をついた。
ホーーー(*´Д`)
その時左舷後方から一隻の宇宙戦艦が漂流してくるのが分かった。
「宇宙戦艦ヤマト……!?」
「いいえ、あれは宇宙戦艦キイ。ヤマトの拡大発展系……昭二クンが乗っている」
「え?」「談話室の幽霊?」
モニターの映像を拡大する。
ああ……
もし、ここが海なら、キイは沈没寸前の姿であった……。
☆彡 主な登場人物
鈴木 友子 30年前の事故で義体化された見かけは15歳の美少女
鈴木 一郎 友子の弟で父親
鈴木 春奈 一郎の妻
白井 紀香 2年B組 演劇部部長 友子の宿敵
大佛 聡 クラスの委員長
王 梨香 クラスメート
長峰 純子 クラスメート
麻子 クラスメート
妙子 クラスメート 演劇部
水島 昭二 談話室の幽霊
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