17 / 87
17『対決、紀香VS友子!』
しおりを挟む
トモコパラドクス
17『対決、紀香VS友子!』
〔ここまでのストーリー〕
友子の娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。三十年前、そこから来た特殊部隊によって、友子は一度殺された。しかしこれに抵抗する勢力により義体として一命を取り留めるが、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が始まった!
足許でプラズマ弾が炸裂した!
すんでの所で友子は第一展望台までジャンプし、鉄骨をキックして隅田川に飛び込んだ。将来東京タワーと並んで国宝に指定されるスカイツリーを傷つけることはできない。
川面を、超低空で飛んだ友子は、ほんの二秒間だけ、紀香のロックオンを外す事が出来た。
吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋と、衝撃波を出す寸前のスピードでくぐり抜けたが、国技館前で待機していた国防軍のレーダーにひっかかった。
国防軍のレーダーや統合幕僚部のCPUは、紀香がとっくにハッキングしている。国技館前の対地対空兼用ミサイル通称タカミサカリは武者震いをして発射され、両国橋の手前で、友子の後ろ十メートルのところに着弾した。この爆風で、友子は制服を吹き飛ばされアラレモナイ姿になったが、二発目は意表をついて東に曲がり、タカミサカリは、虚しくNTT浜町ビル前の護岸を破壊しただけだ。タカミサカリの管制CPUは、まるで土俵を壊した高見盛のように動揺し、その管制機能を一時マヒさせた。
京葉道路を東に進むと、交差している清澄通りから、吉野家の前に十両、りそな銀行前に十両の10式戦車が並び、一斉に榴弾の飽和攻撃をしかけてきた。
ヤバイ、粘着榴弾だ。
あれが当たっても、友子の装甲はぶち破れないが、装甲内部が剥離破壊され、数パーセントの確率で、義体内部が破壊される。気づいたのは交差点から二百メートルの真砂寿司の前だったが、行動を起こしたのは、交差点手前の本所警察の前だった。
友子にとってはアナログな武器だが、この至近距離で当たれば無事では済まない。かといって戦車を破壊することは出来ない、一両につき三名の乗員が乗っており、殲滅すれば三十名の戦死者を出してしまう。両国マンション前で、両腕のプラズマ砲を空砲にして発射。その反動で、ほとんど九十度の角度で上昇。腕の良いフラッグ車の一弾が当たりそうになったが、友子は、その粘着榴弾を角度をつけて蹴り飛ばした。
しかし粘着榴弾というのは、避弾形状の装甲でもぶち破れるように先端が丸くできており、友子のローファーの靴底で炸裂した。靴底も装甲になっているが内側で剥離破壊が起こり、右脚の生体組織を傷つけ、爆風でタンクトップを引きちぎり、ブラの右肩のストラップを切ってしまった。
友子は、思い切って東京湾で勝負をつけようとした。国防軍の兵士と武器一万二千を把握した。その気になれば十秒ほどで全滅させられる。しかし、友子は自衛隊時代の国防軍よりも交戦規定が厳しく、この時代の人間を殺すことはできない。
まだか……!?
友子は焦った。国防軍の統合幕僚本部のCPUにウィルスを送り攪乱しようと、適正なウィルスを秒速三千件で検索し組み替えている。ただウィルスを送ることは、容易いが、CPUのプログラムそのものを壊すことはできない。周辺諸国の警戒にあたる国防軍の目を潰すことは出来ないのだ。
やがて横須賀のイージス艦にロックされた。でも、せいぜいトマホーク。簡単にジャミングできると思った……。
「うそ、ジャミングが効かない!」
友子は、房総半島を迂回するようにして、太平洋に出ようとした。
しかし、速度を五百ノットまで上げたところで、トマホークに追いつかれた。
パーーーーーーーーーーーーン!
房総沖にきれいな花火のような閃光がした。
友子は、ブラのストラップはおろか、生体組織の全部を持って行かれ、完全なスケルトンになった。
気づくと、紀香が至近距離で、プラズマ砲を構えていた。
「もう逃げられないわよ、友子」
紀香がニヤリと笑った。
友子は、万分の一の可能性にかけて紀香に体当たりをかけた!
「それは禁じ手だわよ!」
「裏技と呼んでもらいたいわね」
そう言って、友子はコントローラーを投げ出した。
紀香は、悔しそうに固まっていた。
モニターには、双方生存率二十パーセント、ドロー……と出ていた。
「まあ、これで、データがとれたからいいじゃん」
「ま、まあね……」
紀香は、やっと汗にまみれたコントローラーを手放した。
「妙子を、法律と歴史に詳しくしてやったツケだもん。仕方ない」
昨日の現社のテストで、妙子はパニックになり、救急車で病院に担ぎ込まれた。文章としても、理論としても矛盾だらけの日本国憲法の前文と第九条を書きなさいという問題が原因である。
おかげで、妙子は数十年後内閣参与になり……まではよかったのだが、当時、もうカビの生えた『友子脅威論』を持ち出し、紀香に進捗状況の報告を求めてきたのである。
まさか、本当に戦うわけにはいかないので、プレステ5を部室に持ち込んで、ゲームのアバターを自分たちにして、模擬戦をやってデータをとったのである。街なかでの戦闘を極力さけたのも、後の時代に痕跡を残さないためである。
「しかし、よく寝るね、こいつ」
モニターに映し出された妙子は、自分の部屋で、鼾をかいて爆睡していた。
「今日の数学は、自力でがんばったもんね」
「さ、あたしたちも行こうか。駅前のタイ焼き屋、テイクアウトのパンケーキ屋さんになったみたいだから」
「さっそくデータ収集にいくか!?」
いそいそと、駅前を目指すカタキ同士であった……。
17『対決、紀香VS友子!』
〔ここまでのストーリー〕
友子の娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。三十年前、そこから来た特殊部隊によって、友子は一度殺された。しかしこれに抵抗する勢力により義体として一命を取り留めるが、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が始まった!
足許でプラズマ弾が炸裂した!
すんでの所で友子は第一展望台までジャンプし、鉄骨をキックして隅田川に飛び込んだ。将来東京タワーと並んで国宝に指定されるスカイツリーを傷つけることはできない。
川面を、超低空で飛んだ友子は、ほんの二秒間だけ、紀香のロックオンを外す事が出来た。
吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋と、衝撃波を出す寸前のスピードでくぐり抜けたが、国技館前で待機していた国防軍のレーダーにひっかかった。
国防軍のレーダーや統合幕僚部のCPUは、紀香がとっくにハッキングしている。国技館前の対地対空兼用ミサイル通称タカミサカリは武者震いをして発射され、両国橋の手前で、友子の後ろ十メートルのところに着弾した。この爆風で、友子は制服を吹き飛ばされアラレモナイ姿になったが、二発目は意表をついて東に曲がり、タカミサカリは、虚しくNTT浜町ビル前の護岸を破壊しただけだ。タカミサカリの管制CPUは、まるで土俵を壊した高見盛のように動揺し、その管制機能を一時マヒさせた。
京葉道路を東に進むと、交差している清澄通りから、吉野家の前に十両、りそな銀行前に十両の10式戦車が並び、一斉に榴弾の飽和攻撃をしかけてきた。
ヤバイ、粘着榴弾だ。
あれが当たっても、友子の装甲はぶち破れないが、装甲内部が剥離破壊され、数パーセントの確率で、義体内部が破壊される。気づいたのは交差点から二百メートルの真砂寿司の前だったが、行動を起こしたのは、交差点手前の本所警察の前だった。
友子にとってはアナログな武器だが、この至近距離で当たれば無事では済まない。かといって戦車を破壊することは出来ない、一両につき三名の乗員が乗っており、殲滅すれば三十名の戦死者を出してしまう。両国マンション前で、両腕のプラズマ砲を空砲にして発射。その反動で、ほとんど九十度の角度で上昇。腕の良いフラッグ車の一弾が当たりそうになったが、友子は、その粘着榴弾を角度をつけて蹴り飛ばした。
しかし粘着榴弾というのは、避弾形状の装甲でもぶち破れるように先端が丸くできており、友子のローファーの靴底で炸裂した。靴底も装甲になっているが内側で剥離破壊が起こり、右脚の生体組織を傷つけ、爆風でタンクトップを引きちぎり、ブラの右肩のストラップを切ってしまった。
友子は、思い切って東京湾で勝負をつけようとした。国防軍の兵士と武器一万二千を把握した。その気になれば十秒ほどで全滅させられる。しかし、友子は自衛隊時代の国防軍よりも交戦規定が厳しく、この時代の人間を殺すことはできない。
まだか……!?
友子は焦った。国防軍の統合幕僚本部のCPUにウィルスを送り攪乱しようと、適正なウィルスを秒速三千件で検索し組み替えている。ただウィルスを送ることは、容易いが、CPUのプログラムそのものを壊すことはできない。周辺諸国の警戒にあたる国防軍の目を潰すことは出来ないのだ。
やがて横須賀のイージス艦にロックされた。でも、せいぜいトマホーク。簡単にジャミングできると思った……。
「うそ、ジャミングが効かない!」
友子は、房総半島を迂回するようにして、太平洋に出ようとした。
しかし、速度を五百ノットまで上げたところで、トマホークに追いつかれた。
パーーーーーーーーーーーーン!
房総沖にきれいな花火のような閃光がした。
友子は、ブラのストラップはおろか、生体組織の全部を持って行かれ、完全なスケルトンになった。
気づくと、紀香が至近距離で、プラズマ砲を構えていた。
「もう逃げられないわよ、友子」
紀香がニヤリと笑った。
友子は、万分の一の可能性にかけて紀香に体当たりをかけた!
「それは禁じ手だわよ!」
「裏技と呼んでもらいたいわね」
そう言って、友子はコントローラーを投げ出した。
紀香は、悔しそうに固まっていた。
モニターには、双方生存率二十パーセント、ドロー……と出ていた。
「まあ、これで、データがとれたからいいじゃん」
「ま、まあね……」
紀香は、やっと汗にまみれたコントローラーを手放した。
「妙子を、法律と歴史に詳しくしてやったツケだもん。仕方ない」
昨日の現社のテストで、妙子はパニックになり、救急車で病院に担ぎ込まれた。文章としても、理論としても矛盾だらけの日本国憲法の前文と第九条を書きなさいという問題が原因である。
おかげで、妙子は数十年後内閣参与になり……まではよかったのだが、当時、もうカビの生えた『友子脅威論』を持ち出し、紀香に進捗状況の報告を求めてきたのである。
まさか、本当に戦うわけにはいかないので、プレステ5を部室に持ち込んで、ゲームのアバターを自分たちにして、模擬戦をやってデータをとったのである。街なかでの戦闘を極力さけたのも、後の時代に痕跡を残さないためである。
「しかし、よく寝るね、こいつ」
モニターに映し出された妙子は、自分の部屋で、鼾をかいて爆睡していた。
「今日の数学は、自力でがんばったもんね」
「さ、あたしたちも行こうか。駅前のタイ焼き屋、テイクアウトのパンケーキ屋さんになったみたいだから」
「さっそくデータ収集にいくか!?」
いそいそと、駅前を目指すカタキ同士であった……。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
銀河太平記
武者走走九郎or大橋むつお
SF
いまから二百年の未来。
前世紀から移住の始まった火星は地球のしがらみから離れようとしていた。火星の中緯度カルディア平原の大半を領域とする扶桑公国は国民の大半が日本からの移民で構成されていて、臣籍降下した扶桑宮が征夷大将軍として幕府を開いていた。
その扶桑幕府も代を重ねて五代目になろうとしている。
折しも地球では二千年紀に入って三度目のグローバリズムが破綻して、東アジア発の動乱期に入ろうとしている。
火星と地球を舞台として、銀河規模の争乱の時代が始まろうとしている。
日本国転生
北乃大空
SF
女神ガイアは神族と呼ばれる宇宙管理者であり、地球を含む太陽系を管理して人類の歴史を見守ってきた。
或る日、ガイアは地球上の人類未来についてのシミュレーションを実施し、その結果は22世紀まで確実に人類が滅亡するシナリオで、何度実施しても滅亡する確率は99.999%であった。
ガイアは人類滅亡シミュレーション結果を中央管理局に提出、事態を重くみた中央管理局はガイアに人類滅亡の回避指令を出した。
その指令内容は地球人類の歴史改変で、現代地球とは別のパラレルワールド上に存在するもう一つの地球に干渉して歴史改変するものであった。
ガイアが取った歴史改変方法は、国家丸ごと転移するもので転移する国家は何と現代日本であり、その転移先は太平洋戦争開戦1年前の日本で、そこに国土ごと上書きするというものであった。
その転移先で日本が世界各国と開戦し、そこで起こる様々な出来事を超人的な能力を持つ女神と天使達の手助けで日本が覇権国家になり、人類滅亡を回避させて行くのであった。

男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました

超能力者の私生活
盛り塩
SF
超能力少女達の異能力バトル物語。ギャグ・グロ注意です。
超能力の暴走によって生まれる怪物『ベヒモス』
過去、これに両親を殺された主人公『宝塚女優』(ヒロインと読む)は、超能力者を集め訓練する国家組織『JPA』(日本神術協会)にスカウトされ、そこで出会った仲間達と供に、宿敵ベヒモスとの戦いや能力の真相について究明していく物語です。
※カクヨムにて先行投降しております。

いつか日本人(ぼく)が地球を救う
多比良栄一
SF
この小説にはある仕掛けがある。
読者はこの物語を読み進めると、この作品自体に仕掛けられた「前代未聞」のアイデアを知ることになる。
それは日本のアニメやマンガへ注がれるオマージュ。
2次創作ではない、ある種の入れ子構造になったメタ・フィクション。
誰もがきいたことがある人物による、誰もみたことがない物語がいま幕を開ける。
すべてのアニメファンに告ぐ!! 。隠された謎を見抜けるか!!。
------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
25世紀後半 地球を襲った亜獣と呼ばれる怪獣たちに、デミリアンと呼ばれる生命体に搭乗して戦う日本人少年ヤマトタケル。なぜか日本人にしか操縦ができないこの兵器に乗る者には、同時に、人類を滅ぼすと言われる「四解文書」と呼ばれる極秘文書も受け継がされた。
もしこれを人々が知れば、世界は「憤怒」し、「恐怖」し、「絶望」し、そして「発狂」する。
かつてそれを聞いた法皇がショック死したほどの四つの「真理」。
世界でたった一人、人類を救えも、滅ぼしもできる、両方の力を手に入れた日本人少年ヤマトタケル。
彼は、世界100億人全員から、救いを求められ、忌み嫌われ、そして恐れられる存在になった。
だが彼には使命があった。たとえ人類の半分の人々を犠牲にしても残り11体の亜獣を殲滅すること、そして「四解文書」の謎を誰にも知られずに永遠に葬ることだった。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる